「それでは、車両事故再発防止対策会議を行います」
会議室には行政改革ギルドの4人がいた。4人は沈痛な面持ちで会議に臨んでいるが、中でも顔が酷いのがマカオだ。顔面は蒼白いを超えて土気色になり、今にも死にそうな顔で下を向いてしまっている。顔からは脂汗が流れ、せっかくの化粧が落ちて崩れてしまっていた。口からは「もう嫌だ帰りたい」とぶつぶつ呟く声が聞こえており、会議の音頭を取るカイリキも気の毒そうな顔でマカオを見つめていた。
さて、事の発端は今日の早朝に遡る。
「カイリキさん、アタシ今日はダイニッポンバシへ工事の完工確認に行ってくるわ」
「おお、あそこの道路修繕工事も終わりか。お疲れ様、気を付けて行ってきてね」
運行管理簿。行政改革ギルドに限らず、すべてのギルドにおいてその使用が義務付けられていた。運行管理簿とは、自動車による現場出向・出張において、直属長が部下の出向先を確認し、適正な経路を使用するかどうか、道路状況に危険がないか判断するために用いるシステムである。部下が出向先を書いて上司に提出し、上司の承認行為がなされなければ部下は車を使用できない仕組みになっている。これにより、例えば不必要な外出や出張行為を減らし、比較的時間のかかる机上業務を遂行させやすくしている。
「帝国高速道で行くよね?今の時間は混んでるから、車間距離は広めで運転よろしく」
「今更言われなくても了解よ。何年車に乗ってると思っているの?」
「ははは、マカオ君が事故を起こさなくても、周りが事故を起こして巻き込まれることもあるからね。はい、承認」
「確かにそうね、気を付けます」
マカオはギルド長席横のキーボックスから車のカギを手にすると、現場の完工確認に必要な書類一式を携えて事務所を去っていった。
ヒヒーン!!
「どうどう、今日はよろしくね」
馬車。
そう、行政改革ギルドの公用車は馬車なのである。
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