夕飯を食べた後、今日はそれぞれが自由に休む事に決めた。
宿屋の風呂は男湯と女湯が時間で分かれているらしい。
一応VIP専用の家族風呂もあるみたいだが、流石にそんな贅沢はできない。
それと他の宿屋では、混浴というところもあるらしい。
そういうところは肌着を着て入るようだ。
スケスケの肌着なら、むしろエロさアップなので次からは自分で宿屋を探そうと思う。
刻一刻と時間が過ぎていく。
俺はソワソワして、居ても立っても居られずに、とりあえず腹筋や腕立て等の筋トレをして時間を潰す。
何かしてないと頭がおかしくなりそうだった。
俺のマグナムは期待し過ぎてもはや暴発寸前だ。
待ってろ、息子よ、
今楽にしてやるからな!
俺は優しく息子を撫でた。
しまった!
ダメだ!
まだだめだ!
我慢しなさい!
危うく俺は、引き金を引きそうになった。
もちろんポンプ式のショットガンのだ。
コンコン
するとドアをノックする音が聞こえる。
「はい、誰ですか?」
「夜分にすいません。男性のお風呂の準備ができましたのでお呼びに参りました。」
どうやらノックしたのは宿屋の女将であったらしい。
「はぁい、今行きます。」
俺は風呂の準備をするとドアを開けて、女将に案内されて風呂に向かった。
「こちらです。今夜はこの時間は誰もきませんのでごゆっくりお楽しみください。鍵は内側からかけられますのでお忘れのないように。うふふ。」
お楽しみください?
なんか言い方がおかしいな。
まぁいい、気にしても仕方ないだろう。
ガチャ
俺は扉を開けると中から鍵をかけた。
脱衣所には当然誰もいない。
ガラガラ
浴場の引き戸を開けると、人が二人くらいしか入れない浴槽があった。
「思ったより小さいな……。まぁ足は伸ばせそうだし、悪くはないな。」
実はサクセスが入っている風呂はVIP専用の家族風呂であった。
当然、サクセスに知りようはない。
俺は掛け湯をした後、足からゆっくりと湯船に浸かる。
「ふぅ~、あったまるなぁ!疲れが取れるぜ!そうだ!今日は念入りに洗わないとな!身体を清めるのは紳士の嗜みだ!まだ見ぬ初めての人に失礼のないようにせねば!」
俺がそう言って風呂からあがろうとした時、何か音が聞こえた。
ガチャ
「あっれ~、誰かきたな。なんだよ、他にも男性客来るんじゃないか。まぁ独占するのも悪いからな。」
シュルシュルシュル
ん?あれ?
今の音は?
男の服を脱ぐとは思えない音が聞こえたがきっと空耳だと思う。
そして引き戸が開いた。
ガラガラガラ……。
俺は目を疑った!
入ってきたのはイーゼだった!
実はこれはこの宿屋にきてからイーゼが事前に準備していた罠だった。
宿屋の女将に依頼して風呂を貸し切っていたらしい。
「おま……!なんで?ここは男湯だぞ。」
「いえ、私はサクセス様が間違ってVIPの方の家族風呂に入ってしまったとお伺いしたものですから。心配になって。でも安心して下さい、女将には話をつけてありますので。」
「いや、そういう事じゃないっぺ!だだだ、ダメだっぺよ!」
俺はパニックだ。
だがしかし、唯一の救いはイーゼが裸ではない事。
ギリギリ、俺の息子は……
おっきしてた!
やめてくれ!
これ以上刺激しないでくれ!
「まぁまぁ、せっかくですからお背中くらい流させて下さい。」
いいのか?
背中ならええのんか?
ダメだ、気が狂いそうだ。
そう言うと、イーゼは俺の背後を取る。
素早い動きだった。
ゾクゾク……。
イーゼの細い指が俺の背中をゆっくりと艶かしくさする。
「素敵な背中……逞しいですわ……。」
俺の首筋からイーゼの声が……息が……
童貞の俺には刺激が強すぎる。
まるで金縛りだ!
