ブタさん子爵の大戦略!?

SA・ピエンス・ブタ史 ~第八惑星創造戦記~
黒鯛の刺身♪
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第十二話……女アサシン、その名は【ライン・シュコー】

公開日時: 2020年11月26日(木) 16:15
文字数:4,748

 今日も学校でのテストが長い、一日が長い。みんな楽しくやってるかなぁ?

 リアルの空は今日も熱核兵器焼けだった。





──捕縛された女アサシンのまわりで吠える者たち。


「ぶひぶひぶうぶう~♪(オーク兵)」

「ンホォォォ~♪(暇なのでついてきた内政役)」

「うさ~♪」



 人間が誰一人いないその陣容に困惑した女アサシンとその部下たちは、檻に入れられたままブタ領都ニャッポ村まで連行された。



 どなどな~♪



──ニャッポ村の村役場で引見。


「其方の名は?」


 ブタ領唯一の常識派である老騎士が女アサシンに問う。



「聞きたければ、先ず其方から名乗られよ!」


「これは失礼仕った。某はこのあたりを収める辺境蛮族子爵アイスマン卿の家宰、ベルン・ヘーデルホッヘと申す」


 そう、老騎士は襟を正し自己紹介を述べた。



「ヘーデルホッヘ殿か……、私の名はライン・シュコー」


「ん? ひょっとして貴殿はハリコフ王国騎士団副団長シュコー殿のところのご令嬢ではありませぬか?」



 ……老騎士は以前にシュコー副団長から彼女のことを聞いたことがあったのだ。



「いかにも! 聞き及んでいるならさっさと縄をほどかんか!」


 女アサシンは凛とした声で言い放った。



 ……シュコー副団長は、老騎士の昔の上司だったのだ。



「副団長殿はお元気か?」


「北方戦線で戦って死んだわ」


 女アサシンは俯きながらそう言い、縄でいためた手首をさすっていた。



「そ……それはお気の毒に……ん? ならばなぜ貴公はこんなところにいらっしゃるので?」


 ヘ-デルホッヘが不思議に思うのも無理はなかった。ハリコフ王国では、女性であれども家督は継げるのだ。当主が戦死すれば尚のこと。慰問金もでるし、戦死に対してはさらに5年分の役職手当も中央から加給される。

