あれからベイブ……戦独楽で遊んでいるうちに、随分推しとも仲良くなったわ☆
バレットちゃんは素敵な物だとか、面白い物だとか、楽しい物だとかを見つけるのがすっごく上手で、それを『キラキラしてる』と表現するのもとっても素敵☆
市場の面白いおもちゃ、軒下に隠れた小鳥の巣、山から見た街の景色、素敵な物語の綴られた本……それらが全部彼女にとってのキラキラ。
観察力も表現力も素晴らしくて、彼女と一緒にキラキラを探したくなる。
良い子で、ちょっとイタズラなところもあって……ひいき目が無くても、乙女ゲームの主人公として人に好かれるのも納得の素敵な子だ。
その割に、友達がいないって話していたのは不思議だけど……
「それでね、ローズったら夢中になって遊んでたせいで仕事を忘れてグローリーさんに怒られちゃったのよ☆」
今日は雲一つ無く絶好のお散歩日和☆ローズは、残念ながらやり残した仕事の処理に追われてて今日一日は屋敷から出られないので、バレットちゃんと二人でお散歩だ。
「全く、最初はあれだけ文句言ってたくせに素直じゃないわ☆変なプライド張っちゃって☆そこもイジりがいがあるんだけど☆」
私達は子供なんだからもっと素直に遊んでいいのに☆
「そうだ!気付いたんですけど!」
「な〜に☆」
「パンジーさん、ローズさんがいない時はローズさんの話ばかりしますね!」
ぎく。
見るとバレットちゃんはキラキラを見つけた時と同じ目で私を見ている。漫画なら十字光の入ったしいたけみたいな目で表現される感じの目付き。か……限り無くめんどくさい予感がする!
「ローズさんの後ろ姿をじーっと見てる時もよくあります!」
ぎくぎくぎくぎく!
「好きなんですね、ローズさんの事?」
ギャース!!!!!!!!!!!!!!!!
はっきり言わないでよ!!!
この中世の主流な考え方に惑わされずリベラルな考え方を持てていて大変よろしいと思いますよ畜生!
目を逸らした私を見てバレットちゃんは食い付いてくる。
ヤバい、メインヒロイン自慢の観察力が私に向けられている!
「もっとお話聞かせて下さい!誰かの恋は一番のキラキラなんです!」
興奮してバレットちゃんが顔面を寄せてくる。グオオ推しの顔が近い!
「流れるように名台詞を言わないで!あとその無遠慮に突撃していく性格いつか絶対やらかすわよ!?」
実際に他人の惚気に突撃していってBADENDになるルートもあるんだから反省してほしい。ギャグエンドだけど!
原作の名台詞『誰かの恋は一番のキラキラ』を言われてドキッとしちゃったし色恋沙汰をつっつかれてるしで心拍数がヤバい。
キャラ側から見た主人公……厄介だ!
「だって……あんな思わせぶりな事言われたら仕方ないじゃない!」
「余裕の無いパンジーさん語尾が変わって面白いです!」
「混ぜっ返さないで!」
語尾の星が消えた事にまでツッコマないで!
推しちゃんはニタニタ笑っていてもう完全に私をイジって遊び倒すぜモードだ。
もう完璧におもしれー女扱いされている、おもしれー女って言われる側のメインヒロインに……
顔が良いしニタニタ笑ってるのもかわいいし内容は(私的には非常事態だが)素敵なコイバナだしで今すぐ誤魔化したいのに原作ゲームのワンシーンみたいでドキドキしちゃって、ああもう!困る!
「それなのにローズはアピールしても気付いてくれないし……あの馬鹿!」
「恥ずかしがってー、奥手だからじゃないですかぁ?」
んな事分かっとるがな畜生!さっきから的確に刺してきやがって!じゃないですかぁ?(笑)じゃないわよ!
「なんだか物語に出てくる素直になれなくてツンケンしちゃう女の子みたいですよー?」
ツンデレという単語が無い時代にツンデレという概念を的確に表してくるんじゃない!主人公の嗅覚が怖い!
「素直じゃないですね☆変なプライド張っちゃって☆そこもイジりがいがあるんですけど☆」
「口調と台詞を真似しないで!いくら私の投げたブーメランだからって全力で投げ返してこないでよ!」
ブーメランを白刃取りしてオマケ付きで投げ返してくる悪魔の所業に私のメンタルはもうボロボロだ。
ううっ……もう諦めて推しの幼少期スチルを見る事にだけ専念しようかな……
「応援してますよ!私にはそういう機会、無いでしょうし」
「え?」
何それ……どういうこと?
むしろ、まだどうなるか分からないとはいえ9年後これから私から色んなものを奪っていく立場じゃないの?
……とは、本人に聞く事も出来ず。
「どういう事?」
「……なんでもないです。聞かなかった事にしてください」
……距離を置かれたのは分かった。
「それで話の続きなんですけど!」
「今の流れで続けるの!?」
最終的には、コイバナを洗いざらい吐かされた。ううっ、耐拷問訓練より辛いかもしれない……
★★★★★★★★★★★
パンジーさんへの問い詰め……もといコイバナが盛り上がり過ぎていつの間にか夕方になってしまった。
話を切り上げて急いで抜けてきた。危ない危ない。
みんなが夜になる前に帰るのは夜の街が危ないからだけど、私が帰るのは別の理由だ。
早いうちに人気の無いところに向かわなきゃいけない。急がなきゃ。
太陽の下じゃ分からない、不気味な体。
炎の魔力で常に薄く光り、青と赤の血管が透けて見える、不気味な体。
誰かに見られる前に、早く隠れないと。
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