何も言えないし、全く動けない。
そう、マグロであった。
これから俺は捌かれるのかもしれない。
イーゼは丁寧に背中と頭を洗ってくれた。
俺は緊張のあまり動けなかったが、よく考えればこれは良い予行演習になるかもしれない。
そう、俺が何もしなければ問題ない!
問題ないはずだ!
「前の方も洗ってもよろしいですか?」
「ま、前はダメだべ!!」
なんとか声が出せた。
「恥ずかしがらなくても……。まぁ良いです。それでは私も身体を清めさせてもらいます。」
そう言うとイーゼは恥じらう事なくスケスケの肌着を脱ぎ始めた!
「ダメだっぺ!ダメだっぺ!オラもう上がるだよ!!」
「ダメですよ、ちゃんと洗ってからにしないと。それなら私が洗いますよ。」
「わかったっちゃ!自分でやるっぺ!だから見んといて!!」
俺は必死にイーゼを見ないようにそう言った、見てしまったら多分俺とてただではすまない。
もう暴走寸前だ!
耐えろ!
耐えるんだ俺!
俺は急いで身体をゴシゴシする。
隣ではイーゼが一糸纏わぬ姿で身体を洗っている。
不思議な光景だ。
イーゼは絶妙な感覚でグイグイこない。
それがまたなんとも……。
俺は身体を急いで綺麗に洗い終えると、すぐさまその場を離脱しようとした。
「待ってください!お願いです……。」
イーゼの必死な声が響く。
俺は振り返った。
何故か振り返ってしまった。
わざとじゃない!
反射的にだ!
そこには男の子がついていない、女性らしい体の女神がいた。
!?
初めて見た。
女の子……。
鼻血が溢れて……あれ?
鼻血が出ない。
むしろなんだこの気持ちは。
まるで神聖な物を拝むような、清らかな気持ちになっていくのがわかる。
息子も静まりかえった。
そう、その姿は美し過ぎた。
色白の透き通る肌、完成されたスタイル。
まさにそれは芸術品と言っても過言ではない。
だが紙一重なのは間違いない。
紙一重なのだ。
きっかけさえあれば間違いなく速攻発射する自信がある。
「どうですか?ちゃんと女性になってますか?それだけは確認して欲しかったのです……。」
イーゼはしおらしかった。
俺が言えた言葉は……。
「美しすぎる……。」
それだけだった。
俺はそのまま時が止まったかのように立ち尽くした。
すると目の前の女神はなんと肌着を再度着始める。
「ありがとうございます……服を着ますのでこのまま一緒に入りませんか?」
ゴクリ……。
俺はいつの間にか口に溜まっていた唾を呑みこんだ。
悪魔の誘惑である。
静まったとはいえ、いつ爆発するかわからない時限爆弾状態だ。
ただ、俺は言ってしまった……。
「あぁ……。」
そして俺は風呂に浸かる。
「ちょっと狭いですね。上良いですか?」
上?
上ってどう言う事だ?
するとイーゼは俺の息子の上に、その柔らかな桃を置いて風呂に入る。
いかーーーーーん!!
息子が目覚めた!
これ以上はダメだ!
俺は……仲間には絶対手は出さないんだ!
出しちゃダメなんだ!
いや、もう良いじゃないか。
お店なんかよりこの女神に身を任せちゃえよ。
もう無理すんなよ、俺。
よくやったよ、お前はよくやった。
もう我慢しなくて良いんだ……。
ほら、据え膳食わぬは男の恥っていうだろ?
悪魔が囁く。
ダメだ!諦めるな!
この後お前は男になるんだろ?
おっ始めたら仲間じゃいられないぞ!
リーチュンが泣くぞ!
シロマが悲しむぞ!
今すぐ風呂から逃げろ!
