鬼塚は饗庭と支倉の3人でやっと生前の福冨克哉が埋めた金庫を探し当て、22時からのニュース番組に生出演で登場した。
「また七ツ釜の集団自殺の報道かな?」と思いきや、TV局に着くと同時に控室に足を運びメイクをし始めると、女性のマネージャーの三吉麻耶から言われたのは「牛首トンネルの集団失踪のことについて答えてほしい。話題は牛首トンネルで持ちっきりだよ。鬼塚さんももうすでにお調べになっているんじゃないのかな?心霊研究家としては大学生35人が集団失踪したのは見過ごせないはずなんじゃないの?」と言われ鬼塚は「すみません、僕も知り合いの警官から聞いたばかりで何も知らされていないんです。」と語ると三吉は、「鬼塚に警官の知り合いがいるなんて覆ってもいなかったですよ。」と聞かれたので、鬼塚は「七ツ釜の集団自殺が起きたときに、あの最初に見つかった40年以上も前に投身自殺を図った方の御遺族だった若い警官の方ですよ。非常に霊感が強いらしくってですね、なかなか凄い方でしたよ。」と答えると三吉は「その警官ってもしや饗庭星弥って警官じゃない?」と聞かれたので、鬼塚は「あっそう。饗庭君から聞かされた。」と聞くと、三吉から思いもしない饗庭に纏わるエピソードを聞かされるのであった。
「饗庭君は非常に強い霊能力を持ち、かつ御祓いをすることも出来るから、日本における心霊捜査官の先駆け的な存在としてマスコミが注目する若手警官の一人だよ。警官好きによるカメラマンによる”警官男子”という写真集でも饗庭君は特集が組まれたんだよ。ジャニーズアイドルにいてもおかしくないお顔立ちと、そして上着を抜くとスキューバダイビングやロッククライミングで鍛えた筋骨隆々の肉体が痺れるほどカッコいいんだよ。下半身も上半身と同様に鍛えているから足の筋肉も凄いんだよ!そんな人に会えるなんて羨ましすぎる!!七ツ釜の集団自殺が霊障がらみとみて呼ばれたのかな?」
三吉にそう言われた鬼塚は「ああ、饗庭君とは仲良くなってね。今じゃLINEでやり取りをするぐらいの親しい関係だよ。彼は非常にユーモアがあって思いやりがあってでも結婚式を挙げる前に舞台女優をしていた婚約者を亡くしてしまって、左手薬指に光る婚約指輪だけが俺は何だか寂しく見えてならなかった。それでも饗庭君はすっかり気持ちを切り替え、明るく前向きに仕事をやっている姿を見ていると、饗庭君ほど強い警官なんてまずいないと俺は改めて思えた。」と語り、三吉は「饗庭君にそんな過去があったのか。そういえば左手薬指には必ずと言っても指輪をつけていたのはそのためだったんだね。」と話し、鬼塚は「饗庭君の奥さんは色白でシミ一つない美人だったよ。凄くきれいだった。饗庭君が携帯の待ち受けにしていて、思わず見てしまったんだよ。小雪に似ていたんだよ。」と語ると三吉は段々と表情が変わっていく。
「饗庭君の奥さんのことなんて聞きたくなかった。」
そう語る三吉に「まあ、まあ、饗庭君だってタレントでも何でもないんだし、いち一人の警察官でもあるわけなんだから、そこは別問題と捉えるべきだよ。」と話し慰めた。そして鬼塚の心の中ではある思いが芽生えてきた。
「あいつ(饗庭)のことを真面目にパトカーに乗る警官だって思っていたが、そりゃあアウディのQ3にも乗れるよな。中古って言っていたけどあれ絶対新車だ。」
三吉の話を聞いてますます憧れと同時に嫉妬の炎が燃え上がったのだった。
そして、生放送を迎え早速話題は石川の集団失踪の話題になり、予めスマートフォンにインストールしたアプリのYahoo!のニュース記事でなどを見て発言できそうな内容を伝え、最期の仕事を終えた後に福岡の家に帰ってきた鬼塚は明日の仕事を考え帰ってきたと同時に風呂に入り、パジャマに着替え、寝ることにした。
翌日2月23日の夜中2時を回ったぐらいの頃だった。
玄関のドアを叩く音で目が覚めた。
「うん、こんな時間に何だ?まあ、悪戯かなんかだろ。」
鬼塚は玄関に向かうことなくそのまま眠り始めるとドアのノック音は激しくなった。
「ドン、ドン、ドン、ドン!」
あまりにもドアのノック音が激しくなるので、鬼塚は思わず「福冨克哉が俺を虹の松原で自滅させたいために俺に嫌がらせをしているのだとしたら、俺は福冨克哉の目論見通りには俺は陥ったりしない!俺のほうが強いんだぞ!!」
強く意気込み、運動不足を解消するためのバットを持った状態で、玄関のドアを勢いよく開け始めた。
「福冨克哉め!俺はそんなことで屈したりしない!さあかかってこおい!バットで撃退させてやる!撃退させて焦熱地獄にでも突き落としてやる!!」
鬼塚が持っていたバットを勢い良く振り始めると、あっけなくバットは握られて制止された。
「鬼塚さん、お寝ぼけはやめよう。福冨克哉の怨霊じゃない、黒縁の眼鏡をして分かりにくいと思うけど俺だよ、饗庭星弥だ。」
饗庭の一声にハッとなって前を見ると、そこには眼鏡姿の饗庭がいた。
鬼塚が思わず声をかけた。
「一体どうしてこんな時間に来た?」
鬼塚の問いに「インターホンを鳴らしたけど出ず、電話も出ず、近所迷惑であることを無論分かったうえでドアをノックするしかなかった。これを渡したかった。」
