ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げをしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語。

ハクスラ異世界✕ソロ冒険✕ハーレム禁止✕変態OK=絶賛連載中÷微妙に癖になる。
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第176話【ゴリラ】

公開日時: 2020年12月6日(日) 18:42
文字数:2,755

俺はギルガメッシュと別れて冒険者ギルドをあとにした。


建物の外に出れば、もう夕日が沈みかけている。


本当は、ダラダラと酒場でハンスさんを相手に、くだらない話をしながら夕飯でも食ってから帰ろうかとも考えてたが、万が一にもアマデウスたちに絡まれたら面倒臭いので、それはまたの機会にした。


そして俺は、スカル姉さんたちが待つ空き地に帰る途中で雑貨屋に立ち寄る。


魔王城までの道のりが、詳しく載っている地図を探すためにだ。


魔王城を占拠しに行くのに、道中が分からなければ話にならないからな。


そして手頃な地図を見つけて買うと、買ったばかりの地図を振り回しながら雑貨屋を出た。


辺りはもう暗い。


夜になっていた。


俺は人目も憚らず、地図を異次元宝物庫に入れた。


最近は面倒臭くて異次元宝物庫を隠そうともしていないな。


困った俺ですわ~。


あははははは~。


「おや~~」


雑貨屋を出た俺が、路地の反対側を見れば知った顔の男が、壁の隅に膝を抱えながら座っていた。


「あれ、ゴリラじゃあね?」


ゴリラとは、アマデウスの子分だ。


クラウドと一緒にアマデウスのパーティーで前衛の戦士を勤めている男である。


ちょくちょく絡んできて迷惑しているのだ。


しかし今日は何やら様子が可笑しいぞ。


体育座りなんかして、センチを気取ってやがる。


俺が人混みを横切りゴリラに近づくと、ヤツは薄汚れた上着と短パンだけで座っていた。


足は何も穿かずに裸足である。


戦士用の武器も防具も、服意外は何も身に付けていない。


そして、なんだか疲れきっており、かなり薄汚れている。


ゴリラは俺が近付いたのにも気付かず、ただボーっと一点を見つめていた。


その視線の先を追って見れば、旨そうな料理を作っている屋台が在った。


なんだ、こいつ?


目が死んでるな?


