【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

レジスタンスは今日も戦う
デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第46話 助けられた二人

公開日時: 2024年7月9日(火) 20:23
更新日時: 2024年7月12日(金) 22:54
文字数:3,041


「ナタンッ! ナタンッ!?」


『…………誰かな? う…………』


 あれから、何れくらい時間が立ったのか分からない、ナタン。


 彼は、不意に頭の中に響いてきた、うるさい声に耳を傾けた。



「ナタン、起きてっ! 起きて、ちょうだいよっ!」


『…………メルヴェ? メルヴェなのか? …………』


 意識が徐々に戻ってきた、ナタンは頭に響いてくる、メルヴェの声に反応して、目を覚ました。


 そこに居たのは、メルヴェと大柄な黒人男性たちだった。



 そして、難民と避難してきた、市民達と数人のベルギュー州軍兵士たちも周りに見えた。



「メル…………ヴェ?」


「ナタンッ! 良かった目を覚ましたのねっ!」


「お前、無事か? 負傷しているが自分で動けるか?」


 目を覚ました、ナタンは自らの体を抱き付く、メルヴェに目を向ける。


 そして、かれの隣へと駆け寄ってきた、黒人男性が話かけてきた。



「お前は、ナタンと言うのか? 傷は軽傷だ、そしてここは安全な場所だ、落ち着いて良い…………」


 床に寝かされた、ナタンが上半身を起こすと、正面で、大柄なスキンヘッドの黒人男性が喋る。



『…………彼はどうやら難民では無いようだ? それに周りにはベルギュー州軍兵士や避難してきた様々な人々が居る…………』


 辺りを見回して、此処が何処かの地下室らしき場所であることを、ナタンは察する。


 そして、彼は、この場所へと避難してきた人々を眺める。



 アラビ人・東洋人・黒人・白人などと言った、多様な人々が混在している。


 彼等は、ただただ怯えたり、ペットボトルの水を飲んだりして過ごしている。



 こうして、難民たちが、たむろしているのが目に入った。



『…………ニュースで見たことがある…………この光景は? イタリィーの地震に巻き込まれてしまった人々と…………アラビの難民キャンプの光景だ…………』


 ナタンは、地下室に避難してきた人々の姿が、前に見た、光景に似ていると思う。


 テレビに良くでる、震災で被災したり、戦争から逃げ延びてきた人々の姿と重なるからだ。



 そして、彼は体を起こすと立ち上がり腰に手を当てる。



「痛たたっ!」


「痛いのっ!」


 ナタンが立ち上がり、腰を痛がると、それを、メルヴェは心配する。


 それから、すぐに遠くで避難民を診察している、衛生兵を呼びに行こうとするが。



「いや、これは単に寝過ぎていたから腰が痛く成っただけだよ」


「何よっ! …………心配して損したじゃないっ!」


「ははっ! そん位の元気が有るなら大丈夫だな?」


 たんに、寝過ぎていたからだと言う、ナタンの気が抜けた言葉に対して、メルヴェは怒って呆れる。


 隣に立つ、黒人男性は、二人のやり取りを見て笑ってしまった。



 彼等は、大柄な彼の方に視線を向ける。



「おっとっ! 坊主、済まない、紹介が遅れたなっ? 俺の名はウェスト・イドゥルフィンだっ! アルメア合衆国・陸軍所属の軍人で階級は曹長だ」


 自らの名前を、ウェストと名乗った、アルメア合衆国軍人は、ナタンに握手を求めた。



「僕は、ナタンッ! ナタン・ル・ロワイエですっ! アルメア軍人って事は、援軍に来てくれたんですかっ!」


 ウェストの右手を喜んで握る、ナタンは経済大国アルメア合衆国軍の軍人だと聞いて喜んだ。


 彼は、アルメア軍が、救援に来てくれたと思ったからだ。



「アルメア合衆国軍の軍人っ! アルメア軍は救援に来てくれたんだっ!」