饗庭がそう語ると、あの俺と饗庭と支倉の3人で発掘した金庫と8mmフィルムの映像を見ることが出来る映写機を持ってきた。
「俺は暫く石川にいることになると思う。支倉と二人で映像の真偽を確かめてほしい。今から石川へと夜通しで移動してお昼ごろには到着する予定だ。」と語ると「行方不明になった大学生たちは未だ見つかっていない。餓死の可能性は低いだろうが栄養失調になっている可能性もあるため、一刻も早く見つけ出さなければいけない。また何かあれば連絡をしてほしい。いつでも親身になって相談に乗ってあげる。」と話すと、鬼塚は「大変だと思うけど、俺は饗庭君のことを応援している。」と語り、饗庭は「ありがとう。」と話した後、アパートの下に止めてあったQ3から金庫と映写機を取り出すと、家の中に二人がかりで入れ始めた。
最期に饗庭は「宜しくね。」と話した後、鬼塚は饗庭が運転するQ3が遠くなるまでを手を振って見届けた。
饗庭を見届けた後、家の中に入った鬼塚は再び眠りについた。
翌日、起床したと同時に支倉にLINEで連絡を取り始めた。
「饗庭が暫くは集団失踪事件があった牛首トンネルで拘留されるみたいだ。虹の松原で見つけてきたあの8mmフィルムと映写機を饗庭が俺の家まで持ってきてくれたから二人で映し出された映像を見て検証してみないか?支倉君の都合が聞きたい。返事を待っている。」
支倉にLINEのメッセージを送った後に、鬼塚は朝の番組に出演すると、朝7時からのニュース番組に出演すると、話題は続けて牛首トンネルでの集団失踪事件になっていく。「肝試しで一体何があったんでしょうか?透視能力をお持ちの鬼塚さんならどうお考えでしょうか?」と言われ、現地の警察が捜査をする状況を見て、鬼塚はこう答えるしかなかった。
「調べた情報によれば、40年以上も前に友人トラブルにより殺人を犯した男性が、罪を犯したことを悔やみ焼身自殺をした後に、この自殺をした男性の母親が息子の後を追うようにしてトンネル付近の木で首吊り自殺を図ったとされています。怖いと思うところはそれだけではありません。トンネル内の安全祈願を願い祀られた地蔵が幾度に渡って、心無い若者により首を切断され持ち去られています。仮に地蔵による祟りが真実ならば、とんでもない悪事が行われていたことを我々は見過ごすことになります。今回、大学生たちがどんな目的であれど、やはりこのような地には遊び半分では訪れないほうが良いでしょう。人の死後、魂が天国を目指し昇天をするためにもより高い場所に目を向けて上へ上へと昇っていきます。言わば、高い場所であればあるほど、御霊は集まりやすいわけです。そのため、山は非常に霊が集まりやすいです。仮に殺人事件を犯した犯人が自殺をしたことがもし事実なら、今もなおこの地で彷徨っていることでしょう。」
色々なTV番組を見ていく中で、「俺の透視能力は現地に行かないと発揮できないんだよ。牛首トンネルに行きたいよ~。」と思いながら、他のニュース番組の撮影の合間をぬった休み時間にアプリのTVerを見ながら思った鬼塚がいた。
そんなときに饗庭からLINEのメッセージが届いた。
『牛首トンネル到着!恐らく行方不明になった大学生の仕業だろう、荒らされたばかりのお地蔵様を写真で撮ったのと、トンネルの入り口から内部に至るまで撮影してきたからコメントの参考にしてね!ニュースで話すネタが無くて困っていただろ?』
饗庭のメッセージを見て鬼塚は『ありがとう。助かる。』と返事をした後に、支倉からも連絡が入ってきていた。
『今日は天皇誕生日で祝日だから時間が空いているよ。あとは、訓練の行われない26日か27日か。今のところ遠征や出張の予定もないし、山田さんの都合に合わせるよ。山田さんのほうが普通にネットニュースとかで見ていて忙しそう、でも言っていることは同じだね。ネタ切れ?ちょっぴり残念( 一一)」
支倉の返事を見て鬼塚は右手の拳を強く握り始めた。
「本名で呼ぶな!しかもネタ切れって人が一番気にしていることを言いやがって!腹立つわ!!この青二才め!!!」
言ってはいけないことではあったが思わず悪口を言ってしまった鬼塚がいた。
感情的になってふと苛立ちを隠せずにはいられなかったが、「苛立てば苛立つほど俺に憑いている福冨克哉の思うツボだろう。冷静になって我を忘れないようにしなければ、自分自身すらコントロールが出来なくなってしまう。」と必死になって考えた。
次のスケジュールを三吉に聞いた後、27日の午後からは予定が入っていないことを見て、支倉にLINEでメッセージを送った。
『27日の午後からなら予定が空いているけどどうかな?』
メッセージを送ったのは19時を回った頃だったため、すぐに既読とつくと返事はすぐに来た。
『OK』(LINEのスタンプ)
その返事を見た鬼塚は思わず突っ込んでしまった。
「お前の返事はスタンプだけかよ!!!!!」
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