ざわざわとするギルドのベンチで、私は引き換えの番号札を持って買取の査定が終わるのを待っていた。査定に出したのは|森山猫《フォレストリンクス》の爪と魔石。
オグズおじさんが新調してくれた弓の慣らしで大河の森に入ったら、黒髪の男の人が|森山猫《フォレストリンクス》に襲われていた。
上に乗られて今にも食いつかれそうだったので、矢を放とうとしたら|森山猫《フォレストリンクス》の腹を蹴り上げ後方に吹き飛ばした。
立ち上がった彼は遠目に見ても傷だらけで、左腕は血が滴っている。それでも|森山猫《フォレストリンクス》と睨み合い、どちらも動くタイミングを探っている。
武器も持たずに挑むなんて無茶だ!
横取りはマナー違反だとは思いつつ、私は改めて矢を放つ用意をした。
結局|森山猫《フォレストリンクス》は私が矢で倒してしまった。
声を掛けて治療用に布を渡す。黒髪で黒目、年上だと思ったけど近くで見ると同い年くらいかも?
彼が治療してる間にも剥ぎ取り出来るところだけ剥ぎ取ったけど、今日は弓の慣らしだけのつもりだったから、ギルドで|魔法の袋《マジックバッグ》を借りてこなかったのは失敗だったな。
他の剥ぎ取れないところをどうするか聞いたけど、運べないってことで勿体ないけど他のクリーチャーが来る前に燃やしてしまう。「森で火を使って大丈夫か? 」って聞かれたから、大河の森なら大丈夫って答えたけど、そんなことも知らないってことは森のない地域から来たのかな?
一番酷い左肩は治療したみたいだけど、全身傷だらけ。危ないから森の外まで案内してあげる。どの辺りにいるか分かってなかったみたいで、「どうして北に行くのか? 」って聞かれちゃった。
彼は旅の途中に薬草の採集をしていて道に迷ったんだって。名前は『ノブヒト・ニシダ』というみたい。変わった名前、やっぱりこの辺の人じゃないだ。凄く丁寧な言葉遣いだしもしかして貴族様? でも、貴族様が一人で旅とかしないのかな?
剥ぎ取った素材を渡そうとしたら、「仕留めたのはあなただから」って受け取ってくれなかった。横取りしたみたいで私も受け取れないって言ったけど、納得してくれなくて結局折半になっちゃった。いいのかな?
どこに行く旅なのか聞いたけど、「場所は決めてない」って言われた。何か訳ありなのかな?
このまま夜になると危ないし、私が住んでるウィーレストに案内することにした。今からの時間だと宿取れるかな? ダメならうちに泊まってもらえばいいよね! 大胆過ぎるかな?
ウィーレストの外壁を見てなんだかとっても驚いてる。「横顔が子供みたいでなんか可愛い」なんて思ったら怒られちゃうかな? 入場税のことを知らないなんて……本当にどんなところから来たんだろう?
先に門の中で待ってたら、門を抜けたところで固まってる。
どうしたんだろう?
なーんだ、人が多くてびっくりしたのか!
興奮してるのが子供みたいでやっぱりちょっと可愛い。
反応が可愛らしいからちょっとだけイタズラしたくなっちゃった! てへっ!
本当は隣同士なんだけど、ギルドと治療のどっちに先に行くか聞いたら悩んじゃった……
「路銀のために採集で森に入った」って言ってたから、あんまりお金持ってないのかな?
治療の費用を教えたら先に治療院に行くことになった。まあギルドの隣の隣だけどね! ちなみに間にあるのは薬屋さん。
治療院の前でどんな反応するか見てたら納得されちゃった。治療受けてもらってる間に買取に査定をしてもらうからって先にギルドに来ちゃった。そういえば今日の|治療師《ヒーラー》は誰だろう? 可愛いからラナさんじゃない人だといいなぁ。
査定をしながら彼が来るを待つ。
なんだかちょっとドキドキする。この時間だときっと宿は一杯だよね?
それじゃあ仕方ない! 今日は家に泊まってもらおう!!
宿が一杯だから仕方ない!!
ああ、早く来ないかなぁ♪ もっといっぱいお話してみたいなぁ!
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