なんだか俺が、ゴモラタウンに行っている間に、この町ではいろいろあったっぽいな。


本当に変革が多い町である。


「よう、ゴリラ。どうしたん?」


俺が話しかけると膝を抱えながら座って居たゴリラがゆっくりと俺を見上げた。


「なんだ、アスランか……。俺はゴリラじゃあねえぞ。本名はゴリだ……」


俺は元気の無いゴリの隣にウンコ座りをした。


「おいおい、いつものツンデレっぽく、食いついてこないのか。つまんねーじゃあねーか」


「そんな元気ねえよ……。三日前から何も食ってねえんだからよ……」


「へぇー、そうなんだ」


俺は立ち上がるとゴリが見詰めていた屋台から串焼きを数本買ってきた。


俺がゴリの元に串焼きを噛りながら戻ると、ゴリは涎を垂らしながら俺を見上げている。


いかにも欲しがっていやがるな。


俺は串焼きを三本だけ片手に持って、ゴリのほうに差し出しながら言った。


「食うか?」


「いいのか……」


「今日は特別なんだからな。勘違いするなよな!」


「あ、ありがとう!」


ツンデレっぽくボケたのに突っ込まれなかったぞ……。


俺が悲しいじゃあねえかよ……。


まあ、いいか。


そしてゴリは俺から串焼きを奪い取る勢いで受け取ると、ムシャムシャと一心不乱に食べ始めた。


相当腹が減ってたんだな。


うほうほと言いそうである。


俺もそんな様子のゴリの横に座って、手に有る串焼きの残りを食べた。


「どうしたん、ゴリ?」


俺の言葉に串焼きを貪り食っていたゴリの動きが止まった。


「アマデウスのところで何か有ったんか?」


ゴリは串焼きを食べながら話す。


「パーティーをクビになった……」


「なんで?」


「クラウドと比べて成長が悪いからだ。全然成長が見られないんだってよ……」


「でも、パーティーをクビになったからって、こんなところで腹を空かしているお前さんじゃあ無いだろ?」


ゴリは俯きながら言う。


「元々俺は、借金が多くてな。アマデウスさんに肩代わりして貰ってたんだ。それもパーティーをクビになって終わりだ。防具一式は、借金のかたに全部取られちまった……。でも、借金は全部払い終わったが、今は一文無しなんだ……」


「じゃあ、また借金して、装備を整えて冒険に出ればいいじゃんか?」


「それも駄目だった……。アマデウス派のヤツらも俺とはパーティーを組んでくれないし、ギルガメッシュ派も同様だ……」


普通の冒険者だと、ソロって選択肢は無いのね。


「じゃあ普通の仕事につけよ?」


「俺みたいな体力しかない馬鹿に出来る仕事は、力仕事だけだが、人足とかの仕事は人手が余ってて毎日は仕事が回ってこないんだ……」


「それで、ここでホームレスみたいなことをやってたんか?」


「ああ、情けない話だが、そうだ……」


「アマデウスも厳しいが、世間も厳しいな~」


「あの人は、俺みたいなろくでなしが嫌いなんだとさ……。まあ、そもそもろくでなしだから冒険者になったんだがな……」


「じゃあよ、居場所が無いなら、俺んところに来るかい?」


「はあ……?」


「どうする?」


「だってお前は、ギルガメッシュ派だろ。何より俺なんか嫌いだろ……?」


「好きか嫌いかって言ったら男は全員嫌いだ。できたら世界が巨乳の美女だけになればいいと考えぇぇええがあがえがえがあがかあが!!!」


「ど、どうした急に!?」


「ちょっと、待ってろぉおおお!!」


「待つ! 待つけど大丈夫か!!」


「ただの発作だ。気にすんな……!」


ぜぇはー、ぜぇはー、ぜぇはー。


落ち着けー、落ち着けー。


「よし、もう大丈夫だ。話を戻そうか」


「あ、ああ……」


「でえ、どうする。俺んところに来るか、来ないか?」


「お前のパーティーに加われと?」


「ちげーよ。俺はソロだからな」


「じゃあ、俺はお前のところで、何をしろってんだぁ?」


「村人だ」


「村人……?」


「そう、村人二号にしてやるぞ」


俺が悪ガキっぽく笑うと、ゴリは怪訝そうに俺を見ていた。


そして、俺は立ち上がると言う。


「とりあえず、その気が有るならついてこいや」


そう言い終わり俺が歩き出すと、裸足のゴリも慌てて立ち上がり俺のあとを追って来た。


まあ、少なくとも、自分で前進だけはして貰わないと困るからな。


俺がゴリをつれて空き地に帰ると、焚き火を囲みながらスカル姉さんと縛られたままのバイマンが待っていた。


狼三匹も、まだ居やがる。


こいつら狼の魔法は、時間で切れないのかな?


「スカル姉さん、それにカイマン。ちょっと話が有るんだが、いいかな?」


「私はカイマンじゃあなくて、バイマンです……」


続いてスカル姉さんが、物欲しそうに言う。


「アスラ~ン。話はいいが、夕飯は買ってきてくれたのか?」


「ああ、忘れた……。ちょっと買って来るわ」


ここにも飢えた亡者が巣くってるのを忘れていたぜ。


そういえば、こいつらも文無しなんだよな。


俺が空き地から出て行こうとすると、ゴリがあたふたと狼狽える。


「あー、ゴリ。お前はここで待っててくれないか」


「わ、分かった……」


そう答えると、ゴリもオズオズと焚き火の輪に加わる。


俺は踵を返すと、急いで食料を調達しに走った。



【つづく】

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