ブタさん子爵の大戦略!?

SA・ピエンス・ブタ史 ~第八惑星創造戦記~
黒鯛の刺身♪
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第十八話……ブタ領木製貨幣【アイスマン券】

公開日時: 2020年11月27日(金) 14:04
文字数:2,936

「僕はタヌキだぽこ~♪」



 僕は【リュー・コダイ】ちゃんから、毎朝市場でお魚を売るのを任せられてるぽこ。


 最近変わったお客様が市場にくるポコよ。




「おい! ひよっこたぬき!」


 しわ深いオーガのおじいさんがノッソリ現れる……。

 ……が連れている犬が吠え続けてくるポコ。



「お魚をくれワン!」

「いかほどポコ?」


「小さい方から千匹を安く売ってくれワン!」


 Σ( ̄□ ̄|||) ち……小さい方から??


 ぇ~っとぉ、小さいのってとっても小さいポコ。

 雑魚を木の杯で掬うポコ。

 ……8杯掬って麻袋にいれてあげたポコよ。



「どぞ~ポコ」

「いくらだワン?」


……小さい雑魚ばかり沢山何に使うポコ? (@ω@`)

「え~っと、銅貨10枚ポコ!」



……犬はオーガのおじいさんと何やらコソコソと相談ポコ。


「高いワン! あと二掬い追加ワン!」


 ……し、しかたないポコね。

 1掬い2掬いっと……。



「お待たせポコ~♪」

「代金の銅貨5枚ワン!」


Σ( ̄□ ̄|||) ひ、ひどいお客さんポコ……。


 ……怖くて怖くて、結局銅貨5枚で売ってしまったポコ。コダイにみっちり怒られそうポコ ( ノД`)シクシク…




 ニャッポ村で聞いたところ、あの無口なオーガのおじいさんはウロダンヴ爺さんと言われているらしいポコ。

 家はどうやらウサが頑張っている海沿いの洞窟の銅鉱から、北にいった小高い山の上ポコ。




──翌日

 山のけもの道を上るポコ。道なき道を登りきると……。


 Σ( ̄□ ̄|||)


 一面畑でポコ!! 台帳に載ってない脱税畑を発見ポコ!!



 井戸で、水を汲んでいるオーガの老人がじっとポコを見る。

 が、興味なさそうにかぶりを振ると、近くの切り株に腰を下ろし、おにぎりが握られていた包みを開け、モグモグと食べ始めた。



 ……それはそうと、どこからともなくポコに犬が近寄ってきて。



「ビビリのタヌキか? 何しに来たワン?」

「あ? いつも買ってくれる小さなお魚は何につかっているポコ?」


 犬は少し顔をかいたあと、



「ついてこいワン!」


 ポコはウロダンヴ爺さんの犬についていく。

 近くの小高い丘をのぼりきる、するとあたり一面に小魚が干してあった。

 板やら筵の上に、奇麗に並べられている小魚たち。



「乾いた小魚を水車で粉にして、固めたやつがこれワン!」


 犬はポコにお団子のようなものを差し出す。



「あ! これは僕がいつも食べているオヤツぽこ~♪」


「おやつでもあるけど、主に畜養の餌に使われているワン!」



 ……その後も犬にいろいろ見せてもったりして勉強になったポコ。



「今日の夕日はきれいぽこ~♪」


 ……そのあと、犬にお別れを言って家路についたポコ。




 Σ( ̄□ ̄|||) しまったポコ! 今日の晩ご飯当番はボクだったポコ!


 大急ぎでポコポコと、ニャッポ村に帰ったけど。



「遅いウサ~(・皿・´) お腹減ったウサ!」


 ( ‘д‘⊂彡☆))Д´) ぱ~ん ☆彡



 ……痛かったポコ~(´;ω;`)ウゥゥ





☆★☆★☆



──ジュオオオォォォ!!


