私は家を飛び出した。
自分の生まれも、周りの家族も、みんな“敵”だった。
私は「兵器」だった。
敵の国を滅ぼすための兵器。
生まれた理由も、価値も、「戦い」の中にしか存在していなかった。
私は“生物”ですらなかった。
生きるという目的でさえ、確かな時間を持てなかったのだ。
クリスタリアンとは、そういう「種族」だった。
私が宇宙船を使って地球という星に飛来したのは、聖火暦6891年の頃だった。
この聖火暦6891年というのは、地球でいうところの西暦2008年になる。
宇宙船は森の中に不時着し、周りの木々を薙ぎ倒してしまうほどの衝撃が及んだが、大きな被害を生むことはなかった。
私は私で特に怪我もなく、無事に辿りつけたと言ってよかった。
ただ、宇宙船は壊れてしまい、再度飛び立つことはできなくなってしまったけれど。
地球という星に到着する前、船内で星の情報をインプットする事に成功していた。
この星に広がっている環境、大気、水質、地形、景観、——生態系。
あらゆる情報が脳にアップロードされ、私は彼らに近しい存在になるよう時間を費やしていた。
どうやらこの「星」には人間という種族が生態系の頂点に君臨しており、その進化過程にあるということがコンピュータによって導き出されていた。
この星で生き残るためには彼らに寄り添い、会話をする必要がある。
しかし、「人間」とは、私が住んでいた星の主、“ヴィーヴィル“によく似ている種族だ。
外見も、その雰囲気も。
細かい部分を見ればその“違い”は明らかだが、まるで兄弟のようにさえ見える。
知的生命体ゆえの“繋がり”なのだろうか?
まあ、そうは言っても、ヴィーヴィルと人間とでは決定的な違いがあるが。
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