「皆さんこんにちは!俺は行政改革ギルドのトイレマスター、ザザ・ナムルクルスです!」
トイレマスターだ!彼が噂の!
「今回、皆さんには世間一般に溢れるマナー、もとい『常識』をお教えしたいと思いますので、最後までゆるりとお聞き下さい!!!」
うおおおおおお!!
「じゃあ、まずは軽いやつからいきますか。マナコさんにも聞いてみましょう、マナコさん生きてますか?」
「な、何よ……」
「第1問、入室時のマナーです!例えば社長室でもなんでもいいんですが、立場が上の者の部屋に入室する場合、ノックは何回すればいいと思いますか?」
「さ、3回です、2回はトイレのノックと同じだから失礼に当たります」
「はいブブー!!皆さんは知ってますよね!じゃあお嬢さん、理由とともに答えをどうぞ」
「2~3回くらいで適当に聞こえるようにすればいいわ。理由は特にないわね。要するに、中にいる人が聞こえればいいのよ」
「正解!!知ってた人!」
はーい!!
「はい、マナコさん以外全員正解でした!続いて第2問!」
「ま、待ちなさい!!そんなのが正解なわけないでしょう!?」
「でも全員正解だって言ってますからねえ。じゃあ、これはどうですか?名刺を渡す時に気を付けることを、理由とともに教えて下さい!」
「愚問です、相手が差し出した名刺よりも低い位置に差し出すのがマナーです。より謙虚さを表す必要がありますから」
「はいブブー!これもハズレ!答えは、特に気を付けることはない、です!まあ強いて言えば、相手に聞こえるように名乗るとか、しっかりと顔を見た方がいいとかはありますけど、別にマナーでもなんでもありませんね!ただ自然に交換すればいいものを『俺より上に名刺出しやがって!』なんて考える人はどいませんよね?初対面の人間と会う時に意識すべきポイントはそこじゃないですから」
「そんなバカな!」
「うるさいので第3問!飲み会などで上司にお酒を注ぐときのマナーに関する問題です。ビールを注ぐ時に気を付けることはなんでしょう?」
「ラベルを上にする!お酒の銘柄を上司に見せるためよ!」
「マカオさん」
「まあ、グラスが空いてたら飲み物飲むか聞くくらいで良いんじゃない?あんまりお酒勧めるとアルハラになるけど」
「正解!じゃあ、日本酒を注ぐ時は?マナコさん」
「何が正解よ!!答えはとっくりの注ぎ口以外から注ぐ!!理由はとっくりの注ぎ口が『円の切れ目=縁の切れ目』の意味にも取れ、注ぎ口から注ぐことは縁の切れ目を連想するからです!!!」
「ハーフさん」
「普通に注ぎ口から注げば良いんじゃないんですか?だって注ぎ口って言うくらいだから、それが本来の用途ですよね?」
「正解!!見て下さい皆さん!!!マナコさん、顔真っ赤にしてますよ!!!」
「誰のせいよ!!!!」
マナコは怒りで気がどうにかなりそうだった。せっかく正しいマナーを教えているのに、コイツは延々と訳の分からないことを言い続けている。頭がおかしくなりそうだ。
「このように、大日本帝国には未だに頭の悪いマナーを盲信して、相手にそれを強要させようとしてくる輩がいます!!皆さんも注意して下さい!!」
「ホントに失礼な人!!私はもう帰らせていただきます!!!」
「皆さん!!!!講師のマナコさんがお帰りになります!!大日本帝国のマナーを守り、拍手で見送りましょう!!!!」
わー!!!ぱちぱちぱちぱち!!!
「二度と来るかこんなとこ!!!!」
バタン!!!!
マナコは力いっぱい扉を閉め、会場から姿を消した。それをザザという男は見逃さず、ダッシュで追いかけて扉を開けた。
「扉を力いっぱい閉めるのはマナー違反ですよおおおおおおお!!!!!!」
「ザザ君、やりすぎ」
カイリキの声が虚しく響いたが、ザザの心には1mmも響かなかった。
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