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「え~愛京大付属愛京高校一年の優月超慈です。この愛知県の隣の静岡県出身です……」
もじゃもじゃとした頭に眼鏡をかけた少年がカメラに向かって呟く。
「一人で何を撮ってんだよ、超慈?」
茶髪で坊主頭の少年が声をかける。超慈と呼ばれた少年がカメラをそちらに向ける。
「え~彼が外國仁です。一年生、岐阜県出身、中学では男子新体操をやっていたそうです……なかなか気の良いやつです」
「いや、こっちを撮るなよ。どうせならかわいい娘を撮れ」
仁がカメラを近くに座っていた金髪ギャルに向ける。ギャルが戸惑う。
「か、かわいい⁉ 満更でもないでござる! じゃなくて、何を撮っているでござるか!」
「……口調からして忍びきれていない――本人は忍べていると思っているそうです――彼女は鬼龍瑠衣さん……一年生、三重県出身でなんとか流だそうです」
「『慈英賀流』でござるし!」
「ああそれ、まあ、基本仲間想いの良い子です」
瑠衣が声を上げる。超慈はそれに頷きながら端正な顔立ちをした長身のマッシュルームカットの男子にカメラを向ける。
「え~こいつが礼沢亜門……一年生、地元愛知では有名なお寺の生まれだそうです」
「……勝手に撮るな」
「どうしてなかなか……いけ好かない奴です」
「俺だけ悪口だな……!」
超慈は離れたテーブルの方にカメラを向ける。
「続きまして、二年生の皆さんです……」
「……」
「読書をされているのが、竹村四季先輩です。この部の参謀的存在です。頭良いです」
「頭の悪い紹介ですね……何を撮っているのですか? まあ、大方想像はつきますが……」
眼鏡をかけた小柄な女子がショートボブの白髪をかき上げながら呟く。
「お次は釘井ステラ先輩……農業科、気配りの出来る先輩です」
「……ウチを褒めてもらうのは良いけどさ、なんなの?」
赤茶色のミディアムボブの髪型で作業着姿の女子が気だるそうにカメラを見つめる。
「続いては、体育科の朝日燦太郎先輩。脳筋……もとい、運動神経抜群です」
「はははっ! 撮るか、俺の鍛え抜かれた肉体を!」
明るい髪色で短髪の男子がジャージとハーフパンツを脱ごうとする。
「あ、脱がないで下さい。次は中運天クリスティーナ先輩。いつも明るい方です」
「なんだかよく分かんないけど、イエ~イ♪」
長めのドレッドヘアーをなびかせた褐色の女子がカメラに笑顔を向ける。大胆に着崩している制服から、豊かなスタイルが窺えるが、超慈はそれを極力映さないようにする。
「最後は桜花爛漫先輩。頭の良い方です」
「ざっくりとした紹介だね。まあ、別にいいけど……」
やや小柄な体格の中性的な男子生徒が苦笑する。ルックスはかなり整っているが、制服の上に着たダボダボな白衣と、桜色という派手な髪がボサボサなことが台無しにしている。
「……とりあえずは以上です」
「なにが以上なんだよ?」
仁が問う。超慈が首を傾げながら答える。
「俺も分かんねえけど、部長が記録用に撮っておけってさ……」
「部長が? 記録ってなんだよ?」
「さあ?」
「今後の『合魂部』の活動を記録しておくのも悪くはないと思ってな……」
紅髪のストレートヘアーで右目を隠した凛としたスレンダー美人が超慈と仁の背中から突然声をかける。超慈たちが驚く。
「うわっ⁉ い、いつの間に……ちょ、超慈、撮れよ」
「あ、ああ……三年生でこの合魂部部長、灰冠姫乃先輩。とにかく説明不足な方です」
「ひどい紹介だな……活動記録だけじゃなく、普段の訓練なども記録出来るだろう?」
姫乃が持っていた杖で向けられたカメラを軽くトントンと叩く。
「普段の訓練……一応改めてお聞きしますが、合魂とはなんですか?」
「ああ、お互いの魂を合わせ……魂から生じる波動を導く! これこそが『合導魂波』だ!」
「うん、やっぱり俺の知らない合コンですね……」
「我々はこの愛知から、天下を獲りに行くぞ!」
「ますますもって分からない……」
杖を高々と掲げる姫乃にカメラを向けながら超慈は戸惑いを口にする。
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