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のちのちザウルス
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立ち上がれ、尻の痛みを知る者よ 2

公開日時: 2021年3月23日(火) 20:00
文字数:909

ザザがおぎゃあと産まれた後のこと。それは彼にとって地獄であった。

 

前世、日本での記憶はそのままに生まれ直した彼だったが、元の世界では20代半ばのどこにでもいる普通の社会人である。至って普通の学校を出て、普通の恋をして、普通に所帯を持ち、普通に企業勤めをして過ごしていた。

ちょっと奥さんにアレコレされて離婚して絶望した挙句、会社で「長時間労働をさせられています、つらいので死にます」と遺書を書いて自殺した以外は普通の人間であった。

当然普通を絵に描いたような人間であるので性癖も普通であり、第二の母親とはいえ下の世話をされるのは当然ながら恥ずかしいものである。

しかし、彼をもっと苦しめたのは別の要素に起因する。

――おしりふきだ。

 

「ザザちゃん、おちりふきふきちまちょうね~」

「おぎゃあああああああああ!!!!!」

 

悶絶。または絶叫。

 

乳幼児の体はまさに柔肌、つるつるすべすべの美しい絹の体である。

だが、日本の常識を異世界の常識に当てはめることはできない。奴らはまるで情け容赦なく、産まれたての赤子の体、もとい尻の穴を拭いてくる。

 

やすりで。

 

「ふ~きふきふきふきふき~~~」

「おぎゃあああああああああ!!!!!」

 

かつて日本の荒野(どっかの山奥)でクソを垂れた時、ティッシュペーパーがなく、その辺のはっぱを使って尻の穴を拭いたことを思い出した。

はっぱは表面がザラザラしており、拭くたびにしっかりとモノを拭ってくれるが、代償にケツに痛みを与えてくる。すべてを拭き終わる頃には彼の尻穴は真っ赤に晴れ上がり、その後ウォシュレット無しでは生活することもままならなくなってしまった。

そんな彼の尻を醜悪で残虐な凶器が襲い掛かる。この世界のトイレットペーパーである。

どこの国のチンケな紙だ、そんな言葉すら生易しいほどこの世界のトイレットペーパーは”粗い”。

まさしく紙やすりと呼べる材質に、このやすりはモノを拭うことが目的なのか、はたまた尻の穴を研磨することが目的なのかとザザは四六時中考えたくなる。

自我はあっても自分で自分の尻を拭くことすらできないザザは、これから数年という自立ができるまでの間、一方的に、無慈悲に、残酷に、尻を拭かれ続けるのである。

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