天使が叫ぶ。
俺の脳内では、天使と悪魔による熱いバトルが繰り広げられている。
現時点はギリギリ天使優勢だ。
「あったかいですね……。サクセス様。よろしければ、私の胸もちゃんと女性になってるか確認してください。」
そう言うと俺の上に座ったイーゼは、俺の両手を自らのマシュマロへと誘った。
ポーニョポーニョポニョ 女の子♪
何故かそんな不思議な歌が聞こえてきた気がした……。
俺じゃない!
イーゼが俺の手を動かすんだ。
違うんだ! これは違うんだ!
俺はその柔らかさに完全に暴走モードのスイッチが入る。
ガオぉぉぉん!
息子が雄叫びを上げて完全に覚醒した!
悪魔君!君の勝ちだ!!
ええーい、もう無理だ。
「あら、凄い硬いのが当たってますよ……。」
「うおーーーーーーー!」
俺は叫んだ!
すると……。
ドガン!!
「サクセス!大丈夫!?」
リーチュンの声が聞こえた!
俺はリーチュンの声で状態異常【魅了】から強制解除された。
まずい!!
この体制は言い訳出来ねぇ!!
俺はイーゼを払い除け、すぐに湯船から出た。
「ち!」
後ろからイーゼの舌打ちが聞こえたが今はそれどころじゃない。
俺は必死に進撃の巨チンを手で隠す。
ガラガラガラ
扉を開くとゲロゲロを含めて全員が入ってくる。
間に合った!
なんとか隠せた。
しかし、この場面はもう言い逃れができないのでは?
「イーゼ!女将が全部吐いたわ!あんたの悪事もこれまでよ!!」
リーチュンは俺を見もせずに、イーゼに向かっていく。
「あら?なんのことかしら?私は間違えて入ってしまったサクセス様を呼びにきただけだわ。」
イーゼは白々しく言い訳をした。
「だったら、なんで湯船につかってるのですか?」
シロマが追及する。
「せっかくだから入っただけですわ。それにサクセス様には何もしてませんから。ね、サクセス様。」
「ほんと!?サクセス!本当に何もなかったの!?」
俺は断罪場に今まさに立たされていた。
このまま行けば、下手したら息子が死刑になるかもしれぬ。
決して間違えてはならない。
「な、何もなかったっぺ」
シロマとリーチュンが俺の目を覗き込む。
俺はせっかく綺麗になったはずなのに、全身から汗が吹き出してきた。
「わかったわ、アタイはサクセスを信じるわ。」
「そうですね、まぁなんかあった雰囲気ではありませんね、ただ!サクセスさん!今回だけですよ!!」
「は、はひーー!」
シロマの声に俺は見苦しく返事をした。
息子も縮こまっている。
「それとイーゼさん、これから話があります。じっくり今後の事について話し合いましょうか?」
シロマの目が怖い。
「いいですわ、私は何もやましい事なんてありませんしね。それでは、もう少し湯に浸かってから上がりますわ。このままじゃ風邪をひいてしまいます。サクセス様もね。」
「サクセスはダメ!」
リーチュンは叫んだ。
どうやらリーチュンには俺が引き続きイーゼとお風呂に浸かると聞こえたようだ。
イーゼとしては、裸の俺がいつまでもこのまま立っていれば風邪を引くと言いたかったのだろう…
なので、ちゃんと勘違いは解いておく。
「俺はすぐ着替えて出るから、みんなすまないが出ていってくれ。恥ずかしくて服が着れないだろ。」
俺がそう言うと、リーチュンとシロマはやっと俺の姿に気づく。
ほぼ、裸だ。
「ご、ごめん。アタイ戻るね!」
リーチュンは顔を赤くして出て行った。
シロマは両手で顔を隠しながら出て行く。
でも俺は見ていたぞ、指の隙間から俺の息子を見ようとしていたのをな!
そして俺はなんとか無事にこの人生最大の危機というかチャンスというか、そんな感じなイベントを乗り切るのだった。
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