合魂‼

阿弥陀乃トンマージ
阿弥陀乃トンマージ

第2話(3)それぞれの魂道具発現

公開日時: 2022年9月7日(水) 23:33
更新日時: 2022年9月8日(木) 08:36
文字数:2,273

「と、とにかく4人とも発現には成功したようだな……」

「え? うおっ!」

「周囲を確認している余裕はないぞ! まずは自らに迫ってくる相手を倒せ!」

「くっ!」

「一人ではかわされる! 複数同時にかかれ!」

 周囲の男子からはそのような声が聞こえてきて、超慈に向かって二人同時に斬りかかってきたが、超慈はなんとか二本の刀を駆使して受け止める。姫乃が感心する。

「優月超慈、魂道具は『魂択刀』。外見からすると少々意外だが、運動能力がそれなりに高く、なおかつセンスもある。何より細身ながらもあの力強さ……それぞれ片手で一人ずつの攻撃を受け止めてみせている……興味深いな」

「ぐぐ……えい!」

 超慈は二人同時の攻撃を鍔迫り合いの末、同時に弾き返してみせる。姫乃が頷く。

「昨夕も体格で勝る相手のパワー溢れる攻撃を耐えきったからな……これは思っているより違うロールかもしれん……」

「せい!」

「どはっ!」

「がはっ!」

「お持ち還りだ!」

 反撃に出た超慈が襲ってきた男子たちの魂力を吸い取ってみせる。姫乃が告げる。

「まずはお見事……ただ、まだ敵は大勢いるぞ。気を抜かないように」

「は、はい!」

「さて、他の三人だが……紅一点、鬼龍瑠衣、魂道具は……」

 姫乃が見たところ、瑠衣は白く光る小刀を構えて相手と向かい合っている。

「はっ!」

「あれは……『こんぱくとう』か、応用形ではあるが、まさか小刀とはな……あれではリーチの面で大分不利になりそうだが……!」

「!」

「きゃ!」

「わっ!」

 瑠衣は素早い動きで相手の懐に入り込み、次々と相手の魂を吸い取っていく。

「なるほど……多少のリーチの不利はスピードと体術で補うと……本人はどうも忍べているつもりのようだが、全然忍べてないのが気になるが……まあ、この際それは良い」

「はっ! はっ!」

「ヒット&アウェイ戦法が取れるな……トリッキーな役回りかと思ったが、案外違う形で戦わせるのも面白いかもしれん」

 姫乃は納得したように頷くと他の2人に目を向ける。

「礼沢亜門、魂道具は……」

「はっ!」

 亜門は刃先が長くしなった独特な形状の刀を振るい、周囲の敵を薙ぎ払う。

「あれは……『魂旋こんせんとう』か。蛇腹剣のような形状をしているな、あれならばある程度離れた相手に対しても有効な攻撃を出来るか……」

「それっ!」

「ぎゃあ!」

「ぐはっ!」

 亜門が刀を操作すると、長く伸びていた刃が一気に縮み、巻き込まれる形となった者たちの魂が吸い取られていく。姫乃が感心する。

「なるほど、刃の伸縮が自由自在か。これは相手にまわすと厄介だな……。しかし、コンセントということは……まあ、それは後でも良いな。最後はあいつか……」

 姫乃は残った1人に視線を移す。

「うおおっ!」

「威勢が良いな、外國仁、魂道具は……」

 仁は先端部分が黄色く太くなっている二本の棒を手元で器用にくるくると回して、相手を翻弄している。

「うむ? あれは……新体操で使う『こんぼう』か。あいつは体格的になにかスポーツでもやっているとは思ったが、新体操とは……これは少々意外だったな」

「ほっ! ほっ!」

「ぐえっ!」

「どはっ!」

 仁は体勢を低くして、棒を上に投げ飛ばす。思わぬ攻撃を喰らった者たちの魂が次々と吸い取られていく。姫乃が頷く。

「相手が虚を突かれて露骨に戸惑っているな。予測が難しいからな、無理もないだろう……」

「はあ……はあ……片付きましたよ?」

 超慈が乱れた息を整えながら、姫乃に問う。姫乃が答える。

「思っていたよりは4人とも戦えていたな。ひょっとして中学で合魂経験者か?」

「こんなのやる中学校、普通ないでしょう……」

「冗談だ。よくやったな、と言いたいところだが……貴様ら全然連携がなっとらんな」

「そ、そりゃあそうでしょう!」

 姫乃の指摘に対し、超慈が声を上げる。

「それでは今後苦労するぞ?」

「そんなこと言われても! 今日初めて互いの魂道具を見たんですよ⁉」

「初対面の者とも呼吸を合わせる必要が生じるぞ、合魂を舐めるなよ?」

「俺の知っている合コンじゃない! ⁉」

「おらあ!」

「!」

 大柄な男が4人に刀を持って襲い掛かってくる。小さい規模だが火が巻き起こる。4人は驚きながらもなんとかこれをかわす。姫乃が淡々と話す。

「まだ残っていたか……言ってみればボスキャラだな。そいつを倒さんとチュートリアルクリアとはならんぞ」

「ひ、火が出ましたよ⁉」

「値段の高い、質の良い魂火煮弁刀を使っているのだろうな」

「そ、そういうものなんですか⁉」

「そういうものだ……今の動き一つとってみても、これまでの雑兵とは一味違うようだ。連携を取らんと、現在の貴様らではどうにもならんぞ?」

「そ、そうは言っても!」

「声が苦しげだな、魂力を一気に消費して消耗したか、基本的体力をもっとつけんとな。だが、これくらいは切り抜けてもらわんと話にならん。ほら、相手は待ってくれんぞ」

「これで仕留める!」

 大柄な男が刀を振りかざす。超慈が舌打ちする。

「ちっ! 体が思うように……」

「『充電』!」

「⁉」

 亜門が刀を地面に突き立てると、周囲に振動が伝わる。亜門が周りに向かって叫ぶ。

「これで魂力が多少戻ったはずだ!」

「ああ、動ける!」

「むっ⁉」

 前に踏み出した超慈が男の刀を受け止める。仁が魂棒を投げる。

「それ! 『回転投げ』!」

「うおっ⁉」

 二本の回転する魂棒を両肩に喰らった男がのけ反る。超慈が瑠衣に声をかける。

「任せた!」

「任された! 『パフパフ』!」

「ぐはあっ!」

 空中に身軽に舞った瑠衣の攻撃により魂を吸い取られた男が崩れ落ちる。

「即興だが、良い連携だったな。これは期待出来るかもしれん……」

 姫乃が笑みを浮かべつつ呟く。

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