元祖魔剣少女

それぞれの想いを胸に四人の少女が戦いの場へと足を踏み入れる。
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第二話 加藤家

公開日時: 2020年10月4日(日) 07:00
文字数:1,477

よく日焼けした肌。


短く切られた髪。


凛々しい眉に、意志の強そうな瞳。


そして、肩に担ぐように持っている十文字槍の片枝を短くした片鎌槍。


ぱっと見るとまるで少年のようであるが、その体つきは佳代よりも立派で、すぐに少女とわかった。


「私は加藤かとう千草ちぐさちゅうもんです」


深く頭を下げ一礼する千草。佳代と咲耶も千草へと頭を下げた。


「加藤……千草さん?」


佳代と咲耶が互いの顔を見るが、二人とも千景には面識が無いようであった。


「あぁ……申し訳ねえ。私はこん地区ん討伐隊ぅ任されちょん加藤家ん者です」


「あら……あなたが加藤家の……」


「はい、皆様がちいと遅かったけんお迎えに上がった次第です」


遅かったから……


やはり、鴉丸は道に迷っていたのである。二人と一匹が鴉丸を見るが、とうの鴉丸は惚けるようにそっぽを向き、ぴいひゃらと口笛を吹いている。


「ほらね……やっぱり迷っていたんだよ」


猫又がちくりと小言を言うが、それさえも聞こえていない振りをしている鴉丸。


「まぁ……無事に迎えにも来て貰ったことだし……ねぇ、佳代ちゃん?」


「そうやね、ほら鴉丸もちゃんと千草さんにお礼を言わにゃ」


佳代から頭を撫でられながらそう言われた鴉丸は、小さな声でおおきにと呟くように言った。


「ははは、良いわあ。そげな事くらい気にせんでくりい。それよりも皆様、お腹空かれちょんやろう?」


その通りである。


ここら辺は本当に田舎でお店など何一つない田圃道。


誰も何も言わなかったが、三人と一匹はとてもお腹が空いていた。


「……はい」


佳代がお腹を押さえ、恥ずかしそうに答えた。


それを見た千草が、あははっと笑う。


屈託のない笑顔であった。


「そりゃそりゃ……ほいだら急いじ我が加藤家へと案内せなならんね」


千草はそう言うと、こちらやわあと佳代達を案内し始めた。


しばらく進むと、田圃の真ん中に鬱蒼とした森が見えてきた。


この辺りの鎮守の森なのだろうか。


森の入口と思われる場所に立派な鳥居が見える。


その鳥居をくぐり入っていく千草のあとをついて行く佳代は、思わずまさやんのいる山の中の神社を思い出した。


懐かしい……


あの旅立ちからまだ半年も経っていない。


それなのにとても懐かしく感じてしまう。


「うちが故郷で修行した場所に雰囲気が、よう似とる……」


思わずそう呟いてしまった。


「正の山け?」


その呟きが聞こえた鴉丸が佳代へと尋ねた。


「鴉丸は正やんを知っとるん?」


「知っとるで。あんの犬っころとは昔、よう遊んだわ」


「犬っころ?そうなんね、昔からの知り合いやったとたい」


そんな二人の会話が耳に入ったのか、千草が佳代達の方へと振り返った。


「そう言えば、佳代様ん故郷はここからそう遠いくはねえはずやけんど、竹子様達にお会いになられたかえ?」


千草の言葉にふるふると首を振る佳代。


「まだうちは討伐士として半人前やけん……まだ帰るのには早か」


少し寂しそうにそう言う佳代。


「そうな……あん御影様ん元じ修行した佳代様達が半人前なら、私はまだまだ赤子同然やわあ」


「いやいやいや……そんな事は」


慌てて返す佳代に大きな口を開けて笑う千草。


そうこうしているうちに、神社の社が見えてきた。


古いがとても手入れの行き届いている社である。


「着いた、ここが我が加藤家や」


社の前に神主姿の男が一人、深々と頭を下げて立っていた。


「私ん父や」


加藤かとう清彦きよひこと申します。遠いいところから我が加藤家ぅ訪れち頂き、感謝します」


頭を上げた千草の父、清彦がそう言うと、佳代達も頭を下げた。


「こちらこそお招き頂きありがとうございます。お世話になります」


咲耶が清彦へと挨拶を返すと、千草が佳代達を社の中へと招きいれた。

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