ラステル・ザ・シスター・ハートビート

T W L T
T W L

DUST IN THE WIND.  すべては風の中に

公開日時: 2024年6月26日(水) 12:00
更新日時: 2024年7月5日(金) 05:42
文字数:1,368

 お願い    積み荷を    燃やして     

 

『生存者だ!生存者がいるぞ!』

 

熱い   。体が燃える   。体が潰れる   。苦しい    


  

『姫様〜この子に名前をつけてください〜!』《何だって?》《私の名前なら》『姫様のような丈夫な子になるように』『丈夫さなら姫様は折り紙つきじゃぁ』《え?私が丈夫?》『姫様の腐海遊びもほどほどにしてくれんとの。こっちの身がもたんわ』『ゲラゲラゲラ』《え?腐海?は?笑うとこ?》


『こないだのトエトの子ね』姫様とやらが言った。

『そうなんですう~』ころころとした女が私を抱っこした地味ーな女の肩を押していた。『トエトったらまだ名前をもらってないっていうから』

『ユパ様はお忙しいから』姫様が言った。

『トエトもお願いしなよ。ほら』

『え‥。でも、ユパ様に‥‥』

『ユパ様はお忙しいから』

『そうよトエト。それとも姫様じゃ不満なわけ?』

『あ!ううん!まさか!』

『じゃ姫様で良いじゃない』

『う、うん‥‥』

 

 

 突然浮遊感に包まれた。

 目の前に顔が迫ってきた。近い!怖い!知らない人怖い!

 《うわー!》《お兄ちゃんー!》

 女の人が微笑みけてきていた。

 すごく優しそうな人だった。

『〝バカウケ〟ね』

 《青い帽子の‥‥ん?今なんつった?》

『あの、、、姫様?』

『何かしら?』

『その、、、この子の名前なんですけど、、、』

『うん。〝バカウケ〟よ。いい名前でしょ』

『‥‥‥‥』

 《は?どこがだよっ!》《人につける名前じゃねーだろが!》《見ろ!親御さんや皆んなも困ってるじゃねーかよ‥‥》

『いや、結構良いと思うぞその名』

『うむ。悪くないんじゃないかの。〝バカウケ〟ちゃんや〜』

『え、、、、』《え、、、、》

 《まさしく、え、だよ!親の気持ち考えたらんかい!》

『さすが姫様ねー』『いい名を授かって良かったのー』『個性的で、見込みありそうな名前じゃて』

『大婆様も仰っとるし、間違いないのー』

『姫様に名付けて貰えたって事が重要なのよ』『姫姉様に感謝だよね!』

 《え?なんなん、この圧力》 《老も若きも迫ってきてるんですけど》

『え、あの、姫様‥‥』

『ふふふ』《ひぃっ》

 《怖っ!この人怖っ!》《ヤバいヤバいヤバい!》

『よ、良い名を‥‥』

 《だ、ダメだよ言っちゃ!》

『ありがとうございました‥‥‥』

 《あー言っちゃった》《泣いてるよかわいそうに》

『ふふ。良いのよ。はい返すわね』

『あ、ありがとうござます姫様』

 またしてもふわりとした移動があった。

 《これマジだな》《私、あれだ‥‥》

『おーおー感動して涙が止まらんか』

『良かった良かった』

 《ひぃ!怖い》《あの姫様とかいう奴の目》

 《腐海の毒にやられてる奴の目だ!》

『さすがは姫様じゃ』

『わーい姫姉様ー!』

 私の顔に涙が雨粒のように降ってきていた。

『良かったのーバカウケちゃんや』

『バカウケー!よろしくねー!』

 《違う!》《私はそんな名前じゃない!》

 あまりの恐怖に体の中のものが全部出て行こうとしだす。

 《え?ヤダヤダ》《ダメダメダメ私!がまん‥‥》《うう、れ、無理。出ちゃう‥‥うえーん》

 

 ぎゃーんと一際大きな声で赤ん坊は泣き出した。

 

『ほっほっ。バカウケは元気じゃのー』

『さっそく姫様に似てきたかの。ん?』

『おお?こりゃオムツを変えたほうが良さそうじゃぞ』

 《うううー。コイツら、いつか殺す》

『はぃ。それじゃ行きましょうね。‥‥バカウケ、、ううう』

 《ち、違う!》《私は、私の名前は》

 

 《ラステル!》

 


読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート