伊桜里と雨月の間から咲夜の放つ凄まじい勢いの刺突がごうっと唸りを上げ、その鋭い鋒が妖魔の胸を貫く。
その勢いで妖魔の小さな体が持っていた頭を落としてしまった。その頭を妖魔よりも先に拾い上げ、咲耶達の元へと駆け寄る佳代。
眉間に皺を寄せ、裂けんばかりに開くその口から言葉になっていない怒号が辺りの空間を震わせており、頭を持つ佳代の体へとびりびりと伝わってくる。
「玉藻さん達が妖魔の動きを抑えているうちに、勝負を決めましょうっ!!」
「はいっ!!」
咲耶に伊桜里、雨月達が、妖魔の体へと抜刀し向かっていく。
ぶぅんっ!!
雨月の備前長船長光が唸りをあげ斬り掛かる。刀気を解放した雨月の電光石火の剣術が妖魔の体を真っ二つに斬り裂こうとした時、その剣速よりも速く上へと飛び上がった。
「伊桜里さんっ!!」
とんっ!!
雨月の肩を踏み台に高く飛び上がった伊桜里。妖魔と同じ高さまで到達した時、なんと妖夢の手が伊桜里に向かって伸びて行くではないか。
咄嗟に身を捻りすんでの所で躱した伊桜里がその回転を上手く生かし、手に持つ三日月宗近で妖魔の片腕を斬り落とした。
ゆっくりと落下していく妖魔と伊桜里。
しかし、既にその落下地点には雨月が身長とさほど変わらない四尺三寸程の備前長船長光を構えている。
「先程は見事に躱されたが、次は仕留めるよ」
妖魔の足が地面へとつくかつかないかの瞬間、またしても妖魔の腕が伸び、雨月へと向かっていく。しかし、雨月の口から鋭い掛け声と共に空気の破裂する様な重低音が響き、びりびりと大気が震えた。佳代と咲耶が驚き目を見開いている。
消えた。
あの時と同じ様に一瞬だが、雨月の体が消えたのだ。
雨月を貫こうと伸びてきた妖魔の腕は空を切っている。気づくと雨月は妖魔の背後に回り込み、備前長船長光を振るった。
疾いっ!!
佳代には雨月の振るう太刀筋がまるで見えなかった。
妖魔の体が空中で四つに分かれ、その切り口にぼんやりと光る魂玉が見えた。それを咲耶は見逃さない。
力強い踏み込みから繰り出される突き。その鋒が魂玉に触れた。
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