「ふぅーっ。やはり今回も結局はダメになりましたか。やれやれ何度同じ世界を繰り返せばよいのでしょうかねぇ~」
少女は溜め息をつきながら、今閉じられたばかりの世界にウンザリするような苦言を漏らしていた。そして目の前には様々な数字が次々と現れ、時間が巻き戻るような感覚に見舞われてしまう。
「これでよしっと。ほんと毎度毎度、良いところで邪魔が入ってしまいますね。これではいつ物語の終焉を迎えられるのか、気が遠くなってしまいますよ。……んっ? 待てよ……」
少女はまるで独り言を誰かに聞かせるようにポツリポツリっと語りだしていく。だがそこである事に気付いたのだ。
「今までワタシは人間達を上から武力によって押さえつけ、彼等を統治しようと考え実行してきたから最後には反発されてしまったのでしょうか? やはり表向きとはいえ、ネームバリューがありまくる『魔王』というのは忌み嫌われる存在なのでしょうね。名を知られるのはちょっと嬉しいのですが、あまり有名すぎるのもこれは考え物ですね」
何かを考えるように顎に手を当てながら、わざと口に出すことで考えをまとめていく。
「いつも勇者だなんだと、生意気な連中が魔王であるこのワタシを倒そうと躍起になりながら倒されても倒されても、何度も復活して舞い戻ってきますね。あれこそ、巷で噂のチート能力と言うモノじゃないんですかね? ちょっと卑怯すぎますよ。ま、その分女神様だかに復活の対価として所持金の半分を許可なく強奪されてしまい、その分配利益としてワタシの懐も潤うのですから笑いが止まりませんがね。くくくっ」
少女は不気味に笑みを浮かべると、中身の存在を確認するように左手に持っていた麻袋をジャラリの鳴らした。中には大量の金貨が入っていた。
「ふふふっ。ですが、こうしてある程度の資金を得ることができたのですから、そうそう文句も言えませんよね。さてっと、これから一体どうすれば良いのでしょうかね? 武力では反発されてしまうので、別の何かで支配することを考えねばなりませんね。ま、ワタシには時間だけはありますからね。気長に考えるとしますか」
少女は暗闇が支配する空間で目を瞑ると、そのまま眠りつこうとした。そうつこうとした、なのだ。だから寝ちゃいない。何故なら……
ぐーっ。
「おや。これはこれは……」
もうセリフで描写表現するのがめんどくさいのか、適当に……を用いることで説明を省こうとする少女。
ぐーっぐーっ。だがしかし、まるでそれに「手抜きしてねぇで、描写しやがれよな!」っと反発するようにお腹の音は次第に強く鳴り響いてしまう。
「むむっ。やりますね。ですが、これは寝言に応用できるのではないでしょうかね? ぐーぐー」
何に対抗心を燃やしているのか、少女はお腹が奏でる音を寝言だと言い張ろうとしている。……いや、それ無理だから。
「んんっ!? そうです……これですよ! 人も悪魔もモンスターも、お腹が空きます。ならば、この生理現象を利用して彼等を胃袋から統治する。そうすれば今までのような反発は起きないのではないでしょうかね? ふふっ。我ながらピンチをチャンスに変えるのが得意ですよね♪ ……ま、自分でもちょっと何言ってるか分かんねーですがね」
そこで意味不明な言葉を口走りながら、少女は何かを思い立ったように右手に持っていた魔法の杖らしきものをグルグルっと回し始めた。するとその途端、暗闇の空間から綺麗な星くず達がキラキラと眩いばかりの光を放ちながら、新たな世界を再構築していった。
「ふふっ。今度の世界では上手くいくと良いのですが……ま、それも運次第でしょうね。ですが、奇跡が起こるとするならば……それは今までになかった何か別の重要な因子が現れることを願うばかりですね。さて、あまり独りでお話ばかりしていると変人と思われてしまいますので、そろそろ新たな物語を始めるといたしますか。んっ……」
少女は誰に聞かせることもなく、そう呟くとその光の中へと身を投じてしまうのだった……。
第1話へつづく
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