完結済 短編 現代世界 / その他

ジェシカのプレゼント

公開日時:2022年3月16日(水) 12:08更新日時:2022年3月16日(水) 12:08
話数:1文字数:1,560
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 メグのママは病気でベッドにいます。治してあげたくても、薬を買うお金もありません。


 どうしてもママの病気を治してあげたいメグは、庭に咲いているマーガレットを街まで売りに行きました。





 パン屋の店先に立っていると、


「ジャマだ」


 と店主に言われ、


 ケーキ屋の前で売ろうとしても、


「向こうへ行け」


 と追い払われました。



 仕方なく、人通りのない路地裏で売ることにしました。


 通る人に、


「……お花を買ってください」


 と言っても、誰も立ち止まってくれません。




 暗くなっても一本も売れず、花はしおれてしまいました。




 次の日も、花は一本も売れませんでした。




 とうとう、最後の5束になってしまいました。


「……お花はいりませんか?」


 でも、誰も足を止めてくれません。


 半分あきらめたそのときです。


「いくらかな?」


 山高帽やまたかぼうにステッキの紳士しんしが値段を尋ねました。


 びっくりしたメグは、


「えっ! ホントに買ってくれるの?」


 うれしくて、思わず泣いてしまいました。




 事情を聞いた紳士は、花をぜんぶ買う代わりに、娘の友だちになってもらえないかと頼みました。


 メグは、笑顔でうなずきました。





 ーー大きなおうちのリビングに通されると、車椅子に座った同年代の少女がほほえんでいました。


「こんにちは。私はジェシカ。よろしくね」


 ジェシカは、ブロンドの長い髪にピンクのリボンがよく似合っていました。


「私はメグ。あなたのパパにお花を買っていただいたの」


「ジェシカ、ほら、おまえの好きなマーガレットだよ」


 パパは、マーガレットの花束を手にしました。


「わぁー、きれい」


 ジェシカはうれしそうにマーガレットを見つめました。


「何色の花瓶がいいかな?」


 パパが尋ねました。


「んとね、黄色の花瓶にさして」


「はい、はい。いま入れてくるからね」


 パパはそう言って部屋を出て行きました。


「ね、メグ、私の宝物を見て」


 ジェシカはそう言って、ひざの上の、白地にバラのり物がある丸い箱のふたを開けました。


「わぁー、きれ~」


 そこには、アメジストやルビー、トパーズやガーネットなどの宝石が入っていました。


 キラキラ輝いて、それはそれは美しく、まるでクリスマスツリーの電飾のようでした。


「どれが好き? ひとつあげる」


「えっ! こんな大切な物もらえないわ」


「私があげたいの。その代わり、ときどき遊びに来てね」


「うん」


 ふたりは約束しました。





 家に帰ると、ジェシカにもらったサファイアをママに見せました。


「まぁ~、きれいね。メグ見て、海の中にいるみたいよ」


 ママが感動しています。


「わぁーっ、ホントだ」


 メグが目を輝かせました。


 今度は明かりに透かしてみました。


「ママ、見て、星空みたい」


「まぁー、ステキね」


 そこには、サファイアを見つめる笑顔のママがいました。





 すると、不思議なことが起きました。


 ママはいつの間にか元気になって、ベッドから降りると、キッチンで料理を作り始めました。




 数日後、丘に咲くヒナゲシを束にして、ジェシカに会いに行くと、ジェシカのパパが悲しい顔をしていました。


「……ジェシカは?」


「……天国に行ってしまったよ」


 パパはそう言って、静かに目を閉じました。


「……ジェシカ、また遊ぼ、って約束したじゃない……」


 メグの瞳から涙があふれました。





 ジェシカは、自分の命と引き換えに、ママを助けてくれたのでしょうか……。



 ジェシカ、私たち友だちだよね? ずっとずっと。ジェシカが生まれ変わって、また会うときも……。


 メグはサファイアを手にして見つめると、


「ジェシカ、ありがとう」


 と天国のジェシカにお礼を言いました。


 すると、不思議です。


 ほほえむジェシカの顔がサファイアに浮かび上がりました。


 このとき、ふたりは本当の友だちになったのです。





 メグは、ジェシカに会いたくなったら、サファイアを見つめます。


 そして、お話をします。


 だから、さみしくありません。



 ジェシカは永遠の友だちです。







   おわり

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