ワイバーンロード・ホライズンズ

水原麻衣
水原麻衣

過去

公開日時: 2023年2月18日(土) 13:02
文字数:4,799

「おいおい、一体何をやってるんだよ。早く服に着替えてくれよ!」カルバートが顔を真っ赤にする「ししししし、仕方ないだろ、服を着てる最中は攻撃されるし」慌てて言い訳を始める「い、いい加減にしてくれ、俺はお前のお色気シーンを見たくてここまで付き合ったんじゃないんだ!」

「わかってるよ。だからこうして急いでるんだ!」カルバートが怒鳴る「頼むよ」アルバートが泣きを入れる そして・・・二人のやり取りに呆気に取られる店内・・やがて沈黙を破り一人の男が口を開く「なんだってばよぉおおお!うぉおおお!」

「おっさんうぉおおお!」

二人同時に叫ぶ「うるさい黙れ!」店主の叫びに静寂が訪れる。そして、ようやく事態を飲み込む男達、女達は我関せずで各々のグラスを傾ける。やがて、誰かが口を開いた。「もう遅い。とっとと飲んで食って寝ちまいな」それは店中に伝播していき喧騒の中に消えていく。「さあ、あんたも食べな」と店主。アルバートとバーグマンは肩を並べて料理を口に運ぶ。

「うまい!」「うむ」そして二人はジョッキでビールをあおる。「ふーう、うまい!」「ぷはあ!」アルバートとバーグマンの目に希望が戻る「腹が減っていたのを忘れるところだったぜ」

「アルバート、あれはなんだ?!凄まじいな!」興奮するアルバートにカルバートが答える「あそこは竜殺しの英雄を称える為に作られた施設だ。普段はただの看板だが、イベントが行われると大掛かりな仕掛けが動くんだ」そして二人が席を立つ「行くのか」店主の言葉にアルバートが振り向く「まあね」そして店を後にする そして、場面は変わって広間の中心に立つアルバート、傍らには巨大な肉の塊がある「これは俺への供物かな」そうつぶやくとアルバートの意識が急速に遠のいて行く「これは!やばい、逃げなければ」しかし体は動かない

・・・・どれくらいの時間が過ぎただろうか?・・・アルバートは目覚めた(夢・・・なのか)自分の両手を見てみるが、あの禍々しい姿ではなく人間の姿に戻っている。

そして、アルバートは辺りを見回す、周りは薄暗く蝋燭のような光が周囲をぼんやりと照らしている。

そして今まさに、カルバートが姿を現した。彼を止めねば、そう思うものの身体が動いてくれない。バーグマンの裏切りは彼を失意のどん底に突き落としていた。

その時、背後で轟音が響いて地鳴りが始まった。

カルバートが振り返って舌打ちをした。

「もう嗅ぎつけてきた」

彼の言う通りだ、すでに洞窟の中から無数の羽音が聞こえている

「ここは奴らの縄張りだ、見つかるのも時間の問題だろう」

そう言ってバーグマンは剣を抜き構えを取った

「そうだな、戦うしかないか」

そうカルバートは答えたが何か様子がおかしい彼は右手を掲げてなにかを呟いた次の瞬間カルバートの右手から火球が発射されて壁に当たり爆発を起こした。

「やめろよ、こんなところで魔法はダメだろ!」アルバートは焦って叫んだ

「しぃっ、静かに、やつらが来るぞ」カルバートの声が震える

「すまん」カルバートの指摘を受けて謝罪するが心臓が破裂しそうなほど脈打っている。そして、耳障りな羽音が近づいて来る

「どうする? ここで迎え撃つか?」

「・・・・・・逃げるべきだな」

アルバートは決断した「どこへ?当てはあるの?」

そう尋ねた時だ、洞窟の奥から複数のドラゴンが姿を現すそして、ドラゴンたちが炎を吐き始めた。火炎は渦を巻いて燃え広がる、あっという間に洞窟内を焼き尽くす勢いである

「こいつらは普通の生き物ではない」そう言ってバーグマンが前に出た

「どうするつもりだ?!無茶はやめて戻ろう!」

アルバートの制止をバーグマンは無視して剣を構えた そして彼は、燃え盛る業火の中に飛び込んだ。

その刹那だ。一瞬だけ周囲が真っ暗になる 次に視界に入った光景は地獄絵図、先ほどまでは生きていたはずの魔物達が黒炭になって崩れ去っていた。

「なんだい? これは」

唖然とするアルバートの眼に、一匹の龍が映る カルバートは、剣を正眼にかまえて、龍と対峙していた 彼は、じり、じり、とすり足で距離を縮めながら、相手の出方をうかがっていた

