ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げをしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語。

ハクスラ異世界✕ソロ冒険✕ハーレム禁止✕変態OK=絶賛連載中÷微妙に癖になる。
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第181話【オアイドス】

公開日時: 2020年12月9日(水) 18:17
文字数:3,450

頭を俺に蹴飛ばされた吟遊詩人は気絶していた。


俺は気絶している吟遊詩人の体をパタパタと叩いてボディーチェックすると、武器に代わりそうな物を取り出す。


「ダガー一本に、フォークとナイフか~」


俺は鼻歌を奏でながら吟遊詩人の衣類をすべて剥ぎ取ってやった。


素早く素っ裸にしてやる。


それから吟遊詩人を暖炉の前の椅子に戻すと、新しい荒縄を異次元宝物庫から取り出して、椅子の背もたれにグルグル巻きに縛ってやった。


「そうだ、足もちゃんと縛らないとな~」


俺は今までの拘束経験から吟遊詩人の両足首を、椅子の足に縛り付けた。


これをされると、本当に動けないんだよね。


さーて、こいつが目を覚ますのが早いか、こいつが眠らせた客たちが起きるのが先か、さてさてどっちが先かな~。


俺はカウンター内に入ると、勝手にパンを咥えながら鍋の中のスープを皿に盛り付けた。


それからカウンター席で晩飯にする。


すると一番最初に目を覚ましたのは店の親父だった。


「あれ……、おれぇは……」


「おはようさん」


「あ、ああ、おはよう……」


店の親父は頭がガンガンしているのか、ブルブルと振るいながら眠気を飛ばしていた。


「わしゃ~、なんで寝ていたんだ……?」


俺は素っ裸の吟遊詩人を指差しながら言った。


「あの吟遊詩人が眠りの魔法で店の中の全員を眠らせたんだ。強盗目的でな」


「ほ、本当か!?」


「ほら、店の中を見れば分かるだろ。全員が寝ちまってやがる」


「あ、ああ……。本当だな……」


俺はカウンターの上にお金を置いた。


「勝手に食って済まないが、食事代と部屋代だ。部屋は空いてるだろ?」


「ああ、二階の三号室を使ってくれ」


店の親父がキーを差し出した。


「サンキュー」


俺は鍵を受け取ると、スタスタと階段を上り二階を目指す。


「おい、あんた。この素っ裸の吟遊詩人は、どうしたらいい?」


俺は階段の途中で止まると答えた。


「好きにしたらいいさ。強盗は俺が防いだから、未遂で終わってるからな。あんまりキツイ罰は与えないでくれよ」


「わかった。皿洗いぐらいで勘弁してやるわい!」


「あとそいつさ、たぶん目は見えているからな。その目隠しはハッタリだ」


「ハッタリ?」


「ほら、薄くて黒い布だと、明るい場所なら透けて見えたりするだろ。それがトリックの正体だよ」


「なるほどな~」


親父がカウンターを出て吟遊詩人の目隠しを外した。


すると三角の垂れ目が現れる。


なんだろう……。


けっこうイケていない素顔だな。


目隠ししてるほうが、なんとなく格好良かったかも知れん。


まあ、いいか。


あとは店の親父に任せよう。


「じゃあ、俺、寝ますから~」


そう言って俺は、二階の三号室に入った。


部屋は狭いがテントよりは遥かに広い。


それに何よりベッドもある。


久々のベッドである。


久々の布団である。


久々の寛ぎである。


わーーい。


俺はベッドにダイブすると、しばらくはしゃいでから寝た。


本当に久々の熟睡である。


そして、あっと言う間に朝が来た。


俺は寝癖が付いた頭をボリボリとかきながら一階の酒場に下りて行く。


「あれ~……」


俺が暖炉の前を見ると、まだ全裸の吟遊詩人が椅子に縛られていた。


目隠しはしていない。


吟遊詩人は項垂れながら眠っているようだ。


店内には他の客は居なくなっていた。


全員が家に帰ったのかな?


そして、俺がカウンター席に腰かけて朝飯を注文すると、昨日の晩と同じメニューが出て来た。


まあ、良くあることだ、我慢しよう。


俺が黙って晩飯の余りの朝食を食べていると、店の女将さんが話し掛けて来る。


「ねえ、あんたぁ」


「なんだい、女将さん?」


「あの吟遊詩人の強盗未遂野郎は、あんたが捕まえたんだろ」


「ああ、そうだ。褒美に朝食代を返金してくれるのか?」


「しないわよ……」


「じゃあなんだよ?」


「あれ、邪魔だから、連れてってくんないかしら」


「なんで俺が?」


「なんでって、あんたが捕まえたんだろ?」


「だが、犯行現場はこの宿屋だぞ?」


「それとこれとは別よぉ~」


「別も何も、いつもじっちゃんは独りって言うじゃあないか」


「じっちゃんは独り……?」


あー、この異世界には名探偵のアニメーションも無いのか。


ならば名言の一つも知ってるわけないよな。


「兎に角さ、邪魔だから、あの吟遊詩人を連れ出してくんないかい。あいつは全裸で文無しなんだよね」


あー、衣類もリュートも全部盗まれたのかな?


