合魂‼

阿弥陀乃トンマージ
阿弥陀乃トンマージ

第4話(3)糸と玉

公開日時: 2022年9月15日(木) 18:09
文字数:2,183

「……やっと来た」

 赤茶色の髪の女性が毛先を指でいじりながら呟く。仁が口を開く。

「超慈、礼沢……! 2人を返してもらいますよ!」

「……遅くない?」

「え?」

「いや、え? じゃなくてさ? RANE送ったの昼休みだよね? なんで放課後になってからノコノコやって来てんの?」

「……まあ、その……午後の授業もありましたので……」

「真面目か」

 仁の答えに女性は呆れ顔で突っ込む。仁が頭を下げる。

「お待たせして申し訳ありません!」

「謝られんのもなんか違うけどさ……」

「先輩をお待たせしたわけですから……」

「ふ~ん、先輩ってことはウチのことは聞いているんだね?」

「ええ、農業科の二年生、くぎステラさん……かつては合魂部の一員であったと……」

「そうか……君は一年の外國仁君だよね。お互い素性は分かっていると……ならば……」

「ちょ、ちょっと待って下さい! まずは話し合いを……」

 身構えようとするステラを仁が慌てて制する。ステラが首を傾げる。

「ん? 合魂部に戻らないかって?」

「そ、そうです!」

「却下」

「そ、そんな……」

「今は同好会の一員だし……そんなポンポンと立場を変えるわけにもいかないっしょ?」

 ステラが肩をすくめる。仁が顔をしかめる。

「そ、そうですか……」

「っていうか心配じゃないの?」

 ステラは背後の壁に糸状のもので張り付けにされた超慈と亜門を指差す。2人は気を失ったようにぐったりとしている。

「まあ……人質のようなもので、すぐには手を出さないだろうと……」

「バレるか……しかし、一年を1人だけ寄越すとはウチも舐められたもんだね!」

 ステラは語気を荒げて勢いよく立ち上がる。仁がすぐに身構える。

「くっ! すごい波動だ……これが『魂破こんぱ』か……!」

「これくらいでビビるようなら、大した魂力ではなさそうだね! さっさと終わらす!」

「くっ! 先手を取る!」

 向かってくるステラに臆さず、仁も魂道具を発現させ、迎撃するため走り出す。

「ふん!」

「おっと!」

「⁉ かわした!」

「覚悟!」

 仁は二本の魂棒をクルクルと回転させ、ステラの肩のあたりを攻撃する。素早い一撃であったが、ステラは右手でペチッと音を立てて受け止める。

「……ふっ!」

「なっ、受け止めた! ……ペチッ?」

「そっちの魂道具は魂棒か。刀と違って、軌道が独特で読めないね」

「釘井ステラさん……魂道具は『魂蒻こんにゃく』!」

「そう、自慢の畑で収穫されたものだよ」

「足元を滑らせて、相手を転ばせたり、柔らかさで受けた衝撃を逃すことが可能……!」

「そうそう、ウチの魂力を吸い取るのは至難の業だよ。早く姫乃パイセンか四季を呼んできた方が良いと思うな」

 ステラは両腕を組んで、自らの発言にうんうんと頷く。仁が答える。

「……そういうわけには参りません。部長たちがもしここにやって来たら一網打尽にされてしまう恐れがありますから……」

「……あくまでも1対1で戦うってこと?」

「……ええ!」

「だから舐めるなって!」

 ステラが強い魂破を発生させる。仁がそれに対し、なんとか踏みとどまろうとする。

「ぐっ!」

「体勢崩しちゃってんじゃん! 君は面倒だけど正攻法で片付けてあげる! ……と、見せかけて、後ろからか!」

 ステラが背後を振り返ると、魂白刀を掲げた瑠衣がステラに向かって飛びかかろうとしていたのである。瑠衣は舌打ちする。

「バレたし!」

「バレるよそりゃあ! 合魂倶楽部を瓦解させた鬼龍瑠衣ちゃんでしょ!」

「ご存じのようで光栄だし! ただこの攻撃はかわせない!」

「それはどうかな?」

「む⁉」

 ステラが両手をかざすと糸状のものが発生し、瑠衣の体をたちまち絡めとってしまう。

「こ、これは⁉」

「『糸魂蒻いとこんにゃく』! この糸で体の自由を奪えるよ!」

 驚く仁に対し、ステラが得意げに答える。地面に押さえつけられた瑠衣が暴れる。

「ぐっ! この!」

「ははっ! 無駄だって。その糸は見た目とは裏腹に結構な硬度があるからね。もっと力を入れた斬り方でもしないと……」

「……例えば先ほどのようにでござるか?」

「は?」

「おりゃあ!」

「解放された!」

 壁ではりつけ状態だった超慈と亜門が糸を振り払い、地面に着地する。ステラが驚く。

「ウチが気づく前に、すでに糸を斬っていた⁉」

「そ、そういうことだし……」

 糸でぐるぐる巻きになった瑠衣はかろうじて右手を伸ばしVサインを作る。仁が問う。

「鬼龍はあれですが、これで3対1です。改めて……話し合いに応じてもらえませんか?」

「却下!」

「手荒な真似になるが、ちょっとばかり魂力を吸い取らせてもらうしかないようだぜ!」

「ナード、その点については同意だ!」

 超慈と亜門がステラに向かって突っ込む。

「いい加減、ウザいっての!」

「! 危ねえ!」

「⁉」

 亜門をかばった超慈の背中が爆発する。仁が再び驚く。

「こ、これは……⁉」

「『玉魂蒻たまこんにゃく』……玉をぶつける。当たり所によっては爆発するよ……」

「そ、そんな魂道具の使い方は聞いていない!」

「パイセンの元を離れてから死に物狂いで会得したんだ! 君もそろそろ消えて!」

 ステラが仁に向かって玉を思い切り投げる。

「ぐっ! ……この!」

「なっ⁉ 腕から胸のあたりを転がして衝撃を逃がした⁉」

「そらっ!」

 玉を左腕の方に転がした仁は左手の魂棒で玉を打ち返し、ステラに当てた。

「がはっ!」

「男子新体操はボールを扱わないんですけど……女子の練習を見ていて良かった」

 仁は胸を撫で下ろす。ステラは小さな爆発とともに倒れ込む。


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