俺たちは宿屋に戻ると、さっそく宿屋の女将に案内されて食堂に向かう。
どうやら他のメンバーは既に食堂にいるようだ。
「お、みんな食べて……ないな。待っててくれたのか?いいのに。」
イーゼとシロマはまだ食べてなかった。
ゲロゲロすら、待ての状態で座っている。
別に気にしないんだけどなぁ。
「あ、おかえりなさい。どうでした?あ、その前に揃ったので先に食事にしましょう。」
食事の前に色々聞くのは野暮だと思ったのか、シロマは先に食事を勧める……のだが……。
「あ!リーチュン!それどうしたの!?」
突然シロマは声を上げた。
そう、リーチュンの髪留めに気付いたのだ。
「えっへへ~いいでしょ!サクセスに買ってもらったんだ!どう?似合う?ねぇ似合ってる?」
リーチュンはテンション高めにシロマに言う。
「そうですね、はい、とても似合ってますよ。」
う……。
シロマの声が低い……。
なんか怖いな……。
「み、みんなも食事が終わったら買い物行こう!な?な?」
何故か俺は浮気亭主が取り繕うようなセリフを言っている。
「リーチュンだけずるいです……。」
小さく言ったつもりかもしれないが、聞こえてますよシロマさん。
今度、シロマにも何かプレゼントしないとな。
「とりあえず、さぁ飯食おうぜ!」
あれ? しかしおかしいぞ?
イーゼが静かだ。
むしろなんだろ、余裕の笑みを浮かべてやがる……。
逆に怖いわ。
「イーゼ!見て見て!可愛いでしょ!」
せっかく食事で誤魔化そうとしているのに、リーチュンがまた余計な事を言う。
「そうですわね。とても似合ってらっしゃいますよ、うふふ。」
「なによぉ、なんでそんな余裕そうなのよ!なんか嫌な感じ!」
「ふふふ、私は今夜そんな物よりもとっても素敵な物をサクセス様に頂きますから。お子様はそれで喜んでおけばいいのですわ。ね、サ・ク・セ・スさまぁ。」
「え?俺聞いてないんだけど……。なんか怖いな。」
「いいのですよ、サクセス様は何もしなくて。私がもらうだけですから、うふふふふ。」
こえええええ、でもなんかちょっぴり期待しちゃう。
まぁそれでも今日の俺は予定があるから、無理なんだけどねぇ。
俺達は食事を始めると、ギルドで確認した緊急クエストについて話した。
「それは非常に良さそうなクエストですね。見つけたら一攫千金ですね。」
やっぱりシロマもやる気みたいだ。
なんか目がキラキラしてる。
やっぱ金か……。
うん、金だな……。
「それでは午後は買い物ついでに情報収集するといいかもしれませんね。」
イーゼもやる気みたいだけど、他の二人よりはあまり興味なさそうだ。
なんか他の事に気がいってる感じがする。
「あ、買い物なんだけどさ。悪いんだけど金渡すから三人で行ってもらってもいいかな?」
「どうしてですか?サクセスさん。」
「いやさ、午前中リーチュンと二人で買い物したら散々な目にあったんだよ。どうにも綺麗な子と俺がいるといい物見せてもらえないみたいだからさ。」
「そうそう!ほんとむかつくよねぇ!って今アタイの事綺麗っていった?ねぇ言った?もう一回言って!」
二度は言わぬぞ、他の面々が怖いからな!!
「じゃあ私と二人なら平気ですかね?私はリーチュンやイーゼさんみたいにスタイルもよくないし、綺麗ではありませんから。」
おっとぉ! ここでシロマの自虐ネタか?
「いやいや、普通にシロマ可愛いから、無理。」
「え?」
「あ、いやなんでもない。とにかく俺は午後は別行動にさせてもらう。とりあえずリーチュンのお蔭で大分金が余ったからな。3000ゴールド渡しておく、二人は1500ゴールド以内で好きな物を買ってくれ。」
俺はそういってシロマに金の入った袋を渡した。
午前中に550ゴールド使ったので所持金は4650ゴールド。
3000ゴールド渡しても1650ゴールドは余る計算だ。
この後、道具やら飯やら宿屋代やらで減ると思うので最低限は残しておきたい。
それに、ぱふぱふ代金分もな……。ぐへへへ。
ふふ、これで俺は自由に目的の場所を探せるぞ!!
「それではサクセス様。一応先に伝えておきます。私は以前言ったように服の防具を購入します。それが終わり次第サクセス様と合流してもよろしいですか?買い物じゃなければ問題ないのですよね?」
「うーん、そうだな。まぁいいだろう。でもこの広い町で俺を見つけるのは難しいんじゃないか?」
「大丈夫です!愛がありますから!!」
「うんわかった、もうそれ以上はいい。じゃあ見つけられたらそうしよう。」
「はいはーい!じゃあさ、アタイは必要な物ないし最初からサクセスと一緒でもいい?」
そう来たか!!
ダメだ!
リーチュンがいたら、ミッションインポッシブルになってしまう!
ここは何か良い言い訳を……。
ピキーーーン!!閃いたぞ!これだ!
「すまないリーチュン、シロマとイーゼは僧侶と魔法使いだ。この町はさっきの話もあったが、どこに盗賊が隠れているかわからない。だから何かあった時にリーチュンの腕っぷしが絶対必要になると思う。頼りにしてるぞ!」
「それなら任せておいて!変な奴がきたらアタイがボコボコにしてやるよ!」
リーチュンは力こぶ等ないのに、力こぶポーズをとる。
ちょろいぜリーチュン!
