元祖魔剣少女

それぞれの想いを胸に四人の少女が戦いの場へと足を踏み入れる。
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第三十六話 膨らむ刀気

公開日時: 2020年10月1日(木) 12:00
文字数:1,232

「何をしているのですかっ!!」


いつの間にか茨木の背後に回りこみ、その刀を振り下ろさんとしていた頼光に玉藻が薙刀で斬り掛かる。


横から入った邪魔に対し、小さく舌打ちをする頼光。


「……多少は気を取り戻した様だな、玉藻」


刃渡り約二尺、柄の長さ約六尺はあろうかと思われる大薙刀を軽々と扱い構える玉藻を、頼光が無表情な紅く光る目で見ている。


「……ふん、あなたを倒すくらいは回復したわよ」


「ほう……その割には、膝が震えておるぞ?」


確かに玉藻は言う程に気を回復してはいない。それは佳代達にもすぐに分かった。星熊から貰った気では足りなかったのだろうか?


「……ふふん。なら来なさいよ?」


「後悔するなよ、化け物狐が」


とんっと地面を一蹴りした頼光があっという間に玉藻との間合いを詰めてくる。長物の薙刀では不利な間合い。


「なんじゃ、あれだけの事をほざいとった割に、防ぐのがやっとのようじゃな?」


頼光の言う通り防戦一方となっている玉藻。薙刀の柄で刀を受けているだけだった。


「……なんや、玉藻の奴。受けとるだけやないかい……うちらも助太刀に行こか?」


「そうね……でも、おかしいわ。確かに頼光は強い……あの玉藻なら……でも、頼光の刀を受けているだけ……!!」


茨木は気がついた。地べたにぺたりと胡座をかいて座っていた酒呑の姿が無いことに。


その事に気がついた時である。


それまで防戦一方だった玉藻が、頼光の刀を柄で受けると、その柄をくるりと返し、石突を跳ねあげる様に頼光に向かって攻撃を仕掛けた。


仰け反る様にして避ける頼光。その顎先すれすれを石突が掠めていく。


すると、骨と骨のぶつかり合う音が響いたかと思うと、頼光が飛ばされ土煙をあげ転がった。


そこには拳を突き出し構える酒呑が立っている。


酒呑の拳が頼光のこめかみを打ち抜いたのだ。


「この阿呆が。うちもおる事忘れたらあかんやろ?」


笑う酒呑の口からぷぅんと酒の臭いが辺りへ広がっていく。


ゆっくりと立ち上がる頼光の頭部がぐしゃりと潰れて見るも無惨な姿となっている。ふらつきながら、それでも立ち上がってくる。


「……どっちが化け物や」


頼光の姿を見て吐き捨てる様にいう僧正坊。酒呑の周りに四人が集まる。


「ふん……油断すんなよ?」


「誰に向かって言ってるの?」


「もふもふ尻尾の玉藻ちゃんにや」


酒呑と玉藻は互いに顔を見合わせると、一気に頼光へと向かっていく。それに続く僧正坊と茨木の二人。


自然と鬼切安綱を握る手に力が籠る。佳代達は次元の違うその戦いを黙って見ているしか出来なかった。


これは私達の戦いだった筈なのに……


むわりと佳代達の体の刀気が膨らんでいく。


鴉丸と小鷹丸の二人は目を見張った。


佳代達四人の気が先程よりも大きくなり、その体から湯気の様にゆらゆらと昇っていくのが見えるのだ。


「さすがやなぁ……小鷹丸。さすが……四家の娘達や、この戦いでさらに成長していっとるわ」


「なら……そろそろ、私達の出番ね」


二人は瞼を閉じ胸の前で印を結ぶと、むにゃむにゃと何かを唱えだした。

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