「ほう。人語を解するか、知恵の回る奴よ」

そう言いつつ、龍はゆっくりと後退しはじめた カルバートが、それに合わせて歩を進める

「我が同胞を殺しまわっておる愚か者は、貴様か」

龍が問う、しかし答えずに一歩踏み出すと、さらに距離をとる どう見ても友好的とは見えない態度である

「ならば聞くまでもなかろう」

そう言い残して龍は飛び去った

「奴らの仲間じゃなかったか」

「いいえ違うようです、奴は私たちを警戒するように見えました」

アルバートの言葉に、そう返す。どうやらカルバートも、バーグマンの変化に困惑しているようだ。そして、洞窟にたどり着いた二人を待ち受けていたのは、意外な人物だった そして、洞窟の最奥にある祭壇の前までたどり着く そこにはカルバートがいた そして、祭壇の上では一人の男が横になっている

「アルバート!バーグマン!」カルバートの顔が驚愕に歪む「なぜここに!」そして二人の背後を指さした「奴らがきた、早く逃げろ!」「えっ?」アルバートは振り返って絶句した。それは、これまでに見たこともない数のドラゴンの群れだった。

アルバートの意識は混濁した「どうなってんだ、一体」アルバートには状況が理解できなかった。カルバートが説明を始めた。彼はこのダンジョンに潜んでいると思われる「龍」を探しに来た。そして、龍の寝所を見つけたのだがそこで思わぬ事故が起こったのだ。突然、地面が揺れだして地震が発生した。カルバートが慌てて振り返ると、そこにはすでに天井が崩壊し始めて土砂が溢れ始めていた「カルバート、ここから離れるんだ!」「だが」「急いでください!」二人が脱出を急ごうとした時、巨大な岩石が崩れ落ちて来た。「アルバート!」アルバートは迫りくる岩の壁を見て死を悟ったが、カルバートが身を挺してアルバートを突き飛ばした。

その直後。激しい音とともにアルバートは崩落に巻き込まれてしまった 一方、崩落から逃れたカルバートは瓦礫の向こう側に取り残されるアルバートを確認した

(あいつ、死ぬつもりか)そう思うと同時に背筋が凍る思いで、アルバートの救援に向かうが その時すでに崩落は激しく、生き埋めになった。しかも、今度は足元に崩落が迫る

(くそ!このままでは二の舞いだ)カルバートは冷静な口調とは裏腹にパニック状態に陥っていた とっさにカルバートは腰に下げていたポーチに手を入れてアイテムを探す。すると中から手鏡のようなものが出てきた「これを使うしかない」手に取ってみるが使い方が分からない「アルバートこれを使え」と叫ぶと同時に瓦礫を押しのけて立ち上がる。幸いにも、まだ崩落の危険はないと判断した。

カルバートが、鏡を差し出して見せると、アルバートがそれに手をかざして叫んだ「召喚!ワイバーン!」すると、まばゆい光に包まれて一頭のワイバーンが現れた アルバートは、すぐに乗り込むと上空に飛び上がった しかし、落下する岩盤の破片が飛んできてワイバーンを直撃する ワイバーンは、それをものともせずに突き進むと一気に飛翔した。

なんとかアルバートは窮地を脱したが、アルバートは自分が助かった理由がわからず戸惑うばかりである 一方で、地上のアルバートはワイバーンが戻ってくるのを待っていた。

しばらくしてワイバーンは、瓦礫の上に着陸した「無事でよかった、ありがとうな」

礼を言われたワイバーンは嬉しそうに鳴いた。そしてアルバートは驚いたことに自分のレベルが大幅に上昇していたのである

「これは、もしかすると……」そう呟きつつ考え込んでしまった それから数日後、アルヴァートが、とある街の酒場で情報を収集していた時のことである。冒険者が酒を飲み交わしながら話し合っていた。彼らは、最近噂になっている魔族の話をしている。そしてアルバートは、ふとその話題に食いついた「本当なのか、それは」アルバートの真剣な表情に、相手は怪しく微笑んだ