「しゃあないな~」


俺は朝食を全部食べ終わると、席を立って全裸の吟遊詩人に声を掛けた。


吟遊詩人は直ぐに目を覚ます。


「はっ! もう止めてくれ!!」


なんだ、いきなり?


「頼む、謝るから鼻の穴とか、いろんな穴に豚肉とか鶏肉を詰め込まないでください!!」


何こいつ、昨晩そんなことされてたんだ。


なんだかちょっぴり羨ましいな。


「おい、吟遊詩人」


「はっ、あんたわ!!」


「昨晩は、大変だったやうだな」


「え、ええ。酔った客たちに、散々弄ばれましたわ……。しくしく……」


「そりゃあ、随分と楽しんだようだな~」


「楽しんだわけがないですよ! 地獄でしたよ!!」


「いやいや、言ってる意味が分からないわ」


「こっちが分からんわ!!」


「まあ、縄をほどいてやるから、もう強盗とか悪いことをすんなよ」


「あ、ありがとう……」


俺がロープを解いて、全裸の吟遊詩人を自由にしてやった。


「ところで私の服は……?」


辺りを見回したけれど緑のローブは見当たらない。


「盗まれたんじゃあないの」


「私のリュートは!?」


「それも間違いなく取られたろ」


そこでカウンター内から女将さんが口を挟む。


「あんたら、リュートならそこを見てごらんな~」


俺たちは女将さんが指差すほうを見た。


そこには暖炉が在り、火の消えた暖炉の中には燃えかすと変わったリュートの破片が残っていた。


「あー、誰かが燃やしたんだね」


「私のリュートがぁぁああ!!」


「でえ、全裸の変態吟遊詩人さんよ。これからどうするんだい?」


「すみません、その呼び方は止めてくれませんか……」


「何を言いやがる。お前はどこから見ても、全裸の変態吟遊詩人だろ?」


「私は変態じゃあありませんし、服も無いしリュートも無いから、どこから見ても吟遊詩人だとは分かりませんよ!!」


「じゃあ、不明な点を省いて、全裸男で良いのかな?」


「それもかなり変態っぽく聞こえるから却下します……」


「全裸のお前に却下できる権利があると思うのか?」


「思いますよ!!」


「まあ、好きなだけわがままを言えばいいさ。俺は行くからな~」


「い、行くって?」


「旅の途中なんだ。そろそろこの町を出るつもりだが」


「全裸の私を置いてですか!?」


「ああ、全裸の変態野郎を置いてだ」


「そんなぁ……」


俺は全裸の吟遊詩人を置いて店を出た。


最後に店の女将さんが「またのおこしを~」っと声だけで見送ってくれた。


まだ朝が早いせいか、街角には人影が見られない。


農村だから、今ごろ仕事中なのかな。


そして俺が金馬のトロフィーからアキレスを呼び出すと、店の中から全裸の吟遊詩人が飛び出して来た。


「す、すまないが。服代だけでも恵んでくれないか!?」


「はぁ~……」って俺が深い溜め息を吐いた。


それから異次元宝物庫から転送絨毯を取り出すと地面に広げる。


「あんた、名前は?」


「オ、オアイドスと申します」


「じゃあオアイドス、ここに立ってくれ」


「はい~……?」


俺はオアイドスと肩を組むと二人で転送絨毯の上に立った。


「ちょっと屈んでくれないか」


「こ、こうですか?」


「転送先が、テント内だからさ」


「テント内……?」


それから俺は、アキレスに話し掛ける。


「アキレス。絨毯を見張っててくれよ。直ぐに戻るからさ」


アキレスはヒヒィーンと唸って答えた。


どうやら理解してくれたらしい。


そして俺は合言葉を口に出す。


「チ◯コ」


「!!!」


俺たちは瞬時にソドムタウンのテント内にテレポートした。


そして俺はテントから出ると、直ぐ側で焚き火に当たっていたスカル姉さんに言った。


「ただいま、スカル姉さん。こいつの面倒も見てくれや」


「いきなり何さ。なんなの、この変態全裸男はさ?」


「頼んだよ~」


俺はスカル姉さんの話を聞かずにテント内に戻ると直ぐに転送してスダンに戻った。


そして転送絨毯を丸めて異次元宝物庫に片付ける。


問答無用だが、まあいいだろう。


「さーて、旅立とうかな~」


俺はアキレスに股がると、手綱を引いて町を出た。


それにしても、放火魔とか吟遊詩人をぶっ倒しても、経験値にならないのかな。


あいつら弱かったから、経験値も低いんだろうな。


次こそレベルアップしたいもんだわ。


そんなことを考えながら、俺は馬を走らせた。


新天地、魔王城を目指す。



【次回につづく】

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