 その家族たちが路頭に迷う心配などどこにもないのだ。



「……おまえは貴族の家宰なのに何も知らんのだな」


「も……申し訳ない」


 自分の娘のような女アサシンに老騎士は謝る。



「よければ、お話しいただけまいか?」


 水を向けた老騎士の言に、



「……よかろう!」


 一呼吸おいて、女アサシンは重々しい口調でそれに応じた。



──女アサシンのいうところでは……

 ハリコフ王国北方正統支配軍への援軍部隊の主力であるボロンフ辺境伯爵率いる第12師団は、兵糧の蓄えも少なく、敵のゲリラ戦術に悩まされていた。


 が……、中央のハリコフ王国幕僚本部では、第12師団に対し【強硬なる進撃】の命令が決定された。

 食料においては、現地調達を主眼とし、ゲリラ対策として残らず敵方の村々を焼くようにも指示が出ていた。

 実際に兵糧の多くが幾多の世界にわたり現地調達されてきたが、4個連隊を丸丸指揮下に置く師団においての過疎地域における現地調達は難しく、極めて厳しい命令だった。


 ……このような過酷な指示に対して、ボロンフ辺境伯爵は自らの作戦遂行の障壁となる、王国の戦死制度に対しても強硬に臨んだのだった。



「正当なる王国部隊がそのように易々と死ぬわけがない!」

「戦死の報告は、残らず突き返せ!」


 ……結果としてボロンフ辺境伯爵のもとで戦って戦死したものは、戦死の名誉どころではなく、戦死証明書も発行されなかった。

 戦死証明書は、軍直属の上司しか発行できず、発行されない場合は行方不明となり、逃亡罪に問われた場合、悪ければ一族皆さらし首という事態も予想されたのだった。



「……慰問金もでなかったのか?」


 老騎士が問うと、



「……」


 赤毛の女アサシンは俯いたままだった。



「事後報告として、拙者が王都に報告書を送ろう。それまで暫し待たれよ」


「……そのようなこと、すでに弟がやっておったわ!」


 女アサシンはズビズビと泣きながら老騎士の袖で鼻をかんだ……チーン。



 武門の家柄の娘とはいえ、まだ年端もゆかぬしな……。

 そうヘーデルホッヘは憐れんだ。





──王都が財政再建の切り札は、貴族の改易に際する領地没収だった。

 王都が貴族の領地を狙っていることは、貴族たちの間ではすでに知れ渡っており、誰の目からしても明らかだった。

 又、ボロンフ辺境伯爵の配下の従軍戦場文官は極めて優秀であることが知られており、ボロンフ辺境伯爵の戦争の力そのものであった。



 ……が、『それも精彩を欠く……か、』

 老騎士はぽつり誰に語るでもなく寂しそうにそうつぶやいた。


 『これは、有事の際に王国に従っていても恩賞などでんかもしれんぞ?』と、老騎士がボソボソ呟いていたところ、



「でな! ボロンフの奴に一矢でも報いてやろうと思うて、工事を邪魔していたというわけよ!」


 女アサシンは、きりっと泣き止んだ顔で言い放った。



「あの……、その工事は、今は某たちの領分……なのですが……」


 老騎士はいささか当惑してそう答えた。



 ……(`・ω・)


 ……(´・ω・)


 ……(;´・ω・)


 …… orz 「申し訳ない……」



 よしよしヾ(・ω・`)



 老騎士はそっと、まだ年端もゆかぬ女アサシンの頭をなでながら、同意を求めるために周囲を見渡した。

 が……、



「ンホォォォ……んが~スピィィィ……」


 そこには、立ったまま起用に寝るキノコ族のンホール司教しかいなかった。




 ……もちろん、話が退屈そうだから逃げたのであろうが、当事者のウサもいないのは、老騎士は思わず、


「ウサもかぁ~」

 っと言いかけて慌てて口をふさいだ。



……今日も怪我無く、ご飯を美味しく食べたい老騎士であった。







☆★☆★☆




 今日の天気は曇り。だけど、テストが終わった。

 拙者の心は晴天120%!!

 晴天の空の下。




──


「ははっ! 有難き幸せ」


 元盗賊団団長の赤髪のうら若き女アサシン【ライン・シュコー】は、中間考査が終わったブタとの謁見に臨み、老騎士のとりなしでとりあえずは部下とともにアイスマン子爵家の食客となった。



──ハリコフ王国の掟では、盗賊は縛り首である。


 なぜならば、盗賊団と言えば殺人・誘拐・強姦・強盗などを働くわけで、それをされた領民本人家族からすれば、縛り首は妥当である。


──それともあなたは愛する家族が嬲り殺しにされ、実の幼い娘たちが皆強姦され、望まぬ子達を身ごもることになっても平気だろうか?



 ただブタ領としては、被害にあったのは道路建設の夜間労働者のスケルトンたちであり、準軍事的な意味合いでの被害でしかない。


 又、実際に本当の盗賊や他所の勢力から領民を守るためには、彼らの出自は明確で、かつ実践経験もあり、さらには鉱山採掘技術まであるのだ。

 戦力として考えないほうが愚かかもしれなかった。



 元盗賊団と激戦となったブタ領最南端の渓谷は、シュコー副騎士団長に敬意を表して、【シュコー峡谷】と名付けられることとなった。


 一両日中に周辺地形地図および採掘設備一式が鉱山管轄責任者のウサに引き渡された。


 ……というのは建前で、内実は文書上の形式だけで、なんでも屋のヘーデルホッヘ家宰が取り仕切り、ウサは目をつむって拇印を押しただけだった。




──


「ぶひぃ~」

「ぽこ~」

「うさ~」


(´;ω;)(;ω;`)(;ω;`) え~ん


「ンホォォォ~!」


 今、彼らは、多少の戦闘能力の向上のために、アガートラムの森の奥深くにある邪教の館にて、ンホール司教より魔法学の座学中だった。



「てすとぉ~おわったばっかりでござるのにぃぃぃ~」

「勉強嫌い、ぽこぽこ」

「うさ~勉強嫌い、うさうさ」



 ゴスッ! ゴスッ! ゴスッ!


 キノコ族の司教は硬い拳で熱い思いを語る!



