ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げをしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語。

ハクスラ異世界✕ソロ冒険✕ハーレム禁止✕変態OK=絶賛連載中÷微妙に癖になる。
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第36話【走れ、アスラン】

公開日時: 2020年9月19日(土) 10:23
文字数:2,528

俺は平原を走っていた。


タババ村で村長さんに報酬を頂いたあと、一泊させてもらった。


そして俺は早朝から荷物を背負って村を発ったのだ。


冒険の成功から気分はルンルンの上機嫌である。


あとはソドムタウンに帰って冒険者ギルドに報酬の一割を納めたら仕事は終わりだ。


──そのはずたった。


しかし、今の俺は走っている。


ひたすら草原を走っていた。


もう既に何キロぐらい走ったのかが分からない。


そのぐらい走っている。


兎に角、走っている。


正直、覚えたての新スキルの【マラソンコストダウン】が無かったら終わっていただろう。


それを思うとラッキーである。


地平線の先にソドムタウンの防壁が見えて来た。


ゴールは近いぞ。


頑張れ、俺。


そして、走る俺の後方には100匹を超える狼が追って来ていた。


そう、俺は追われているのだ。


野生の狼の群れに……。


いーやー!


こーわーいーよー!!


流石に100匹のウルフとかって無理だよね。


戦っても勝てる数じゃあないよ、マジでさ!


こいつら牙剥いて、おっかねー|面《つら》してるし!


絶対に俺が好きで追っかけて来ているわけじゃあないよ、こいつら!


ムツゴロウさんみたいに、わしゃわしゃわしゃっとかやって和解できるムードじゃあないもの!


追い付かれたら絶対に食われるわ!


こっちの漢字を使うよ。


口偏付けるよ!


喰われるわ!


絶対に喰われるわ!


しかもこいつら俺が疲れるのを待っていやがるんだ。


そんな節が見られる。


疲れて抵抗出来なくなってから襲う積もりだよ。


そんな余裕の速度で追ってきてるもん。


俺が武装してるから、疲れてないと抵抗されると考えてるよ。


このウルフたち頭がいいよ!


野生のくせして利口だよ!


最初はね、数匹だったんだよ。


付かず離れす付いてきているだけだったんだよ。


それが時間が過ぎるにつれて数が増えて行ったの。


絶対に一つの群じゃあないよ。


数個の群が合流して巨大な群と化してるよ。


普通さ、野生でそんなことあるの!?


だってウルフって縄張りとかあるでしょう。


厳しいでしょう。そういうのさ!


なのになんで、こんなになっちゃうわけ!?


てか、すげーよ!


このマジックアイテムさー!!


ウルフファングネックレスだっけ!?


狼に怒りを買いやすいとか書いてあったけれど、それ以上じゃあねえ!?


もうこれさ、怒りレベルじゃあねえよ!


もう、執念を通り越して怨念レベルじゃあねえ!?


普通じゃあねえよね!?


しかも、ほんのちょっと装備しただけだよ。


視力が良くなるって効果を試してみたくてさ、ほんの少し装備しただけだよ、マジで!


ほら、売る時に効果がどのくらいか説明しないといけないじゃんか!


確かに視力アップしていたさ!


これなら視力が悪い人に高値で売れるって思ったさ!


この異世界に来てからほとんど眼鏡を掛けている人を見ないから、きっと眼鏡は貴重品だと思ったからさ!


それに俺は視力が多分5.0のはずだから、絶対に要らないもん!


こんな怖いマジックアイテムは要らないもん!


だから売るつもりだもん!


スカル姉さんにさ!


なのにこの状況は何故だよ!


ウルフファングネックレスを外したけれど駄目でしたわ!


狼たちの追跡は終わるどころか数を増やしたしだいでさ!!


そんでもって逃走中なわけよ!!


これ、完全に呪いのアイテムだわ!!


でもでも、もう少しだ、もう少しだぞ!


もう少しでソドムタウンに逃げ込める。


ソドムタウンの様子も慌ただしくなってきているのが見えた。


非常事態を知らせる鐘をけたたましく鳴らしている。


そして、旅商人たちが慌ててゲート内に走り込み、代わりに盾と槍を構えた兵士たちが出てくる。


防壁の上からも弓を構えた数人の兵士が並んでいた。


俺の緊急状況を察してくれたらしい。


これなら助かるぞ!


だから俺は走る。


兎に角走った。


あと100メートルぐらいでゴールインだぞ!


そこで狼たちに異変が見られた。


俺との距離を詰めてくる。


もう、襲うつもりだ!


やばい!


やっぱりこいつら頭いいよ!


ゴールが近いことを感付いていやがるぞ!


もう、襲いかかる気だ!


俺は振り向かず後ろに魔法を放つ。


「ファイヤーシャード!」


振り返ることなく後方に放たれた炎の飛礫がウルフに当たったのかな、それとも突然の炎にビビッただけなのかな?


ウルフの一匹が「キャッン」と情けない声を上げた。


でも狼たちの追跡音は止まらない。


多数の走る足音が轟いていた。


もう、焼け石に水ですわ!


覚えたての新魔法だけど、ぜんぜん役に立たない。


一匹二匹のウルフを追い払ったとしても意味がないぞ!


もう、全力で走るしかない!


俺が助かるには全力で走りきるしかないわ!!


もうちょっとでゴールだ!!


でーもー……。


ゲートの前に横一列で並んだ兵士たちが、扉のようなサイズのラージシールドで隙間を塞ぐ。


そして、僅かな隙間から槍を突きだしていた。


ちょっと待ってよ!!


俺が逃げ込む隙間が無いじゃんか!!


そんな無慈悲なことありますか!!


俺を助けてくれる陣形じゃあないの!!


って思ってたら、防壁の上からアーチャーたちが矢を放ってきた。


複数の矢が雨のように飛んで来る。


狼の群を狙っているのだろうが、間違いなく俺にも当たるぞ。


弓矢の攻撃も俺の救出は考えられてないようだ。


いーやー!


うーたーなーいーでー!!


飛んで来た矢の一本が、俺の頭の直ぐ横を過ぎて行った。


マジで、あぶねーよ!


当たるところだったじゃんか!


でも、一斉に狼たちの悲鳴が聞こえた。


何匹かは退治できたのだろう。


だが、唸る狼の声と足音は止まらない。


もうちょっとで俺がゲートに到着する。


でも、盾の壁は開かない。


仕方ないので俺は盾の前で踵を返して戦斧を構えた。


その直後、津波のような狼たちが突っ込んで来た。


俺に体当たりしただけでなく、盾に激突したり槍に串刺さる。


そこからは乱闘だった。


人間チームvs狼の群。


激しい団体戦が繰り広げられたが、やがて勝者のフラッグは人間サイドに上がった。


半数近くの狼は逃げて行く。平原の向こうに帰っていった。


俺は生き残った兵士たちと明るくハイタッチで勝利を祝う。


笑顔で抱き合っている兵士たちも居た。


もう、ワンチームである。


そこには友情が芽生えていた。


それに戦っている最中にレベルアップもした。


レベル9に成ったのだ。


そして、俺は捕まった。


今、牢獄に入って居ます……。



【つづく】

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