今日の空は曇天。洗濯物が乾くかな?
──ズシャァアアア!!
いきおいよく、船が船台を滑り出る。
──タリル暦232年12月進水式。同・ンホール港開港。
歪ながらも整備された岸壁。しっかりと油を抜いた木の鮮やかさ。無骨ながらに風を優しく包む帆。空を遊ぶはカモメさん達。
すべてが、拙者たちの新しい航海を歓迎していたはずでござる。
ヾ(゜∀゜)人(゜∀゜)人(゜∀゜)ノ ポコウサぶひぃ~♪
みんなで考えた船の名前はバラバラだったので、結局近隣の大きなお山の名前である【エウロパ】って名前にしたでござる。
蒸気タービンの本体や、船の骨格はすでに出来上がっていたので、案外早い就航になったでござる。
「流石はアイスマン領始まって以来の大型船ですな!」
そう言いながら、クローディス商館のお抱え技師の【モイスチャー博士】は笑う……( ̄― ̄)ニヤリ
(・ω・`;)……いやな予感でござるな。
(`・ω・)っ【お高い請求書】どぞ!
Σ( ̄□ ̄|||) きいとらんでござるよ!
……結局船代は、ローンにしてもらったでござる。一部は銅や木材などの物納にさせていただいたでござる。お……お財布がピンチでござる。
──
「出港!錨を上げろ!」
帆を張り、風を受け、エウロパ号は動き始めた。エウロパ号の処女航海である。
「!?」
豪奢に着飾り、ド派手な帽子をかぶった猫が現れる。
「わらわのふねにようこそにゃ!」
Σ( ̄□ ̄|||) ぇ? ローンの払いは拙者なのでござるが……。
「遠慮せずにくつろぐがいいにゃ!」
どうやら、船長は虎族の【コダイ・リュー】の様でござるな。
「殿! リュー殿はああみえて【港湾自治都市アーベルム】で、新たに【航海術】を学んできたようですぞ!」
ブドウ酒をあおりながら家宰のヘーデルホッヘ爺さんが教えてくれた。
(……頼むからウサに飲ませないでくださいでござるよ。)
ちらちらと目をやると、
(´・ω・)(・ω・`)~♪ ウサとポコは2匹して仲良く釣りをしていたでござった。……ホッ。
──
ンホール港から、ブタ領から南西へ海沿いに3日の距離に見えるのが、港湾自治都市アーベルム。ハリコフ王国から遠く、また、力もあったので王国の力は及ばない町だった。
船はブタ領から、アーベルムとは反対方向に走る。
「取り舵15度ヨーソロ!」
小さな虎族【コダイ・リュー】が自分に自分で指示を出し、舵を切る。
ずっしりと右側が重くなる。まだ出番がない蒸気タービンにも【モイスチャー博士】によって火が入れられた。
グオングオン! ボフゥゥゥ……!
船は鈍い咆哮を上げながら真っ黒な黒煙をもうもうと吐き出す。
現代人からみたら普通であったが、知らないブタ領の者たちは大いに驚いた。
「黒い煙をはくドラゴンぽこ?」
「きっと黒いオナラうさ!臭いし!」
……なんてみんなで海の心地よい潮風を浴びながら。実は必死に釣りをしていた。
「あ~(釣りの)仕掛けが絡まったでござる!?」
「あっははっは。拙者の仕掛けはどうも殿の仕掛けと相思相愛でござるな♡」
酒に酔った老騎士は、今日が初めての釣りだった。
Σ( ̄□ ̄|||) この酔っぱらい爺め! 一回海に叩き落とすでござる!
──
ブタが今日二匹目のマグロを釣ったとき。
ズバァォォォ……。
大きく奇妙な物体が遠くではねた。
「船長! モロドフ級海獣です! ……ぉぉおきぃぃぃ!」
遠眼鏡をした見張り員オークが感嘆の声を響かせる。
ド派手な猫船長【コダイ・リュー】が吠える!
「衝角戦用意にゃ!!」
☆★☆★☆
海の上に出たら、空はどんよりとした雲が現れ、小雨も降ってきた。
──ドォォォオオン!
──ギェェェ!
巨体を疾駆させ、大きなタツノオトシゴと亀をくっつけたような海獣に衝角をぶつける【エウロパ号】。
あまりの衝撃に、エウロパ号自身も巨体を震わせる。
海獣も体液を迸らせながら、怒りの咆哮を上げた。
ブタ達は必死に船の欄干を掴む。
猫型船長【コダイ・リュー】も巨大な力によって舵をとられた。
船長の指示に従い、船上訓練を施された精鋭部隊【シーオーク】たちがキビキビと動く。
……ブヒブヒか(作風)
「ぶうぶうぶう」
ともかく忙しなく皆が動き回った。
──刹那。
水面に何かが叩きつけたような音がしたと皆が思った瞬間。
彼らの頭上の空は真っ暗になった。
海獣は捨て身で、船に覆いかぶさってきたのだ。
「!?」
( ‘д‘⊂彡☆))Д´) ぱ~ん ☆彡
Σ( ̄□ ̄|||) ウサが一発で仕留めたでござる。
ズシーンと鈍い音を響かせて、海獣はその巨体を大型帆船【エウロパ】に躯をさらした。
【システム通知】……海洋BOSSが討伐されました! ダメージMVPは「ウサ」様です! おめでとうございます。どんどんぱふぱふ~♪
<(`^´)> むふぅ~うさ!
Σ( ̄□ ̄|||) す……凄いでござるな。
【システム通知】……ウサはMVPアイテム、【海神の短刀】をGETしました! ぱんぱかぱ~ん☆彡
ウサは手に入れた金色に光るオリハルコン製と思われる短刀をブタの方に……。
……(´;ω;`) ウサよ、スマンでござるな(喜)
ブタの足者に船酔いで転がっていた、ポコに手渡した。
Σ( ̄□ ̄|||) ブヒィ?
(´・ω・)っ【短刀】 (・ω・`) ぽこぉ?
(゜∀゜)人(゜∀゜)ノ~❤
(~♪)
ンホール港では海獣がキレイに解体され、食料肉や工業用油などに加工された。
が、もっともその場に居合わせた商人たちの目を惹いたのは。
──丈夫でよく撓る【大きな骨】だった。
そんな商人たちを気にも留めず、3匹は釣った魚を楽しく焼いて頬張っていた。
ヾ(゜∀゜)人(゜∀゜)人(゜∀゜)ノ ポコウサぶひぃ~♪
……ふうむ。
皆がそれぞれ喧々と騒ぐ中、モイスチャー博士は一人船内に残り、蒸気タービンのデータを集めていた。
蒸気タービンは今回うまく動かなかった。
彼は取り立てて落ち込むことはなく、どちらかといえば嬉々として研究成果たちを眺めていた。
彼の目指した動力への、蒸気タービンのような大きな熱い情熱は、この後様々な小さな、そして確固とした技術として昇華していくこととなるのである。
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