「こ、これが図書館……」
瑠衣の後を追ってきた超慈たちが校舎から少し離れた場所にある建物の前に立つ。
「流石はマンモス校、図書館自体が独立した建物かよ」
仁が建物を見上げながら呟く。
「呑気に感心している場合か、ござるニン女の後を追うぞ」
亜門が図書館入口に突っ込む。超慈も続く。
「よっしゃ! 行くぜ!」
「お、おい、2人とも! そんなむやみやたらに突っ込んで大丈夫か?」
仁が慌てて声をかける。超慈が笑って振り返る。
「なんだよ、仁? ビビッたのか?」
「い、いや、そういうわけじゃないけどよ……もうちょい慎重に行った方が……」
「……昼間に先に仕掛けてきたのは奴らだ。このタイミングで俺たちが反撃に出るとは全くの予想外なはず……やるなら今だ。それとも細マッチョ、その筋肉は見かけ倒しか?」
入口の手前で立ち止まった亜門は仁に向かって淡々と呟く。
「ほ、細マッチョって言うな! あ~もう、分かったよ! 一気に行こうぜ!」
仁が頭を掻きむしってから勢いよく走り出す。3人は図書館の中に入る。超慈が呟く。
「……なんか妙な雰囲気だな」
「恐らくだがこの図書館全体をバトルフィールド化しているんだろう……」
「ということは……おっ! 出たな」
亜門の推測を聞いた仁は手際よく自身の魂道具を発現させる。亜門も頷き、発現させる。
「そういうことだ……ここは敵陣のようなものだ、あまり目立つ行動は避けた方が……」
「魂~道~具!」
超慈が大声を上げて魂道具を発現させる。亜門が慌てて、抑えた声で超慈を諫める。
「い、言ったそばから騒ぐ奴がいるか!」
「いや~こう叫ばないと、道具が発現しないんだよ~」
「早急になんとかしろ! これでは奇襲もなにもあったもんじゃない!」
「放課後だからなのか、照明が暗いのが救いだな……ん⁉」
周囲を見渡した仁が驚く。廊下に制服を着た男女が何名か倒れていたからである。
「あの女が得意の早業で雑兵どもを片付けてくれたようだな」
亜門は納得したように頷く。超慈が口を開く。
「相手が何人かも分からねえし、どんな奴が控えているかも分からねえ。さっさと合流した方が良さそうだぜ。きっと魂力も消耗しているはずだ」
「珍しく良いことを言うな、ナード」
「珍しくとはなんだ」
「ベタな配置だが、この『合魂倶楽部』の中心、いわば幹部的存在は上階にいるのだろう」
「よし! 上に急ごうぜ!」
「そうはさせん!」
「どわっ⁉」
広い廊下の暗い部分からしなった鞭のようなものが飛んでくる。超慈たち3人はなんとかそれをかわす。影から大柄な男が現れる。
「ほう……今のをかわすか……合魂部の一年坊、なかなかやるようだな」
「なんだてめえは⁉」
「聞きたいか? 俺は……」
「いや、いい……」
超慈の問いに男が答えようとするが、それを亜門が制する。男が首を傾げる。
「なんだと?」
「雑魚の名前などどうせすぐ忘れる」
「お、おい⁉」
亜門の言葉に超慈が慌てる。男が小刻みに震えながら呟く。
「……お、俺が雑魚だと……?」
「お、お前! 対立勢力でも先輩だぞ⁉ 少しは敬意を持てよ!」
「……ナード、そんなに奴の名前を知りたいか?」
亜門の問いに、超慈は男の方を一瞬見てから答える。
「……いや、野郎の名前にはこれっぽっちも興味ない!」
「よ、よく分かったぜ……俺のことを舐めていやがるな?」
仁が困惑しながらまくしたてる。
「ほ、ほら、怒っているぞ! お前ら体育会系のこと全然分かってねえな⁉ いいか? このデカい建物の一階部分を任されるってことは、あの人はこの倶楽部とやらでは“下っ端の中ではそこそこ偉い人”ってことだ! しかもまんまと鬼龍の突破を許しちまっている! 本当の実力は見掛け倒しの可能性が高い!」
「……」
「痛めつけるだけにしてやろうかと思ったが、魂、吸い取ってやるわ!」
「ええっ⁉ すげえキレてる! なんで⁉」
「お前が火に油注いだんだよ! どうしてくれんだ⁉」
「……いや、案外いい仕事をしてくれたな。流石は『(ムード)メイカー』だ」
「俺の『魂火煮鞭刀』を喰らえ! ……なっ⁉」
「鞭と刀を使い分けることの出来る魂道具か、怒りに任せてネタバレしてくれて助かった」
亜門は魂旋刀をしならせて、男の振るう鞭に絡ませる。男が戸惑う。
「くっ! 絡んだ! どうするつもりだ⁉」
「こうするつもりだ……『電流』!」
「がはあっ!」
亜門が刀の手元を操作すると、電流が流れ、それを喰らった男は痺れて倒れこむ。
「……お持ち還りだ」
亜門はゆっくりと男に近寄ると、男の魂を吸い取った。超慈が感心する。
「す、すげえ……」
「さっさと上の階に向かうぞ」
亜門を先頭に階段を上がる。上がった先は放射線上に本棚が立ち並ぶフロアだった。
「おお、おしゃれな並べ方しているな……」
「連中の気配がしないな……ナード、細マッチョ、お前らは北側から時計回りに探せ。俺は南側からあの女を探す」
「お前が仕切るなよ!」
「超慈! こんなとこで揉めてる場合じゃないぞ!」
「ちっ……」
超慈たちは二手に分かれ、このフロアを捜索する。仁が呟く。
「礼沢の言う通り、連中の気配がしないな……鬼龍が全員倒しちまったのか?」
「鬼龍ちゃん~! 居るなら返事してくれ~!」
「バ、バカ! 叫ぶな、超慈!」
「……図書館ではお静かにお願いします」
「「⁉」」
窓側に面した席に座る女子生徒から声をかけられ、超慈たちは驚く。
「あ、す、すいません……」
「いや、何を謝っているんだよ! 相手かもしれないぞ⁉」
頭を下げる超慈の脇腹を小突きながら仁が小声で突っ込む。
「下校しそこねた一般生徒かもしれないだろう⁉」
「そんなことがありうるのか⁉」
「知らねえけど、魂道具の類は持っていないぞ、本を持っているだけだ」
「た、確かに……」
超慈が指差した女子生徒は一冊の本を眺めているだけである。逆方向を探していた亜門がうんざりした様子で呟く。
「……叫び声なんかあげやがって……あいつら誰かと接触したのか? ん⁉」
「ぐっ……」
亜門の目の前には苦しそうに倒れこむ瑠衣の姿があった。亜門が叫ぶ。
「このフロアにも敵がいるぞ!」
「「⁉ ぐはっ!」」
亜門の叫び声とほぼ同時に、超慈たちは吹っ飛ばされる。本を片手に椅子から立ち上がった眼鏡の女子はもう片方の手でショートボブの白髪をかき上げながら呟く。
「……読書の邪魔をしないでもらえますか?」
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