「知りたいか」彼は勿体つけてアルバートを挑発した 彼はその男と取引をした、彼の持っている宝剣と交換という条件で、その男の情報を手に入れた その夜の宿に戻ると、アルバートはワイバーンに言った

「バーグマンの所に戻ろう」

彼は、街を出て南へ向かう しばらく飛行を続けると森に入った。ワイバーンが、その木を避けながら飛ぶ

「ワイバーン、お前のご主人様が心配だから少し寄り道して行くぞ」

彼がそういうなりワイバーンは、進路を右に変えた そこは、数日前にカルバートと出会った場所である ワイバーンはさらに下降し森の中に降り立つ。

そしてワイバーンは首をかしげてアルバートを見上げた ワイバーンの背中から降りた二人はあたりの様子を伺う どうやらカルバートはここにはいないようだ そして、彼らが立ち去ろうとしたとき 突如、背後から凄まじい気配を感じた。

振り返るのが一瞬遅れてしまう ワイバーンは危険を察知したが遅い。

次の瞬間、鋭い牙が襲いかかる ワイバーンの胴体を牙が貫いて、鮮血が噴き出す そしてそのまま押し倒されて首の動脈を引きちぎられ即死してしまった 一方、カルバートはまだ生きているようだったが身動きが取れなくなっていた。どうやら、地面に何か魔法がかかっているらしく動こうとすれば激痛が走る。そんな彼にゆっくりと近づく足音が聞こえてきた。アルバートはカルバートのそばに行くと話しかけた「大丈夫か」アルバートは回復呪文で傷を治してやる。するとカルバートがアルバートに言った「助けてくれたことは感謝するが。俺と一緒にいると君まで奴らの餌食になってしまう。早く逃げるんだ」アルバートはカルバートを無視して、周囲の様子を探る「ここは?」カルバートは周りを見ながら答えた「おそらく、ルルティエが作り出した結界の中だろう」どうやらアルバートはカルバートの救出を優先させたため罠にはまったみたいだ。彼は、慎重に歩を進めた すると前方に、一匹のモンスターが現れる。

それは黒い巨大な犬だった。しかも尻尾は蛇になっている。「あれは邪神ロキの手先だ」カルバートがつぶやく「邪神の眷属は人間を見つけると死ぬまで襲ってくる」「それなら話は早い。奴らを殺し尽くしてここから脱出する」そしてアルバートはカルバートをかばいつつ、戦闘を開始した 最初は互角のように見えていたが、やはり体力的に劣るカルバートは徐々に押され始めた。やがてアルバートの体に噛みつく。彼は苦痛に悲鳴を上げるが、それでも攻撃を緩めない そして、彼は最後の一撃を加えた。

すると突然体が発光して周囲に光が拡散される。

そして、そこには二人の人間が倒れていた。一人は、アルバートだ そしてもう一人は?「俺はどうしてここに?確かあの時……そうだっ」カルバートはアルバートに抱き着いて、涙を流して言う「本当に、生きて帰ってきてくれて嬉しい」カルバートが泣いてる姿を見たアルバートは、照れくさそうな顔をして、そしてカルバートの頭をなでてあげた。「さあ、帰ろう」そして二人はその場を後にした 一方、ルルティエはワイバーンの死体を見て叫ぶ「なんだ!今の閃光は、いったいなにが起きたのだ!?」ワイバーンを倒したアルバートが答える「俺の仲間がやられただけだ」ワイバーンを殺されたルルティエは激怒した「貴様は生かしちゃおけねぇ」そして、彼女はブレス攻撃で反撃に出る アルバートはそれを紙一重で回避しつつ、反撃を開始する。今度はルルティエがダメージを受ける番だった カルバートも戦いに参加したが、ワイバーンと違い素早い彼女に苦戦する そこでアルバートは二人を逃がすことにした「奴の注意は私が引きつける。その隙に二人は逃げろ」アルバートは、二人を逃がそうとする。しかしカルバートはそれに反論して自分も戦うと言う「ダメだ、これは命令だ。お前らは、逃げろ」

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート