次にエリスは領地改革に着手することにした。
「町長さん、この街で消費する野菜って他の土地から仕入れてますよね? どんな物を仕入れてます?」
「そうですね、ハクサイ、キャベツ、チンゲンサイ、コマツナなどの葉もの野菜と、ダイコン、ニンジン、カブ、ゴボウなどの根菜が主でしょうか。ご存知の通り、ここは盆地で寒暖の差が激しく、耕地も狭いので野菜の栽培には適しておりません。その代わりに桃、ぶどう、梨、くり、柿、りんごなど、果物の栽培が盛んです」
「なるほど。他の土地から仕入れる場合、関税と通行税が掛かるんですよね?」
「えぇ、その分を値段に上乗せしなければなりませんので、どうしても野菜は高くなります」
「それ、なんとかなるかも知れません」
「本当ですか!?」
町長が食い付く。
「えぇ、まだ試験段階ではありますが、私は上手くいくと思ってます。山の中腹に巨大なカルデラがあるのはご存知ですよね?」
「えぇ、昔の火山跡ですよね」
「現在、そこを農地に改造しています」
「なんと!? あんな所で作物が育つのですか!?」
「えぇ、カルデラの火山灰土壌は肥沃な土ですので。それに地熱の影響で寒さも和らぎますから」
「なるほど...いやしかし、仮に育ったとして、収穫した農作物をあの場所から街まで運ぶのは大変じゃないですか?」
「そこはほら、これです」
エリスはストレージから果物を取り出して見せた。
「私のストレージは容量無限大なので、どんな物でも、どんな量でも収納可能です。収穫した農作物は私が運びます」
「エリス様は凄い魔法を使えるのですね...分かりました。是非とも協力をお願いします」
「良かった。これが軌道に乗って自給自足できるようになれば、あのクズの元に税が回らなくなりますからね。悔しがる顔が目に浮かぶようです」
エリスはニヤリと笑った。
「しかし軌道に乗るまでには、かなり時間が掛かりますよね?」
「それにも秘策があります」
エリスが今度は何やら液体の入った瓶を取り出す。
「なんですかそれ?」
「私が開発した成長促進剤です。植物の成長を劇的に早めます。早い物なら一ヶ月もあれば収穫可能になるでしょう」
「なんともまあ...エリス様には驚かされてばかりです...」
町長は開いた口が塞がらなかった。
「試しに使ってみて下さい」
「よろしいのですか?」
「えぇ、その代わり、現在仕入れている野菜の種を全部下さい。それと出来たら果物の苗木も何種類か頂きたいです」
「分かりました。すぐに手配します」
こうしてエリスは着々とクズ夫を追い詰めていく。
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