 溶けた銅が鋳型に流し込まれ、空気が悲鳴を上げる。

 炉のちかくは、もうもうとした白い熱気が溢れていた。



──

 アイスマン子爵領ことブタ領では、鍋や釜はもちろんのこと、クワやツルハシ、調度品から釣り具まで幅広く銅が使われていた。

 増えた村民の日用品需要は銅の需給をひっ迫させていた。


 ブタ領では、銅貨の鋳造が盛んであるが、銅は重くかさばる。ハリコフ王国の主要貨幣が銀貨であることもうなずけた。


 が、昨今の銅需要で、そもそも銅貨にする銅が足らない。

 なにかしら手を打つ必要はあったのだった。



──

 そんなところへクローディス商館商館長の【ポリー・クローディス】がやってきた。

 用件はと言えば、



「もっと私の商館に銅を回してくださいまし!」


 頼むという態度ではないことを除けば、その言葉は現在の銅の逼迫を十二分に顕著に表わせていた。



 ブタ達は商館長を会議室に招き相談するも、クローディス商館にだけ銅を売ることはできず、会議は紛糾した。



「じゃあ、貸してあげるだけならどうでござろう?」


と、ブタが唐突に提言。



「殿! 商館長殿は銅を加工品の材料として欲しいのですぞ!」


 家宰の老騎士が口をはさむ。



「だって借用書だけあればいいでござろう?」


 Σ( ̄□ ̄|||) そうだった!



「そうですわね!」


 商館長も満面の笑みで頷く。



「じゃあ拙者は釣りに行ってきま~す~♪」


 ……ブタ脱走。


ヾ(゜∀゜)人(゜∀゜)人(゜∀゜)ノ ポコウサぶひぃ~♪


 ……3匹は脱走して仲良く釣りに行きました。



──

 ブタ領としては、クローディス商館に銅を預け、その借用書を沢山の木簡で頂く。

 ブタ領随一のクローディス商館の借用書なのである。十二分に通貨として流通できた。


 現実として、先の反乱軍との戦では領地外にも関わらず、アイスマン子爵の借用書として振り出された木簡は、銅25枚として通用した。

 その後、上記の【ブタ券】はハリコフ王国南東部で実際に流通しているのだ。


 私鋳造はご法度だが、借用書を流通してはいけないというハリコフ王国法はなかった。


 つまり【ブタ券】の次は、当然として【クローディス券】の発行というわけである。



 ブタ達とすれば(ブタはもう脱走したが)、借用書という通貨が手に入るわけである。反面クローディス商館としては、当分に借用書分の返還に大量の銅は必要ないということになる。

 よって、一部の換金用の引き当て分の銅を残し、商館は銅を日常品として加工することになった。


 ブタ領とブタ領近隣の商人は、銅貨より【木製銅札】を好んで使った。軽くてかさばらなかったからである。

 又、大量の銅札をクローディス商館にあずけ、預かり証紙として一枚の羊皮紙に資産をまとめるものまで現れた。


 羊皮紙券は、様々な額面が記された紙幣と言えた。が、主に銅貨1000枚の預かり証紙が商人たちに人気だった。実にその価値は金貨一枚分に相当した。


 羊皮紙券は、ブタ領で商品を大量に扱いたい商人たちに大変好評だった。


 ブタ領の庶民も、羊皮紙券とはいかなくても、木製銅札はよく使っていくようになる。主に木製銅札は【アイスマン券】と呼ばれ、羊皮紙券は【クローディス券】と呼ばれるようになっていった。


 当然だが、いつでも換金できると思っていただくために、銅貨の鋳造もより一層力が入れられた。



──

 その後、実質的に両替商の地位も得たクローディス商館は、その手数料で大変潤った。その手数料のうち、半分はブタ領に税金を納めることになっていてもだ。


 実際にブタ領は今後の農産品の増産が見込まれ、人口の増大、水産物の取引の増加などは、アイスマン券(ブタ券)やクローディス券(ポリー券)の通貨発行も合わせても、十分な通貨流通量とは言えない現実もまたあった。


 ブタ領の税収は上がっていたが、なにしろ水車や風車の建造、井戸掘りや水路の整備、縦断道路建設に伴う伐採事業、港湾及び各種船の建造など、さらには兵員の増強における装備品調達など、いくらお金があっても足りない状況だった。


 それもあって、ブタ領の予算配分会議では、武断派のアガートラムと内政派のンホール司教が対立した。

 しかし、INTかしこさに絶対の差があるために、予算の取り合いは常にンホール司教が勝ち続ける展開が続いたのだった。




──

「アガートラム族長! 今日の予算はどうでした?」


「うっせぇ! 黙ってろ!」




 ……アガートラムの平時は常に受難であった。





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