「動きは封じました! ここら辺で諦めて下さい!」
「? 投降でもしろってこと?」
「そ、そうなります!」
クリスティーナの問いに超慈は戸惑いながら答える。
「さっきも言ったけど、そういうつもりはないよ!」
「くっ⁉」
立ち上がったクリスティーナの攻撃を超慈はなんとか受ける。
「ふん、いい加減煩わしくなってきたね、その反応の速さ……」
「そ、それはどうも……しかし、よく動けますね……」
「足を狙うというのは悪くない着眼点だったけど……少し浅かったかな?」
「ならばもっと踏み込む!」
「おおっと⁉」
超慈が間合いを詰め、クリスティーナの両足を狙いにいく。クリスティーナはすかさずジャンプして、この攻撃をかわす。
「むっ⁉ 飛んだ⁉」
「跳躍力をなめてもらっちゃあ困るよ!」
「空中での姿勢変更は難しいはずでござる!」
「む!」
飛び上がったクリスティーナに瑠衣が迫る。瑠衣の繰り出した魂白刀をクリスティーナはなんとか足で受け止める。瑠衣が叫ぶ。
「止めた⁉ 信じられないし!」
「キャラ、ブレてない? ま、まあ、それくらいの攻撃なら凌げないことはないよ!」
「ちっ!」
「糸魂蒻!」
「うわっ⁉」
ステラが繰り出した糸魂蒻がクリスティーナの足に巻き付く。
「このまま地面に叩きつける!」
「!」
糸によってクリスティーナは地面に落下する。ステラが様子を伺う。
「多少手荒だったけど……大人しくなったかしら?」
「『カットステップ』!」
「⁉ 糸が!」
「ステップワークで糸を踏み切らせてもらったよ、結構硬い糸だね……どうせなら両足ごと縛るべきだったね、ステラ……なるほど、体勢変更の困難な空中戦を狙っていたのは良い判断だったよ。そこで仕留めきれなかったのが残念だったね、ござるちゃん」
「くっ……」
「ご、ござるちゃんって……」
クリスティーナの言葉にステラと瑠衣が渋い表情を見せる。クリスティーナが大げさに両手を広げてみせる。
「平面での戦いにはアタシに分がある! ここで決めさせてもらうよ!」
「今は昔……」
「⁉ 四季! まだ動けたの!」
「京に住む木こりたちが……」
「ちぃ! なんだか知らないけど読ませないよ!」
「そうはさせるか!」
「むう!」
四季のもとに飛び込もうとしたクリスティーナだったが、超慈がこれを防ぐ。
「……語り伝えたるとや」
「読ませてしまった!」
「な、なにが起きる! ……な、なに⁉」
「⁉」
クリスティーナが戸惑う。目の前の超慈だけでなく、瑠衣やステラも狂ったように踊りだしたからである。四季が説明する。
「舞茸を食べた尼さんと木こりが山中で踊り狂ったという話ですよ」
「ま、舞茸ってそういうものなの⁉」
「そういう言い伝えのお話ですから致し方ありませんね……さて、クリスティーナ、そろそろ観念してもらいましょうか」
「なにを! って、ええっ⁉」
気が付くとクリスティーナは壁際に追い詰められ、尚も踊り狂う超慈たちに他の三方を固められてしまったからである。四季が淡々と告げる。
「それでは別のお話を一つ……貴方を拘束させて頂きます」
「! ぐっ……」
四季が別の話を読み上げると、クリスティーナは大人しくなった。四季は眼鏡の縁を触りながら満足気に呟く。
「とりあえずは目標到達ですかね……このままクリスを連れて撤退しましょう」
「……このまま帰るだなんて、つれにゃーことを言ったらいかんがね」
「!」
四季たちが視線を向けると、暗がりから茶色い短髪の青年が歩み寄ってきた。四季が渋い表情になりステラが舌打ちする。
「ちっ、戻ってくるとは……」
「瑠衣、あれは……」
超慈が小声で瑠衣に尋ねる。
「この合魂サークルの代表で、商業科全体も取り仕切っている、『水上日輪』だし」
「あいつが……思ったより小柄だな……」
水上は顎をさすりながら口を開く。
「クリスは俺も気に入っとる。今更合魂部へ返せ言われてもそいつは無理な相談だぎゃ」
「どうする四季?」
ステラが小声で四季に尋ねる。四季が答える。
「このまま手ぶらで帰るわけにも参りません……幸い、あの方がいないようですから、まだこちらにツキはあります」
「ってことは……」
「先手必勝です!」
「ふん!」
「がは……!」
あっという間に距離を詰めた水上の拳が四季の鳩尾に入り、四季はうずくまる。
「出来ればこういう手荒な真似はしたくにゃーけどしゃーない、おみゃーさんの魂道具は厄介だもんでな」
水上は苦笑交じりに呟く。ステラが糸魂蒻を繰り出す。
「四季! くっ! 糸魂蒟!」