 「イツカ、キットヨカッタトオモウ、ンホォォォ……」


 事後的に解ったことでもあるが、ンホール司教はかなりの古めかしい考え方の体罰アリのスパルタ式詰め込み教育実践者だった(合掌)





──


「ご注進! ご注進!」


白馬にまたがった煌びやかな衣装の伝令兵が駆け込んできた。


「何事か!?」



──その日、ブタ領都ニャッポ村が騒然とする。


 誰が見ても一目で、その白馬に跨った伝令がハリコフ王国の正式な使者とわかるのだ。

 ニャッポ村は上へ下への大騒ぎとなった。



 暫しのち、痩せマッチョで毛がつやつやの高貴な木製ブタ人形に、王国宰相ドロー公爵より綸旨を賜った。

 王国宰相とは時に神聖不可侵なる王の代理でもあるのだ。



 使者は恭しく、ブタの置物に頭を下げた。


「アイスマン子爵におかれましてはますますご健──



 王の正式なる使者でないため、ブタの置物が上座にて話を聞く。


 アガートラムはまどろっこしそうな案件のため、急ぎ仮病の腹痛を催し、去っていった。



 で、宰相からの使者の口上はこうであった。


 『ハロルド王太子殿下が南方視察の行幸をなされるので、臣らは一同をもってこれを歓待されたし。

……主催案内人および付添人は王国宰相ドロー公爵で、つまるところ盛大なる宴会でも催してもてなしをしろ』とのことだった。



「家宰殿としても、僥倖であらせられますな!」


 Σ( ̄□ ̄|||) と……とんでもない、この金がないところへ、コンチクショウメ……とか口が裂けても言えない老騎士だった。


 が、急ぎ支度をせねばならぬゆえ、使者を丁重にお送りする老騎士。



「あはは! 流石にアイスマン殿は武人よの?」


「……は?」


 正直わからない老騎士は生返事をする。


「いやいや、初のご行幸であろうにも一言も発せられぬ。お見事! お見事!」


Σ( ̄□ ̄|||) しゃべったら怖いがな……人形やし。


「いかにも!」


 老騎士は目いっぱい韻を踏んだ返事を返し、内心ブタ人形に返事をするからくりでも仕込もうかと本気で悩んでいた。




──その晩。


「やんごとない方々へのご飯なんて作れないクマー!」


 老騎士に是非にと呼び出された、干物造りの名手ドリス夫妻は憤る。


 ちなみに今のブタは中身入りの本物である。

 なぜなら、今は親しい仲間たちで石狩鍋つつき中なのだ。



 ただ飯ほど怖いものはない。


 いつの間にやら女アサシン【ライン・シュコー】までもいる。

 新しい木の香りがしていたニャッポ村役場であるが、度重なる石狩鍋のせいで、かなり魚臭くなりつつあった。


 ……そもそも、鶏肉位なら手に入るのだが、豚肉にいたっては共食いと笑われるであろうし、『ごちそう作って出迎えよ!』は田舎者のブタ達には、かなり凄惨な命令だったのだ。




 ……数日後にこの事態は好転する。



「王太子殿下はお肉がお嫌いの由!」


 この未曾有宇の危機(?)に際し、情報収集をかってでた赤髪の女アサシンの配下が報告だった。


 ……(´・ω・`)


 他にも、野菜やらなんやら、アレコレ嫌いだとの知らせに。



 ……(´・ω・)(・ω・`)(´・ω・)(・ω・`) ヒソヒソ……モウ、オ菓子デモ買ッテ、ダシトクカ?



 ……みたいな雰囲気になりかけたところ、



「中央への当地の威厳を示すためには、当地の特産品で供応すべきです!」


「さすが!」

「さすが!」


 ……。



 Σ( ̄□ ̄|||) シマッタ! ハメラレタワ! これは〇明の罠!


 気づくの、すでに遅し!



 常識論をウッカリ口走ったクマのドリス夫婦。

 そう、【言い出しっぺが責任を持つ!】という大人の法則(?)にかかったのだ。


 みんな学(INT)はないが、知恵はまわったのだ。


 <(`^´)><(`^´)><(`^´)> ぽこうさぶひぃ~♪ (←低INT三兄弟)



「まぁ……ここはクローディス商館商館長にも頼みますか」


 老騎士が極めて常識的な提案をしたので、この議論は終え、会議後はひたすらみんなで石狩り鍋をつついた。



 ……が、


「うさぁぁぁああああ!!」


「!?」


 一同に緊張が走る!

 新参者の女アサシン【ライン・シュコー】がウサにお酒を飲ませたのだ!


ヾ(▼ω▼`メ)ノシ うさぁぁああああ!


 ……楽しい石狩鍋は、一瞬で悲惨な修羅場となっていった。



「そうだ」


「!?」


【システム通知】……正常にログアウトしました。



 Σ( ̄□ ̄|||) ブタ野郎め! 酒乱のウサからにげやがった!




「母上~!」

「お! 珍しくゲームをちゃんと終わったね♡」


「うん! 今日の晩御飯は何?」

「みんな大好きトンカツよ~!」


「やった~♪」




──この裏切り行為を神はいかに見るのだろうか?





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