はっはっは、作戦勝ちーーー!
「ではサクセス様、一応念のためゲロゲロを連れて行ってもいいですか?二人に別れた時に護衛として役に立つと思いますので。」
お?珍しいな。イーゼはゲロゲロを所望か。
断る理由はない!!
「いいぞ、じゃあみんなを頼んだぞ!ゲロゲロ!!」
ゲロオオオ(任せとけ!)
ゲロゲロは気合を入れて鳴いた。
「それでは午後は別行動ですね。私達もガンダッタについて何か情報がないか探してみます。」
「おう、頼んだ!俺もそれがメインだからな。みんなあまり無理はするなよ!!」
こうしてなんとか俺は午後からの単独行動が許された。
目指せ歓楽街!
まだ見ぬ秘境の地「ぱふぱふ」を目指して!!
俺はみんなと分かれると、意気揚々として町を散策する。
「ぱっふぱふ~ぱっふぱふ~♪」
俺は鼻歌交じりに町を練り歩く。
周囲の俺への奇異な目線も気にならない!
なぜなら、今日、俺は男になるからだ!!
ちいせぇことなんざ、気にしねぇよ?
すると路地裏から現れたなんともチャラそうな男に声をかけられた。
「よ!にいちゃん!なんか随分機嫌がよさそうじゃねぇか?なんかいい事でもあったか?」
「ふふふ、良い事があるように探してんだよ?言わせんなよ!」
俺は上機嫌である。
「ははぁ~ん、さては、ぱふぱふ目当てだな。このスケベめ!」
その男は俺の肩に手を回しながら言った。
馴れ馴れしいなこいつ。
「だったらなんだよ?」
ちょっと俺は機嫌が悪くなる。
こいつバカにしてんのか?
「いやさ、兄ちゃんこの町初めてだろ?最初に言っておくがこの町にぱふぱふ屋はないぜ。」
「え?なんですと?」
俺はそいつの口から出た衝撃の事実に地獄に落とされた。
うそだろ……。
嘘だと言ってよ!バー〇ィ!!
「まぁいきなり言われても信じられねぇか。俺はこの町の情報屋だ。嘘は言わねぇ。ここは王様の方針でそういう店は全て摘発されてんだ。残念だったな。」
俺は言葉を失った……。
いや、生きる気力さえも……。
息子はたった今死んだ……。
その役目を全うすることなく……。
「だが安心しろ!お前は運がいい。実は夜にだけあるところで、隠れてぱふってる店があるんだよ。」
「本当ですか?師匠!!」
いつの間にか、俺はそいつを師匠と呼んでしまう。
「師匠はやめろよ。俺はワイフマンってもんだ。だけどな、最初に言ったが俺は情報屋だ。情報を売りもんにしてんだ。わかるだろ?な?」
「はい、金ですね!師匠!おいくらですか!?」
「ちょ!声がでけぇ!!落ち着け!そんな血走った目をするんじゃねぇ!こええだろ!ったくこれだから童貞は……。」
俺はそいつの肩を掴んで揺さぶる!
「早く!早く教えてください!お願いします!俺、男になりたいんです!お願いします!!」
「わかった!わかったから!ちょっとこっちこい。ここじゃ目立つ!衛兵に見つかったらどうすんだ!」
「わかりました。」
俺はやっと少し冷静になってきた。
なんにせよ、本当に運がいい。
さっきまでの夢と希望に溢れていた俺がいきなり地獄に落とされたんだ。
そりゃ焦るさ!
童貞なめんなよ!!
俺はワイフマンの後ろを付いていくと、とある古びた建物の前で止まった。
「ここだ。ここがそうだ。あせんな、まだやってねぇ。みんなが寝静まる頃に営業するんだ。深夜にここにまたこい。とりあえず情報料は50ゴールドにまけてやる。ちなみに本番は中で200ゴールドだ。だけど……もっと持ってきた方がいいぞ。裏オプションは別料金だからな。すっげぇぞ!裏オプはよぉ!昇天しまくり間違いなしだぜ。」
「なんですか!その裏オプって耳心地の良い響きは!今からワクワクとドキドキがとまりません!!」
俺の興奮はマックスだ!
「店に入ったら、とりあえずごつい男がいるから、そいつに注文しな。若くてかわいい子ってな。まぁ俺的にはベテランのテクニシャンがお勧めだが、素人にはまだはええ。」
「本当になにから何まで感謝っす!あんた神っす!」
「いいってことよ兄弟!まぁそうだな、でも一言だけ言わせてくれ……グッドラック!」
そいつは爽やかな笑みでサムズアップした。
「ししょーーーーーー!!」
俺は感動のあまりワイフマンをハグして感謝する。
「あ!そうだ。重要な事を言うのを忘れたぜ。こういう店だから警戒心が強くてな。武器や防具は絶対装備してくんなよ。門前払いされっからな!」
「はい!ぬののふくだけ着てきます!!」
「よぉし、いい子だ。ちゃんと可愛い子来てもらえるように俺からもいっといてやんぜ。」
「ありがとうございます!!」
俺はワイフマンの優しさに涙が溢れた。
こうして俺は無事念願のぱふぱふ屋を見つけることができたのだった。
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