今日の空は久々に晴。冬の青空はなんだかうれしい。
現実の空も青い。作られた青空なのかもだけど。
<(`^´)> むふ~♪
ウサが買ってきた物資が売れていた。
俗に言うトリスタン帝国しるしの物資たちだ。
買いつけているのは、ンホール司教。
宗教施設である【邪教の館】別館は、乳飲み子と老人たちで溢れかえり、物資は窮乏していた。
毛布も着るものも、何から何まで足らない。子育て世代が消費の原動力とはよく言ったものである。
──数日後。
レイシ・ンホールは、とんでもない野望をカチあげた!
比較的元気な老人たちを集め、ウサが買ってきたトリスタン帝国の甲冑を、ポコに頼んで赤く染め上げ着せた。
(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)ウンウン♪
頷き喜ぶンホール司教。
なんと100名に及ぶ朱色の老壮の戦士たちが居並ぶ。
彼の念願である【ンホール教騎士団】の誕生だった。
司教は、教会の運営もそこそこに、今までモンスターから頂いていた読み書きソロバン受講料などを元手に、騎士団の訓練を始めた。
教官は、ンホールに昨日タダ酒をしこたま飲んでしまったハイオーク族族長【アガートラム】と、同じく美味しいタダ酒を飲んだ骸骨騎士の【ザムエル】。
……タダ酒は怖い(教訓)。
彼らは、老兵たちの機動力を補強すべく、【スマートラ大市場】でウサが買ってきた四足歩行の低級リザードマン種に騎乗させた。
彼らリザードマンとのコミュニケーションを担当するのは、でっぷり快足牛の【月影】と痩せっぽち怪力ロバの【月英】だった。
もちろん牛もロバも昨日ンホールに、大量の【ニンジン】を奢ってもらっていた。
……タダ飯も怖い(教訓)。
成り行きはともかくとして、ニャッポ村の総力をあげた老騎士団養成だった。
──それから、約一か月後。
書類の山から友であるレイシ・ンホールに呼び出されたブタ領家宰で老騎士は目を疑った。
Σ( ̄□ ̄|||) なんじゃこりゃあ!?
曲りなりにも竜族に騎乗する者50名。コダイ・リューが仕留めた海獣の骨で作られた最新鋭の弩を携える者25名。トリスタン帝国製の高価な金属鎧を着こみ大盾を持つ者25名。みな軍装を朱色に染め、明らかにトリスタン帝国軍旗を下地にした豪奢な赤い旗を勇壮に棚引かせた。
【ンホール教騎士団】の面々は整列し、ブタ領家宰ヘーデルホッヘに一斉に敬礼した。
バツの悪そうなブタ領幕僚たちの視線の先にある家宰の顔は、意外にも穏やかな笑みを浮かべ、その年齢を同じくする輩たちに返礼をした。
時にハリコフ暦233年2月の小雨降る日のことだった。
──
「殿!一大事にござる!」
「ブヒィィ?」
「ポコ?」
「ウサ?」
……夜更けに叩き起こされるブタ達。
そう、彼らは知らぬうちに南方の雄の尾を踏んでいた。
☆★☆★☆
今日の空は雨、外はまだ暗い。
最近おうち帰ってないな。
母上のチャーシュー麺が食べたくなったな。
──
「も……もう一度言え!」
ヘーデルホッヘ爺が、伝令兵の胸倉をつかみ激しくゆするでござる。
「で、ですから、港湾都市アーベルムより騎兵6000長弓4000歩兵30000が北上中であります」
爺が動揺するのも仕方なかったでござる。なにしろこの伝令兵は当方の南端で頑張っているハリコフ王国陪臣騎士爵【シュコー家】の者ではなく、はるか北の王都ルドミラに鎮座ましますドロー公爵の手の者でござった。
──30分後、別室にて。
「すべてはドロー公爵の差し金か!?」
伝令兵がいなくなると爺が喚き散らす。耳がキンキンするでござるな。
いつも爺と笑い合う骸骨騎士の【ザムエル】は、今は南方のシュコー家の軍務役。代わりにザムエルの薫陶よろしき鉄仮面こと【ヴェロヴェマ】が爺をなだめるでござる。
「家宰殿! 落ち着きなされ!」
「や……やかましいわ若造!」
(´・ω・`)
爺は若きハイオーク指揮官であるヴェロヴェマ相手に、ドロー公爵への悪態をひとしきりつくと落ち着いてきたでござる。
(`・ω・)b
Σ( ̄□ ̄|||) こ、こっち向いてそんなことしないで! 仮面で表情判らんし。
「でな、いまいくら動員できる?」
ハイオーク族族長アガートラムは話をかえ、トリグラフ帝国からの若き官僚たちに聞いたのでござる。
「アガートラム軍務役殿のご質問に関しまして、今の食糧事情を勘案しますに我が領の動員できる兵は6000が妥当であるかと」
「爺が売ってくれた食料の代金で、ウサが沢山お友達を連れてきてあげたウサ!」
Σ( ̄□ ̄|||) ウサちゃん、今それを言わないで……。
「いやいや、殿! 我の出番ですかな?」
鉄仮面を付けた赤き鎧に陣羽織を着こんできたヴェロヴェマが笑うでござる。
「おぬしの部隊? ん? たしか……、あ、全員スケルトンか!?」
爺も思わず納得、ヴェロヴェマがンホール司教に対抗して赤に統一した総勢3000名の部下は全員スケルトン。お日様が高いお昼間はあんまり強くないけど、彼らにご飯は特に要らないでござる。
……その後、編成において実務者で話は詰められていったでござる。
──その後、丸太小屋にて
「いやはや、あの程度のことで取り乱すとは、某も耄碌しておりますな! で、殿!
内密なお話とはいったい?」
爺を連れ出し、今は二人きりでござる。
「……実はね、この世界は【VRゲーム】って仮想世界なのでござるよ」
「は? なんですと? ぶいあるげむ?」
──
今まで、だましている気になっていたので爺にはすべて話したでござる。
「……」
「……」
「うわっはっは! 殿も敵が4万と聞いて動揺されておりますな?」
Σ( ̄□ ̄|||) 全然信じてもらえない。
「例えば、この自販機の【ステータス・情報】ってとこでボタンを押すとでござる」
【ブルー・アイスマン】
子爵
レベル69
STR6
VIT243
DEX26
INT6
「ほぉ……、この魔道具になにやら数字が出ていますが、それが何か?」
「でね、このボタンを押すと……、STRが増えるのでござる」
……(´・ω・`) ありゃりゃ? 増えない。故障かな?
「うわっはっは! 指でボタンを押してだけでメキメキ力が増えたら、さすがに誰も鍛錬しませぬぞ!」
……(´・ω・`) 信じてくれない。
「あ、そうそう、これはねSSRってレアな巻物アイテムで……」
「ほぉ……」
(´・ω・`)……ていうか初めて開いてみたでござる。
「ほぉ……これは古の魔道具の設計図ですな、これは船で、これは車で、これは飛び道具……」
(´・ω・`) 仕方なし。
「今から【ログアウト】します!」
「殿! 新しい魔法ですな?」
「ありゃ?何も起こらんでござるな?」
「殿! さては某を励まそうとして、ご冗談を? ……じ、爺はうれしゅうございます!」
……な、泣かれちゃったでござる。
(´・ω・`) てかさ? おうち帰れなくなったでござる?? どうしよう!?
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