悪役侍女と殺人令嬢の天下平定 幼女になった転生モブ侍女↓廿.廿↓は前世で殺した転生女殺人鬼(現:幼女)に溺愛される!?

〜前世では殺し合ったけど未来が戦争確定なので協力して知識チートで戦争を阻止します〜
此岸さくら
此岸さくら

10 キラキラしてるを見つけたら

公開日時: 2020年9月16日(水) 23:04
文字数:2,103

 私、バレット・サンフラワーは今日も今日とて街を練り歩いていた。


 とある事情で小さな身体に不釣り合いな大きめの金属鎧を着込んでいる私は、歩くと音が目立つのかよく話しかけられる。

 身寄りのない私は田舎ゆえ荒事が多くないこの国を転々としていたのだが、その話しかけられてからの世間話で何やら伯爵令嬢様が面白い事をしているらしいという噂を聞いたので、興味本位で辺境のここまで歩いてきたというわけだ。


 旅路の途中で情報収集しているうちに、御令嬢が私と同じ9歳である、その方は下町にも頻繁に遊びに来るかなりのお転婆である、お屋敷が侵入者に襲われた時に完璧な対応をして評判になったといったいくつかの噂を知った。

 これは……の予感がする!


 伯爵令嬢パンジー・エルムント様はすぐに見つかった。

 何やら人だかりが出来ていて、その中心で何やら謎のものを売り捌いていた。


「よってらっしゃい見てらっしゃい☆世にも珍しい戦う独楽だよ☆」

「何ですかその口調は。どっから持ってきたんですかそのハリセン」


 令嬢なのに軍服を着て妙にこなれた客引きをするパンジー様や、口調以外の全てが失礼な態度でツッコミを入れている従者らしき子もとっても面白そうだったけど、それよりも……

 私の目は二人が売っていた金属製の独楽に惹かれた。


「じーーっ……」

「あら、あなた興味あるの?コレはね……こうやって遊ぶのよ!ローズ相手して☆」


 命令されて渋々従者の子が競技台らしきものを引っ張ってくる。だいぶ反抗的みたいだ。

 何やら専用の器具に独楽が嵌め込まれる。キラキラの予感に目が輝く。

 そこからの展開は……見た事が無いもので興奮しっぱなしだった。

 荒々しくぶつかり合う金属の独楽……地を駆け相手を吹き飛ばす金属の独楽!

 興味津々の私に気をよくしてくれたのか、その独楽の構造や色んな部品があって組み替えられる事とかも教えてくれた。


 面白そう!今までにないキラキラの予感に、私の心は躍った。


「あの、これ……」

「あら、買うのかしら?」

「買いたいんですけど……遊ぶ相手がいません」


 渡り歩く生活をしている私には知り合いらしき知り合いがいない。それを孤独に感じた事は無かったが、遊び相手がいないのだけは残念だった。


「あら、じゃあいつでも遊びに来ていいわよ☆これ売り出したの遊びたいからだし☆」

「聞き捨てならない事が聞こえたんですけど!?」


 従者の子がツッコミを入れているがスルーする。


「いいんですか!?」

「もちろん☆」


 やっぱりこの人達もキラキラしてる人達だった!思わぬ遊び相手も得られて私は大満足だった。



 ★★★★★★★★★★★



「鎧を着て変わった子でしたね。良い子そうでしたけど」

「……あなた最初に会った時もそうだったけど実は相当抜けてるわね?☆」


 むっ。心外だ。


「どういう事ですか?」

「……鎧を纏った、私と同い年くらいの金髪癖っ毛トルネードツインテ美少女。どう考えても『灼熱のリザレクション』の主人公、バレット・サンフラワーの幼少期でしょうが!」

「……確かに!」

「はあ……先が思いやられるわ……」


 ちょっと服装や髪型を変えられると気付かないくらいには人の顔や特徴をマジで覚えられないので、多分これから先も重要人物に気付かないかもしれない。ヤバい。

 主人公バレット・サンフラワーは原作ではその時点のパンジー様と同じ18歳。つまりパンジー様が9歳の今は9歳前後とみていいだろう。

 (本人の主観で)キラキラしてる、つまりは面白いものや楽しいもの、素敵なものを探して回っている少女だ。

 強い炎の魔力を持っていて服がふとした時に燃えてしまうため金属の鎧を着ており、身寄りがなく各地を転々としている設定だ。


「魔力は感じませんでしたけど……」

「あなたね、顔面半分火傷跡の人の前で炎の魔力を丸出しに出来る?抑えてたのよ。完璧に隠してたあたりかなりの手練れよ」


 確かに設定上かなりの強キャラだったがそこまでとは。

 まだ彼女がどう動くかわからないが、敵に回ってしまったらかなり厄介なのは間違いない。メインヒロインである以上いずれ人脈もついてくるだろう。


「だからこちら側に引き込もうと約束を取り付けたんですね」

「え?」

「え?」

「……その手があったか☆かしこい☆」

「……まさかただ遊びたくて誘ったんですか!?」

「YES☆推しと遊びたい☆」

「本当にテキトーに生きてますね……先が思いやられますよ……」


 先程言われてムッとした言葉をここぞとばかりに投げ返す。


「あら、遊びたいのに理由がいるのかしら?☆」

「?」


「何故なら私達は……まだ2桁もない女児だもの☆」

「……!」


 そうだった。

 前世を思い出して、やる事がいっぱいあって、危ない事も何度かあって忘れていた。

 未来を知っている以前に、戦いを知っている以前に、私達は遊びたい盛りで仕方がないただの子供だった。前世の記憶があろうがなかろうが、子供は子供だった。


「ハァ……仕方ないですね。店じまいしたら遊びましょうか。次はバレットさんも誘いましょう」

「ぃやった〜〜〜〜っ☆☆」


 ちょっとワクワクする自分に気付いて、でもそれは嫌じゃなかった。

 キラキラってこういうものの事を言うのかなと、ちょっと分かった気がした。

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