「低い位置を狙った糸! これを飛んでかわしたところを一年のくのいちちゃんが狙うって寸法だろう! お見通しだみゃあ!」
「⁉」
「そらっ!」
「ぐうっ!」
「どわっ⁉」
水上はあえて足に糸を巻き付かせると、足を思い切り振り上げる。糸を切り損ねたステラの体が空中に舞い、既に空中で迎撃体勢を取っていた瑠衣と派手にぶつかり、両者は空しく落下する。水上は後頭部を掻く。
「あらら……少しやり過ぎたかな?」
「くっ……小柄だからと言って見くびった……」
「魂道具も発現させていないようなのに……」
ステラと瑠衣が苦し気に呟く。水上は笑う。
「はっはっは。魂道具頼みじゃここまでは辿り着けんよ。それよりもおみゃーさんたち……」
「?」
「揃いも揃ってべっぴんさんの集まりだがね。そちらからべっぴんさん、べっぴんさん、1人飛ばしてべっぴんさん……」
「飛ばすなよ!」
水上の発言に超慈は突っ込むが、水上はそれを無視して話を進める。
「……おみゃーさんたち、俺の合魂サークルに入らんか?」
「なっ⁉」
「魂力、魂波、ともに申し分なし、加えてべっぴんさんとくりゃあ是が非でも我がサークルに欲しい人材だぎゃ!」
「……」
「ちょうどええことにサークルの入部用紙も三枚あるんだわ。さっと書いて、一緒に楽しいサークルライフを送ろうみゃ」
水上が懐から紙とペンを取り出し、笑顔を浮かべて四季たちに渡そうとする。
「お、俺は無視かよ!」
「黙っとれ。魂力も魂波も並程度の奴が……」
「ぐっ……!」
水上の一睨みに超慈は圧されてしまう。水上は再び笑顔を浮かべ、四季たちに歩み寄る。
「ささっ、この欄にサインを……」
「何をしとる!」
「ぶほっ⁉」
黒髪ロングの女子が水上の後頭部に強烈な飛び蹴りを喰らわす。
「まったく……ちょっと目を離すとこれだもん……」
「ああ、紙とペンがわやになってしまった……何をするんだがね⁉」
「それはこっちの台詞! 何を堂々と女の子をナンパしとんの?」
「ナンパとは人聞きの悪いことを……れっきとしたスカウト活動だがね」
「物は言いようね……」
女子はジト目で水上を見つめる。水上はバツの悪そうに顔を背ける。超慈が四季に問う。
「あ、あの方は?」
「あの方は深田奈々さん。合魂サークルの副代表で、水上さんとはいわば恋人同士ですね」
「こ、恋人⁉」
「⁉」
水上と深田が視線を向ける。そこには怒りの形相で魂択刀を構える超慈の姿がある。
「あ、あの眼鏡君、でら強い魂波⁉」
「ば、馬鹿な! 急激に魂力が高まったのか⁉」
「……せねえ」
「え?」
「許せねえ! そんな美人な恋人がいながら、合コンサークルの代表だと⁉ てめえ、人の血が流れているのか⁉」
「ご、合コン違いだがね!」
「問答無用!」
超慈が水上に斬りかかる。水上はなんとかその攻撃を受け止める。
「ちっ、思ったよりやるみゃあ! 奈々! 力を貸せ!」
「ええ……その眼鏡君の言う通りだと思うし……」
「冗談言っとる場合か⁉」
「はいはい!」
「む⁉」
「名古屋名物は?」
「暇つぶしだがね」
「ひつまぶしや!」
「ぐおっ⁉ な、なんだ⁉」
深田と水上のやりとりから火が燃え上がり、超慈が圧倒される。戸惑いをあらわにする超慈に対し、四季が声を上げる。
「それがその2人の魂道具、『漫才魂火』です。様々なバリエーションがありますが、今のように『フリ』『ボケ』『ツッコミ』が上手く決まると、爆発に近い現象が発生します!」
「ふ、2人がかりの魂道具とは……」
「面食らっているようだな! 俺たちの阿吽の呼吸をとくと味わえ!」
「阿吽の呼吸……?」
「ん?」
超慈がわなわなと震える。
「そんな息ピッタリのパートナーがいるなら、十分幸せじゃないか! 何故に合コンサークルの勧誘などする必要がある⁉」
「だ、だから、合コン違いだと言っておろうが!」
「黙れ!」
「くっ、奈々! 名古屋城と言えば、金のしゃちほこだがね⁉」
「昔の人が十個集めたから、二個もりゃーたのよ!」
「そりゃ銀のエンゼルじゃ!」
「ぐはっ⁉」
別の方向から攻撃を喰らい、超慈が後退する。ステラが叫ぶ。
「その2人はボケとツッコミ、自由自在よ!」
「攻撃がどちらからくるか読めないってことか……」
「……撤退じゃ、奈々。こいつの目は死んどらん、厄介な相手だぎゃ」
「おみゃーさんがそう言うなら!」
「くっ、逃がしたか……」
超慈は悔し気に呟く。
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