お願い 積み荷を 燃やして
『生存者だ!生存者がいるぞ!』
熱い 。体が燃える 。体が潰れる 。苦しい 。
『姫様〜この子に名前をつけてください〜!』《何だって?》《私の名前なら》『姫様のような丈夫な子になるように』『丈夫さなら姫様は折り紙つきじゃぁ』《え?私が丈夫?》『姫様の腐海遊びもほどほどにしてくれんとの。こっちの身がもたんわ』『ゲラゲラゲラ』《え?腐海?は?笑うとこ?》
『こないだのトエトの子ね』姫様とやらが言った。
『そうなんですう~』ころころとした女が私を抱っこした地味ーな女の肩を押していた。『トエトったらまだ名前をもらってないっていうから』
『ユパ様はお忙しいから』姫様が言った。
『トエトもお願いしなよ。ほら』
『え‥。でも、ユパ様に‥‥』
『ユパ様はお忙しいから』
『そうよトエト。それとも姫様じゃ不満なわけ?』
『あ!ううん!まさか!』
『じゃ姫様で良いじゃない』
『う、うん‥‥』
突然浮遊感に包まれた。
目の前に顔が迫ってきた。近い!怖い!知らない人怖い!
《うわー!》《お兄ちゃんー!》
女の人が微笑みけてきていた。
すごく優しそうな人だった。
『〝バカウケ〟ね』
《青い帽子の‥‥ん?今なんつった?》
『あの、、、姫様?』
『何かしら?』
『その、、、この子の名前なんですけど、、、』
『うん。〝バカウケ〟よ。いい名前でしょ』
『‥‥‥‥』
《は?どこがだよっ!》《人につける名前じゃねーだろが!》《見ろ!親御さんや皆んなも困ってるじゃねーかよ‥‥》
『いや、結構良いと思うぞその名』
『うむ。悪くないんじゃないかの。〝バカウケ〟ちゃんや〜』
『え、、、、』《え、、、、》
《まさしく、え、だよ!親の気持ち考えたらんかい!》
『さすが姫様ねー』『いい名を授かって良かったのー』『個性的で、見込みありそうな名前じゃて』
『大婆様も仰っとるし、間違いないのー』
『姫様に名付けて貰えたって事が重要なのよ』『姫姉様に感謝だよね!』
《え?なんなん、この圧力》 《老も若きも迫ってきてるんですけど》
『え、あの、姫様‥‥』
『ふふふ』《ひぃっ》
《怖っ!この人怖っ!》《ヤバいヤバいヤバい!》
『よ、良い名を‥‥』
《だ、ダメだよ言っちゃ!》
『ありがとうございました‥‥‥』
《あー言っちゃった》《泣いてるよかわいそうに》
『ふふ。良いのよ。はい返すわね』
『あ、ありがとうござます姫様』
またしてもふわりとした移動があった。
《これマジだな》《私、あれだ‥‥》
『おーおー感動して涙が止まらんか』
『良かった良かった』
《ひぃ!怖い》《あの姫様とかいう奴の目》
《腐海の毒にやられてる奴の目だ!》
『さすがは姫様じゃ』
『わーい姫姉様ー!』
私の顔に涙が雨粒のように降ってきていた。
『良かったのーバカウケちゃんや』
『バカウケー!よろしくねー!』
《違う!》《私はそんな名前じゃない!》
あまりの恐怖に体の中のものが全部出て行こうとしだす。
《え?ヤダヤダ》《ダメダメダメ私!がまん‥‥》《うう、れ、無理。出ちゃう‥‥うえーん》
ぎゃーんと一際大きな声で赤ん坊は泣き出した。
『ほっほっ。バカウケは元気じゃのー』
『さっそく姫様に似てきたかの。ん?』
『おお?こりゃオムツを変えたほうが良さそうじゃぞ』
《うううー。コイツら、いつか殺す》
『はぃ。それじゃ行きましょうね。‥‥バカウケ、、ううう』
《ち、違う!》《私は、私の名前は》
《ラステル!》
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