元冒険者と元魔王様が営む三ツ星☆☆☆(トリプルスター)SSSランクのお店『悪魔deレストラン』

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第44話 小さな歪(ひず)みと、流れるもきゅ子の涙の理由

公開日時: 2020年11月16日(月) 06:05
文字数:2,141

「シズネさん、一体どうするんだよ? このままじゃこの店はやっていけなくなっちまうよ!」

「……それを今からみんなで考えましょう」

「きゅー」

「むむむっ」


あれから数日、俺達は相も変わらずにレストランの営業を続けていた。だが日増しに少しずつ小さな問題が現れるようになっていた。


それも始めのうちは、ほんの小さな問題で誰も気には留めていなかった。けれども徐々にその問題が大きくなると次第に無視できなくなり、ついに今日の営業を終え食事をしながら今こうして話し合いをしている。


「まずはそうですね……。問題点をいくつか挙げ、それから解決の方策を見つけるとしましょうか。今早急に解決すべき問題は『食材の仕入れの安定的な取引先』と『目に見えて減り続けているお客さんについて』ですかね……」


普段の余裕のある顔ではなく、シズネさんも真剣な面持ちである。それだけ頭を悩ませていたのだ。


食材の仕入れルートについて……まぁもはや説明することでもないのだが、文字数稼ぎに貢献するためまたもや改めて説明したいと思う。



俺達の店の食材は、向かいにあるギルド直営店のレストラン倉庫から強奪したモノですべてを賄い成り立っていた。だが文字通り今なおジズさんが崩落した店の上に巣を作り、寝床としているためギルド側も新たな建物を作るわけにいかず、手付かずのままになっている。だから当然仕入れなどをするわけもなく、既に店にある在庫は数日分あるかどうかになっている。


もちろん俺達も新しい取引先を模索したのだが、それも大元はギルドのため売ってもらえないか、法外な価格請求されてしまい取引するのには絶望的な状況だ。


通常このような状況で国が正常に機能しているならば、市場原理の抑制つまり値段の吊り上げと独占的違法な商取引などを摘発するのだろうが、国もギルド側に首根っこである国全体の『税金納付による貢献』と『安定的で大量の人員雇用』を押さえられているため、口を出すことすら無理である。



「ま、我々が置かれているのはこのような状況になりますね。早くどうにかしませんと、売るものが無ければどんな商売でも成り立ちません。それに資金的にもウチではあまり余裕があるわけではありませんしね」

「それとウチのレストランを訪れてくれるお客さん自体が減ってるのも、それと同じくらい重要な問題なんだよね……」


俺とシズネさんは互いに顔を見合わせては、困った顔をすることしかできなかった。


そうこの数日、ウチに来店するお客の数が目に見えて目減りするようになっていたのだ。始めこそ『ナポリタン一品だけの物珍しさ』や『水の無料提供』そして『ここしかレストランが開いていない』などの理由で来てくれる人がいたのだが、やはりナポリタンだけのメニューではすぐに飽きられ次第に減っていった。


「きゅーきゅー」

「うん? ああ、お前のせいじゃねぇよもきゅ子……」


もきゅ子は自分せいでお客が減ってしまったと思っているのか、「役に立てなくてごめんね……」っと悲しそうな声で鳴き、目にいっぱい涙を溜めて俺の服を引っ張っていた。逆にそんな今にも泣き出しそうな顔と声をされてしまっては、こちらの方が申し訳ないと感じてしまう。


 開店当初から数日間は、もきゅ子の可愛さに惹かれ例のお姉さんや子供達などが何度も来店してくれる常連になってくれていた。だが、今は通りすがりに樽の上で宣伝しているもきゅ子の頭を撫でて、声をかけてくれるくらいなものになっていた。


もちろんそれはもきゅ子の営業が悪いわけでも、お姉さんや子供達が悪いわけではない。人は次第に見慣れたり食べ慣れたりすると「ここを通ればいつでも会えるから……」「この店のナポリタンはいつでも食べれるから、今日は別の所に行こうか……」などと別にある新たな刺激物に飛びつき、次第に来店する数を減らしていくものである。


「きゅ、きゅーっ……」

「あ~もう~、違うってもきゅ子! ほらっ」


もきゅ子は俺が読者への本文補足説明を説明しているのを聞いていたのか「ほ、ほらやっぱりそうなんだ……」っと落ち込み、その大きな瞳から涙を流すもきゅ子を抱き締めてやり、優しく頭を撫で慰める。


「それに俺だけじゃなく、あのシズネさんや勇者のアマネだってここにいるんだぞ。だからお客だってすぐに戻ってくるってば。だから安心しろって、な?」

「き、きゅ? きゅきゅ?」


俺にはもきゅ子の言葉は理解できないが、「ほ、ほんと? お客さん戻ってくるの?」っと言っている気がした。


「うん。だからさ、俺達に任せとけって!」

「も、もきゅぅ……もきゅもきゅっ♪」


俺が胸を張り自信満々にそう言いながら、もきゅ子の頭を優しく撫でてやる。それがちょっとだけくすぐったいのか、俺の胸元へと顔を擦りつけると今度は見上げるように顔を上げながら、いつものように元気で可愛く鳴いてくれた。


既にその大きな瞳には涙は無かったが目が少し赤くなっており、その流れた涙によって胸元の服が濡れたしまったことは絶対に忘れられないかもしれない。


もきゅ子のためにも絶対にお客さんを取り戻さねばならない。俺はそう心に誓うのだった……。



次話までにその問題解決方法を思いつかねばならないのかなぁ~、などと他人事のように感じつつも執筆しながら、お話は第45話へつづく

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