今日の空は岩の天井。まさか焼け出された上に、縛られて洞窟ドナドナとは……(;'∀')
物凄く低くて怖い声の主は、この辺り一帯のモンスター達の取りまとめ役である【ハイオークの族長】だった。姿かたちは大きな猪を二足歩行させたモノに似ている。肌は青白く、息遣いは静かなものの、眼は怪しい赤色に光っていた。
「ブヒブヒ」
「ぶぅぶぅ」
……豚族系会話45分経過。
話を聞くに、ボロンフ辺境伯爵はこのあたりのモンスターを追い払い、人間にとって安全な交易路を作る予定である。
対して、このあたりのモンスターのとりまとめ役である【ハイオークの族長】は、周辺部族に号令し、ボロンフ辺境伯爵と決戦に至った。
が、双方とも大きな犠牲と血なまぐさい損害が出たため、ボロンフ辺境伯爵も【ハイオークの族長】も以降は決戦を回避し、長対陣と相成った。
双方えん戦気分に陥り、緊張状態はつづくものの久しぶりにのどかな日々が森をつつんだのだった。
ここにきて、事情はともあれボロンフ辺境伯爵の先兵たるブタが、この森の近くに橋頭保を築いた形となったのである。
よって、城塞などを建築される前にハイオークの族長が先制し、ブタのくつろぐ丸太小屋に火をかけるという奇襲攻撃にでたのだった。
……。
ハイオークの族長は立派なあごひげをさわりながら苦虫を噛むように呟いた。
「ワシはな、戦いたくはない。が、ボロンフなどに怯えてはいない。むしろ決戦はワシののぞむところ。しかしながらボロンフの奴と長い時間を戦うわけにはいかぬ。」
「なぜでござる?」
貧相なブタが問い返す。
「(戦時中の)メシが用意できぬ!」
(;’∀’) …それは重大でござるな。
「戦わなければいいでござろう?」
「それは無理だな。道が敷設され、しいてはワシの求心力が下がればこの森は種族や部族による争いが先鋭化する。人間なぞに弱みを見せては若い奴らは決してワシには従わんわ!!」
……重々しい会話がブヒブヒと続く。
刹那ブタが吠える。
「ぶひぶひぶひひひひひぃぃぃぃぃ……」
【システム通知】 … スキル【遠縁の近い】が発動します! 義兄弟が召喚されます。
ぼぅ~ん~♪ という怪しげな煙の中からポコとウサが現れた。
「ぽこ?」
「うさ??」
二匹ともふてぶてしく釣りモードMAXである。
(´・ω:;.:… ……絶対に拙者のことを忘れているでござらんかね??
(´・ω・)(・ω・`)(・ω・`)……相談中。
……決!!
「拙者たちは、食料援助を約束するでござる!」
「なぬぅ??」
……ブタたちはボロンフ辺境伯爵に従いつつ、且つハイオークの族長側にも食糧援助を行うと約束したのだった。
いわゆる、後世の人間たちに苦々しく語り継がれる【豚豚同盟】の成立であった。
☆★☆★☆
……今日の空は……。
今日の空は灰色、雨である。ゲームの中の空は黒、星が煌めく夜だった。
「まぁ……飲めや兄弟、ウハハハハ……」
「あ……頂きます。」
ハイオークの族長に気に入られた彼の名は、ベルン・ヘーデルホッヘ。またの名を老騎士ともいう。
そう、族長に気に入られたのは、
ヾ(゜∀゜)人(゜∀゜)人(゜∀゜)ノ ぽこうさぶひぃ~♪
の方ではなく、老騎士だった。
「貴殿の名は聞き及んでおり申す。ウハハ、今宵は愉快じゃ!」
「恐れ入り仕る……」
大きなハイオークの族長にバンバン背中を叩かれた老騎士はむさえた。
老騎士の杯に、葡萄酒がなみなみと注がれる。
「うわっはっは! でな、ワシの妹を嫁にする話は受けてもらえようの?」
「ごほっごほっ」
再び老騎士はむせる。
……(メ´・ω・) ぁん? (’∀’;) ぃぇぃぇ……。
「……」
――それから数日後。
モンスター達が多く住む、森の奥の【邪教の館】にて、怪しげなる木と連なる霊芝のシワシワの化け物のような司祭が口を開く。
「……んほ……ごほんごほん、失敬」
「汝、ベルン・ヘーデルホッヘは……
「ち……、、、誓います……
「誓いますわ❤」
「では、誓いのキスを!」
(´・ω・)(・ω・`) ❤
【システム通知】 … ハイオーク族族長の妹と老騎士は結婚しました。
……ちゃんちゃかちゃ~ん♪ どんどんぱふぱふ~♪
「お父さん、おめでとう!」
実の娘にお祝いされ、年甲斐もなく照れる老騎士。
ある種、この森のまわりの住人が平和になるであろうと感じた瞬間だったのかもしれない。
ハリコフ王国側のブタの家臣である人間の騎士と、モンスター側の族長の妹が結婚した形になったからだ。
がんがんと音を鳴らした祝福やら、粗っぽい歓迎の中、森の中にしては比較的広い【邪教の館】にて無事に式は執り行われた。
かなり人間からしたら野蛮な式であった。なにしろほとんどのお客様はブタ!
もう右も左も、ブタ! ブタ! ブタ! ぶひぃ~な式だった~♪
……実はこの老騎士、若いころに兵卒から武勲を挙げ騎士爵をうけた戦士の誉れ高い勇士だった。
当時、若くて血気盛んだったハイオークの族長があこがれた対象だったのだ。
ハリコフ王国の正当なる騎士とハイオークの妹との結婚は、飲みにゅけーしょんなる伝統により、かなり勢い(しつれい)に流されたとはいえ、正統たる騎士と正統たる魔族の初の公式カップルとなった瞬間だった。
――
「そ……、それは誠か!?」
……ボロンフ辺境伯爵は書斎でワナワナと手にした杯を震わせていた。
ボロンフの麾下であるはずのブタが、仇敵である『モンスター達と勝手に手を結んだ』との知らせを受けた時、彼は天に向けて大きく呪い叫んだと言われている。
☆★☆★☆
【ステータス】
<名前> ブルー・アイスマン
種族 ブタ 職業 落武者
身長120cm 体重100kg
【特徴】10円ハゲ*3
【装備品】落武者の鎧 釣りキット 初心者お勧め装備セット
【スキル】獣言葉 遠縁の近い 弱者の第六感 など
<名前> ポコ
種族 たぬき 職業 妖術使い
【スキル】よわよわ火炎魔法 土遁の術 など
<名前> ウサ
種族 うさぎ 職業 武闘派な白魔道師
【スキル】気絶技(師範級) よわよわ回復魔法 など
<名前> ベルン・ヘーデルホッヘ
種族 人間 職業 老騎士
【スキル】騎乗 など
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