町長から連絡があったのは2日後だった。
エリスとカイが案内されたのは町役場にある会議室で、そこには既に10人程の関係者が集まっていた。
「皆さん、お忙しい中お集まり頂きまして、ありがとうございます」
壇上に上がったエリスは、土で作ったジオラマをストレージから取り出した。
「本日、皆さんにご紹介したいのは、この街の温泉リゾート化計画です。こちらの模型をご覧下さい」
エリスは山の模型を指差した。
「この山から温泉が湧き出しています。その温泉の水をこのような水道管を伝って街に流します」
山から水道管が伸びて来た。
「温泉を目玉にしたホテルを建設します。このように5階建てのホテルをイメージしています。料理の目玉としては、ふんだんに採れる山菜やキノコなどの山の幸、珍しい魔獣の肉を使った料理、牧場でとれる新鮮な乳製品を使った料理などを考えています」
ホテルの模型に水道管が繋がった。
「そしてもう一本、水道管を敷設します。これは街の人達が無料で利用出来る公衆浴場を造るためのものです」
もう一本の水道管が街のジオラマの中央広場まで伸びた。
「今は説明のために外へ出していますが、水道管は地下に埋める予定です」
エリスは次にホテルの周りを指差した。
「この辺りにお土産物屋を開きたいと思っています。目玉は温泉饅頭や温泉卵といった温泉に因んだ物や、牧場でとれた搾り立ての新鮮な牛乳やチーズなどの乳製品、魔獣の肉を使ったジャーキーなどを考えています」
最後にエリスは牧場を指差した。
「そしてこれは牧場の方々にご協力頂きたいのですが、観光の目玉として牧場体験ツアーを考えています。具体的には乳牛の乳搾り体験や乗馬体験、チーズやヨーグルトの製造工程の見学などです」
エリスは一同をざっと見渡して、
「計画の概要は以上となります。私が提案したいのは、この街における観光資源を生かした新たな街作りです。恒久的な雇用の保証や安定した観光収入を得ることを目指しています」
ここでエリスは一旦言葉を切って、
「私はこの地の領主になるつもりでいます。街の人達が住みやすい土地にすることは、私の使命だと思っています。皆さんの賛同を得られた場合、お願いしたい点が3つあります。1つ目はホテルとその周辺の用地の確保。2つ目がホテルやお土産物屋で働く人員の確保。3つ目がホテルと牧場を繋ぐ通路の確保。以上になります。ご質問のある方どうぞ」
会議室は水を打ったように静まり返った。
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