ブタさん子爵の大戦略!?

SA・ピエンス・ブタ史 ~第八惑星創造戦記~
黒鯛の刺身♪
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第十九話……ブタ領の新年♪

公開日時: 2020年11月28日(土) 15:55
文字数:2,106

今日の空はチラホラと雪。

雪だるま作れないかな。




──ドンドドンドンドン!


 王都ルドミラでは、盛大な新年を祝う花火が打ちあげられていた。




──もといブタ領の新年。



 ……静かでした (´・ω・`)

 花火高いでござるし。


 ……ら、来年のお正月はもっと町が出来ているといいでござるな (*´▽`*)



 皆で、お昼は石狩鍋をつつくでござる。

 (はふはふ、熱くておいしい)



 午後からは、新年のお客さんがお越しになるので、白と赤でコーディネートされた一張羅に袖を通すでござる。




──ブタ領謁見の間。



 ヒズメでヨチヨチやってきて、上座に座る10円ハゲが目立つブタ。かの者はハリコフ王国辺境蛮族子爵【ブルー・アイスマン】。なんと、ここらあたり一帯の領主さま。


 脇には、白髪を海獣の油でオールバックに固めた、老騎士【ベルン・ヘーデルホッヘ】。


 つづいて。蒼き巨躯に動物の皮だけを巻き付け、其のはだけた胸は大きな十文字の形の古傷を覗かせる、歴戦の軍務役にてハイオークの【アガートラム】。


 その脇には、エメラルドグリーンと黄土色の鮮やかなコンストラクトが映える茸族の老木【レイシ・ンホール】司教。


 目がクリッとした茶色い穴ウサギと、焦げ茶色の眠そうなタヌキもいた。


 その二匹を触りたそうな目で眺めているのが、美しい赤髪を携えながらも一切無駄な肌の露出をも受け付けない実践的な衣装をまとう女アサシン【ライン・シュコー】。



 新年に打ち揃う歴戦(?)の猛者たち。


 意気揚々と踏ん反り返るブタ……。




 ……好事魔多し。




【システム通知】……いつもご利用有難うございます。緊急メンテナンスです。

【システム通知】……サーバーがキャンセルされました。



 Σ( ̄□ ̄|||) ぇ?ぇ? 珍しく良いとこだったのに??



 ……暫しの暗転ののち。



 VRMMO機器を丁寧に取り外し、ベッドから這い出る人間の【ブルー・アイスマン】。


 ……彼は頭を振り、VRMMO酔いでふらふらしながら、時計を見た。



「!?」


 ……彼はゲームを沢山やってしまったつもりなのだろうが、表示された時刻は極めて奇妙だった。




 (遊び始めた時間から、逆に3分遡っているでござる……。)



 ……窓の外をみるも、陽は高い。

 電子カレンダーを見ても、今日のままだった。



 (。´・ω・)?



 ……が、アイスマンは、悩むのをすぐにやめた。



「ブルーや! おやつだよ~♪」


 アイスマンは大好きなおばあちゃんに呼ばれ、階段を降りて行った。



 おやつは、柏餅だった。


「ぇ~ヨモギより白のがいい~♪」



──

「今はそれでいい……」


 誰かが、そうほほ笑んだ。



☆★☆★☆



 今日の空は晴れ。お日様ぽかぽか日和でござる。




──新年三日目。

 珍しく人間のお客様がお越しになったのでござる。


 お客様は、よぼよぼのお婆さんだったのでござる。


 いきなり……、



「お前さんを占ってしんぜよう……」


 Σ( ̄□ ̄|||) あ……あんまり占いは好きじゃないでござる。


 お婆さんは絨毯にカードを並べ始めたでござるよ。



「ぬぬぬ……、北西の方から……」

「ぬぬぬ……」


 心配な面持ち…… (・ω・`;)


「ぬぬぬ……」



 ……一時間経過。


「ぬぬぬ……」



──ドゥッ!

 伝令のホブゴブリンが転がるように入ってくる。



「ご注進! 北西のレムリアン山脈のふもとにサイクロプスが現れました!」


「数は?」


 老騎士が眉間にしわを寄せ尋ねる。



「いまだ不明!」


 伝令の表情も蒼白であった。



「ほ……、ほれ……占い通り」


 お婆さんはにやりと笑う。


 ……(´・ω・`)



 老騎士は、お婆さんに褒美の銀貨がはいった包みを渡し、軍議の用意をするよう周囲に檄を飛ばした。



──

 新年の宴もそこそこに、ブタ領は兵を起こすことになった。


 サイクロプスは怪力を誇る一つ目の巨人であり、身長は5Mにも達する場合もあった。

また何匹いるかもわからず、オーク族の中では巨躯を誇るアガートラムとはいえ兵を連れずに戦うのは自殺行為だった。



 直ちに招集がかかり、ハイオーク族を中心とした100名の最精鋭が選ばれた。



──数日後。

 ブタの前にアガートラム以下100名が揃う。



 Σ( ̄□ ̄|||) な……なんじゃこりゃ?


 ブタが驚くのも無理はなかった。彼らの兵装はみな赤、真っ赤赤だった。



「な……なんで真っ赤赤ブヒ?」


「カッカッカッカ! これだけ派手なら殿の武威も轟きましょうて!」


 アガートラムの副将で、スケルトン騎士の【ザムエル】が笑う。


 (xωx`) ……は、はじゅかしぃでござる。

 ……てかさ? どこからそのお金出てきたでござる? (;’∀’) 無駄遣い?



──

 留守居を家宰である老騎士ヘーデルホッヘに任せ、ブタ達は一路サイクロプスの討伐に向かった。


 沿道にて、民衆がアガートラムを指さす。


「あの立派なオークが領主さまよ❤」

「さすが、凛々しくて格好いいわね♡」


 ……もちろん、その後ろで茶色い巨大な牛【月影】にまたがり、タヌキとウサギとお昼ご飯の取り合いをしている貧相なブタが領主様であり、なんと子爵様であるのだが、誰にも判るわけがなかった。


 ちなみに俊足自慢な牛の【月影】は食べ過ぎで巨体になっていた。


 今回が初陣の痩せっぽちで怪力なロバの【月英】は、なんと一匹で100人分の物資を荷車で曳いていた。

 もちろん、馬5頭分のご飯を独り占めしたいだけの思惑でしかなかったが……。


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