「本日付けで行政改革ギルドに配属となりました、ザザ・ナムルクルスです。ご不便等おかけするかと存じますが、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします」
なんと美しい挨拶か。行政改革ギルド長、カイリキは思う。これは今までいなかったタイプだし、今当ギルドが欲してやまないエースというやつなのでは、と。
物思いに耽るカイリキを、怪訝な顔でザザが見る。その態度に我に返ったカイリキは、改めて皆に紹介をした。
「ザザ君は、あの難関試験を過去最高得点で突破したスーパーマンだと聞いています。きっと皆さんに良い刺激を与えてくれることでしょう。分からないことが多いと思いますので、ザザ君が困っていたら皆で助けてあげるようにして下さい。……それでは引き続き朝礼を始めます」
行政改革ギルド、そこでは読んで字のごとく行政に関することの改革・改善を行う部署である。
上水道工事や道路工事といったインフラに関することや、政治全般に関すること、環境問題や移民問題、果ては農林水産ギルドに委託された食糧問題といった多種多様な問題に対応をしている。政治家と行政を足して割ったようなギルドだな、とザザは感じたものである。
しかし残念ながら、実態としてレベルはザザが望んだものには程遠いことは既に明白である。下水設備はないし、ギルドまでの道のりもガタガタでボコボコ地面で、到底舗装されているとは言い難い。
一方で、市民からの評価は極めて高かった。上水道の設置や、垂れ流しだった汚物の肥料リサイクルを提案したのがこの行政改革ギルドだったためである。今なお期待の声は多く、次はどんな改革をしてくれるのかと歓待されているのだ。
ザザにとってそこは有難かった。割と何をしても喜んでもらえるのではないかと思ったからだ。もしも自分がこのギルドで偉くなった暁には、どんどん予算を投入して街の改革に努めよう。
だがその前に、まずはやることがある。
「やあザザ君、新しい職場は気に入ってもらえたかな?」
「カイリキギルド長……」
名前に違わない筋骨隆々、不必要なほどムキムキなお方がやってきた。
っていうかデカいなおい。2メートル超えてるでしょこれ。
「うちの職場は基本的にルーチンワークっぽいのがなくてね。街の人から要望の合った仕事や、職場の皆で考えた仕事なんかをやってるんだ」
「なるほど」
「で、これからミーティングやるんだけど、ザザ君もまずは参加してほしい。職場の空気に慣れるのと、まずはこんなことをやってるんだってことを知ってほしいからね」
「承知致しました」
「あと、僕のことは『カイリキさん』でいいよ。ギルド長って柄じゃないし」
にやっと笑うと、カイリキさんは俺を手招きする。ミーティングルームまで案内してくれるようだ。
やること、の前にやるべきことが入ってしまった。なるほど、やはりやることリストが片付かないのはどこの世界でも同じらしい。一先ず俺はカイリキさんのクソデカ背中についていき、『会議室』と書かれた木の板がぶら下がった部屋をノックした。
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