俺はアースジャイアントに魔女の探知指輪を埋め込んだあとにクラーク爺さんのところで夜まで過ごした。
っと、言ってもほとんど寝ているだけである。
起きている間はクラーク爺さんと一緒にキノコを食べているだけだった。
クラーク爺さんにカマドウマの唐揚げなどをすすめられたが、流石にカマドウマは食べられなかった。
昆虫の揚げ物は聞いたことがあるが、流石にカマドウマは無いわ~。
そりゃあ無理ですわ~……。
そんなこんなで夜が来たので俺はクラーク爺さんの家を出た。
もう、この家には来ないだろうと思うと寂しかったが、まあ定めだと諦める。
せめてクラーク爺さんには幸あれと祈るのみだ。
そして俺はキノコの森をあとにした。
次に目指す町はランバラルルだ。
なんでも聞いた話しだと鉱山が盛んな町だとか。
金や銀が取れるのか、それとも石炭が取れるのかは分からないけれど、盛んな産業があるのはいいことだ。
俺も旧魔王城を占拠したら、そう言うことを考えないとならないのだろうか?
まあ、それはあとの話だ。
まずは旧魔王城まで旅をしないとな。
何よりもまずはランバラルルに到着が先かな。
さあアキレスよ、いざランバラルルにGOだべさ!!
さて、それはさて置いてだ。
ミッションクリアで何故かレベルアップしたので新スキルの確認をしたいと思うのだが……。
に、してもだ。
今までミッションクリアで経験値なんて入ってたのか!?
俺が気付いてなかっただけで、入っていたのかな!?
あんまりにも俺のレベルアップが遅いから救済策なのかな!?
その可能性が高くね!!
てか、ハクスラなんだからガンガンとレベルアップしろってことだよね!!
神様が痺れを切らしたかな!?
まあ、いいや~。
兎に角レベルアップすることはいいことだ!!
さてさて、新スキルは何かなっと?
【落下ダメージ軽減スキル。落下から来る肉体的ダメージを軽減する】
あー、これは心当たり有りすぎだわ~。
今回のアースジャイアントの際も、完熟フレッシュ亭での二階からの落下事件などと、いろいろ有ったもんな~。
これは今後を考えると有ったほうがいいよね。
さて、次はっと──。
【クライムウォークマスタリー。岩場や壁などをよじ登る技術が更に向上する】
うむうむ、やっぱり来ましたね。
これは今回来るだろうと思うマスタリーだよね。
これが今回来なければ嘘だろって感じだわ。
おおっ、もう一つ新スキルが有るぞ?
何かな~。
【キノコ鑑定スキル。食用キノコか毒キノコかの判定が可能になる】
あー、知識系ね……。
ありがとうクラーク爺さん……。
このスキルが役立つたびに、クラーク爺さんのことを思い出すよ……。
さて、新スキルの確認も終わりだぜ。
でーもーさー……。
そろそろマジックアイテムの鑑定もしたいよな~。
何せ、そろそろ禁断症状が出そうだよ。
次はダンジョンとかを漁りたいもんだわ~……。
まあ、しゃあないか~。
よーし、兎に角ランバラルルを目指すぞ。
はいやー、アキレス!!
俺はアキレスの腹を蹴って走る速度を速めた。
夜までに、ランバラルルの町に到着したいな。
今晩はちゃんとしたベッドで寝たいぞ。
転送絨毯でソドムタウンに帰ってもテントで寝袋だもんな~。
やっぱり寝るならベッドだよね~。
おっ、見えてきたぞ!
あれがランバラルルの町だな。
なんか公害汚染で夕日が雲ってませんか……?
すげー、空気の悪い町っぽいな~……。
俺は町の手前でアキレスから下りると異次元宝物庫に仕舞う。
ランバラルルの町には壁もゲートも無い。
町の中に入るのはフリーパスのようだな。
だとすると、産業は発達しているが、貿易はさほどでも無いってことかな。
町中も露店は少ない。
町の中を行き交う人々は筋肉質で大柄の男が多い。
ほとんどが薄汚れた繋ぎを着ているマッチョマンが多かった。
黒い煤に汚れているから石炭が取れるのかな?
おっ、酒場だ。
今回は探さずに見付けられたぞ。
さて、もうそろそろ夜が来るから、今日はここに宿を取るかな。
酒場の名前は『ドリフターズ亭』だって?
漂流者たちってことか?
それとも……。
まあ、あんまり深い意味は無いのかな?
とりあえず店に入ろうか。
うわ、五月蝿い店だな!!
もう酔っぱらいたちが酒盛りしながら暴れているよ……。
流石は鉱山の町なんだな~。
兎に角にぎやかだわ……。
俺は暴れまわる酔っぱらいの間を縫ってカウンターに向かった。
俺はカウンター席に座るとマスターに食事と水を頼んだ。
すると、店のマスターが頑固そうな表情で言う。
「水だって?」
「ああ、水だよ。それと食事を頼むよ」
「食事は出せるが水はねーよ。酒をたのみやがれ。ここは鉱山の町だからな」
あー、面倒臭いパターンだわ……。
「済まないが、俺はゲコだ。だから水を頼む」
するとマスターがグラスを叩き付けるように俺の前に置くと、ウイスキーを乱暴にドボドボと注いだ。
「飲めなきゃあ、飲めばいいんだよ!」
「だから飲めないって言ってるだろ!!」
「いいから飲めよ!!」
俺とマスターが揉めていると、背後からマッチョなオヤジが話し掛けて来る。
「どうしたんだい?」
粋な口調だった。
そして冷静な口調でもあった。
マッチョオヤジはカウンターの中に入って行く。
そしてマッチョオヤジが店のマスターに話し掛けた。
「悪かったなお客さん。カウンターを任せてよ。一杯おごるから、楽しく飲んでいってくれ」
「ああ、サンキュー」
マスターだと思われた男はグラスを片手にカウンターから出て行った。
最後まで俺を睨んでいやがる。
「今の人は、店員じゃあなかったのかよ……」
「ああ、すまんすまん。ただの客だ。はっはっはっ」
笑い事じゃあねえよ!
なんだ、この店は!!
そして本物のマスターが俺に訊く。
「でぇ、兄さん。注文は、なんにする?」
「食事と水をくれ」
「水なんかねーよ。酒を頼みな!」
「お前もかい!!」
【つづく】
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