悪役令嬢は終末ゲーをハピエンでクリアしたい

月城月華
月城月華

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公開日時: 2022年3月15日(火) 07:00
文字数:871

「で、俺らみたいな半端ものに公爵家のお嬢様がなんの御用ですか?」


怪訝そうな顔をしながらも、ふてぶてしく訊ねてきた男は、この公爵家に

雇われていた元騎士で現在は魔の森との最前線に派遣されている防衛隊の

第一隊長だった。


「…ちょっと私、やりたいことがございますの。そのためには人手が必要だったので

あなたたちを誕生日プレゼントにもらい受けたのよ」


「そうですか…」


第一隊長は無表情で私の前に跪いた。他十名もそれにならう。


ほんと、この世界は終わっていると思う。

平民はその領地の貴族の所有物でしかないこの世界では、我が家に雇われていた

彼らに人権はなく、勝手にやり取りされる存在であった。


かといって、前世の記憶に沿って、平民の人権どうのこうの言っていたら、精神の病気を

疑われて私が幽閉される。

もともとアリーシャは貴族らしく傲慢と言われていたのだ。今までの記憶どおりに傲慢に

ふるまいつつも、最悪の未来回避に努めよう。

どちらにせよ、ゲーム通りの未来がきたなら、彼らを含めた平民も大勢死ぬのだから。


それに、この状況を回避するのに権力があるのはありがたいしね。


「皆、顔を上げなさい。今日からあなたたちは私のもの。私の命に従ってもらうわ」


「かしこまりました」


私は皆の顔を見渡した。

相変わらず、どの人も感情がひとかけらも浮かんでいない。


まあ、考えていることはなんとなくわかるわ。お貴族のお嬢様につかまって、

どんな茶番に付き合わされるかって考えてるのね。


「とりあえず、表向きは私の護衛として動いてもらうわ。隊長は引き続きケイン、あなたに

努めてもらうわ。副隊長はワルドね」


「はっ!!」


「ケイン、ワルドのみこちらに。他は案内の侍女に従って官舎に。メイ、案内して」


「かしこまりました」


メイは彼らを一瞥すると、先だって歩き出した。ケインとワルド以外の騎士隊の皆は

彼女について歩いていった。心配そうに隊長たちのほうを見ていた人もいたが、ケインが無言で

先に行くよう促した。


彼ら以外がこの場から去ると、私は無言でこちらに来るよう促し、彼らと裏庭にある私専用の温室の横の

小屋に入っていった。


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