合魂‼

阿弥陀乃トンマージ
阿弥陀乃トンマージ

第6話(3)解釈はそれぞれ

公開日時: 2022年9月25日(日) 09:41
文字数:2,134

「フフフ~♪」

「だ、誰だ⁉」

 そこに長めのドレッドヘアーをなびかせた褐色の女子生徒が姿を現す。制服は大胆に着崩しており、豊かなスタイルが目につく。四季が体勢を立て直しつつ話しかける。

「く……以前より魂力を増していますね」

「そりゃあ、四季やステラを同時に相手にするなら、ガンガン飛ばしていかなきゃね~♪」

 女子はウィンクする。超慈が尋ねる。

「お、お知り合いですか⁉」

「本日のお目当てですよ、中運天なかうんてんクリスティーナ……かつて合魂部だった者です」

「⁉」

 超慈は驚きながらクリスティーナに視線を向ける。クリスティーナが笑う。

「ハハッ! お目当てっていうことは……?」

「合魂部に戻ってきて頂きたいのです」

「断るよ」

「にべもありませんね……」

 四季が苦笑する。クリスティーナが両手を広げる。

「今の合魂サークルでアタシは十分満足だからさ」

「はい、そうですか、というわけには参りません……!」

「~♪」

「がはっ……!」

 クリスティーナが巧みに四季との距離を詰め、流れるような動きで四季の手から魂昔物語集を叩き落とし、さらに喉の辺りを突いてみせる。四季はむせるように膝をつく。

「四季のそれは厄介だからね……ただ、本を開かせず、声を発させなければいい」

「な、なんだ、今のは……音楽に合わせて踊るように……」

 超慈が困惑する。クリスティーナが頷く。

「これがアタシの魂道具、『魂天保羅利伊コンテンポラリー舞踊ダンス』だよ。音を聞かせることで相手の戦意を奪うのが主なんだけど……」

「だけど?」

「最近はもっぱら音の流れに合わせて相手に直接攻撃するのがトレンドかな~♪」

「ダ、ダンスを履き違えている!」

 クリスティーナの言葉に超慈は愕然とする。クリスティーナは苦笑する。

「解釈違いかな?」

「い、いえ、そもそもコンテンポラリーダンスに対する理解が足りていないのですが……」

「それは残念、初対面だけど、ここで消えてもらうよ♪」

「き、消えてもらうって!」

 どこからか音楽が流れ、クリスティーナが踊り始める。

「♪」

「し、しまった! 距離を詰められた!」

 あっという間にクリスティーナが超慈の眼前に迫り、超慈は狼狽する。

「糸魂蒻!」

「!」

 ステラが繰り出した糸魂蒻がクリスティーナの体に巻き付く。

「す、好きにはさせないから!」

「体の自由を奪ったつもり~?」

「⁉」

「それ!」

「む⁉」

 クリスティーナは流れるようなターンとステップでステラに接近する。

「はっ!」

「どあっ!」

 クリスティーナは片脚をまっすぐに伸ばして高く振り上げながら、もう一方の脚で踏み切って跳び、空中で脚を大きく開いて、ステラの体に当てる。攻撃を喰らった形になったステラは悶絶しながらうずくまる。クリスティーナは申し訳なさそうに笑う。

「ごめん、ごめん、力を抜けないタイプだからさ」

「ぐっ……」

「い、今のはバレエの動きのような……」

 超慈の呟きにクリスティーナが感心したように頷く。

「へえ、結構よく見ているね。コンテンポラリーダンスというのはバレエテクニックを母体とした動きも多いからね」

「むう……」

「厄介な四季とステラには黙ってもらった……次は眼鏡君、君の番だよ♪」

「くっ!」

 超慈は魂択刀を構える。クリスティーナは目を丸くする。

「ほお、それがキミの魂道具……応用形だね」

「来るならこい!」

「魂力の高まり、魂波の波動も悪くない……油断は出来ないね」

「……」

「……ただ、経験が不足している!」

「はっ⁉」

 クリスティーナが一瞬で超慈の懐に入る。

「反応が遅れている……もらったよ♪」

「そうはさせないニン!」

「おっと⁉」

 瑠衣が両者の間に割って入り、クリスティーナの手足を弾く。

「拙者を忘れてもらっては困るし!」

「……こちらも見ない顔だね、一年生かな? 多少厄介そうだけど、やることは変わりない。まとめてお持ち還りさせてもらうよ」

 クリスティーナが一旦距離を取り、構えを取る。瑠衣が呟く。

「……来る!」

「はっ!」

「! むお……!」

 逆さまの体勢になったクリスティーナの蹴りを喰らい、瑠衣は崩れ落ちる。超慈が驚く。

「なっ⁉ バレエじゃねえのか⁉」

 クリスティーナがゆっくりと体勢を直しながら呟く。

「……コンテンポラリーダンスというものはストリートダンスなど、他のダンスの要素も取り入れているんだよ」

「ちぃ! それじゃあ動きがまるで読めねえ!」

「なかなか難しいだろうね。動きが読める前に……終わらせる!」

「うおっ! せい! とおりゃ!」

「なっ⁉」

 超慈が流れるような連続攻撃に反応したことにクリスティーナは驚く。

「な、なんとか防いだ……」

「な、なんとかって! キミ、ダンスやっていたの⁉」

「いいえ、まったく」

「ならどうして反応することが出来たの?」

「恐らく……俺の魂道具によるものかと……」

「え?」

 超慈は魂択刀を掲げてみせる。

「この魂択刀は魂力の高まりを感知出来ます。それによって反応出来たのかと……」

「理屈はなんとなくだけど分かったよ……ならば、その反応を上回るまで!」

「先手を取る!」

「ぐう⁉」

 超慈の攻撃を受け、クリスティーナは転倒する。超慈は乱れた呼吸を整えてから呟く。

「ダ、ダンスのことはさっぱりですが、動きの基本は足。足を狙わせてもらいました」

「い、意外と頭が回るようだね……!」

 クリスティーナが整った顔を崩して超慈を睨み付ける。

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