「いいえ、彼はその…………違うのよ」


「そうだ? 俺は休暇中に旅行で、ハンザまで来たに過ぎない? それに、アルメア本国でも内戦に突入したようだし、当分はハンザに援軍は来ないだろうな…………」


 ナタンが喜んだのも一瞬であり、期待は見事に外れてしまう。


 言い難そうに、メルヴェが彼に違うと告げると、その横から、ウェストも真実を告げる。



「そんな…………それじゃあ他の皆は」


「レギナは無事よ、彼女はベルギュー州軍に救助されたわ、今は別の場所で休んでいるわよ」


 ナタンは、遊び仲間達の身を案ずるが、メルヴェは取り合えず、レギナが無事であることを教える。



「そうか、他の皆も無事だと良いな」


「あんたの言う通り、そうだと良いわね」


「ああーー? お取り込み中に悪いが、お二人さんに話が有るんだ? 生き残りの避難民を、アフレアまで連れて行く、脱出計画が立てられていてな?」


 ナタンとメルヴェ達が、何処に居るのやも知れぬ、遊び仲間達の事を話し合っていたが。


 そこに現れた、ウェストが、二人にハンザからの脱出計画を持ちかけた。



「ここに居る連中を第一陣、第二陣に分けて、地下道を通り、アフレアへの脱出ルートのために用意された船に乗り込もうって計画なんだ」


「それで、僕等はアフレアへ行ける訳だね」


「そう上手く行くかしら?」


 真剣な顔で話す、ウェストの説明に対して、ナタンとメルヴェ達は、耳を傾けるが。



「軍用の無線通信からの情報だ、危険だがここに留まるよりはましだ、そしてお前達と俺は第二陣だ」


「なら僕達も行ってみようか」


「危ないのは、この場所に居ても一緒だしね? それなら南のアフレアに行きましょうか」


 ウェストに、第二陣だと告げられた、ナタンとメルヴェ達。


 二人は、南方にあるアフレア大陸までの脱出船に向かう、計画を知って興奮する。



 そして、何時出発するのかとも、思っていた。



「出発は、二時間後だ? その時ハンザ連邦空軍が一斉に反撃に移る、そして混乱に乗じて我々は脱出と言う訳だ」


 脱出計画の詳細を話す、ウェストは、ハンザ連邦空軍による反撃を語る。


 その混乱に乗じて、難民たちとともに脱出すると言う内容であった。



 この脱出計画に、ナタンとメルヴェ達は期待していた。


 そして、二時間と言う長い時間が立つのを、根気よく我慢して待った。



「あの後、私達は暫くの間、空爆が始まるのを待った…………」


「だけど、空軍の反撃は始まらなかった」


 地下秘密基地内の一室で、ナタンとメルヴェ達は過去を語る。


 それは、希望が絶望に変わった時の事であった。



「理由は、二時間の間に空軍が全滅していたのと…………」


「ハンザ連邦軍と各州軍の壊滅」


 ハンザ空軍全滅を語るメルヴェと、ハンザ軍・各地の州軍が、壊滅状態に陥った事を話す、ナタン。


 二人は、当時戦場である、このハンザに取り残されてしまった。



 それから後は、レジスタンスの一員として、長らく活動することと成ったのだ。



 二人以外の難民たちは、レジスタンス活動には参加せず、アフレアへと逃げた者達も存在する。



 時折、レジスタンスへの補給として、南方から送られて来る密輸品を受け取りにいく部隊がある。


 彼等は、その補給部隊に同行して、密輸品と交換で、輸送部隊に潜水艦で護送されて行った。



 彼等が、果たして無事に安全な、アフレア大陸へと脱出できたのか。



 それは、ナタンとメルヴェ達も知らなかった。



「はあーー? 過去を思い出しても、録《ろく》な思い出しか無いわね」


「だね、遊び仲間達との楽しい思い出だけが、唯一の良い思い出だったね」


 長い溜め息を吐いた、メルヴェの意見に賛同する、ナタン。


 彼は、仲間達との思い出を大切に、脳裏に焼き付けていた。



「今日は、私達は待機していたけど、明日は密輸品の受け取りに行くわよ」


「分かった、それまでは待機だな」


 明日の任務内容を教える、メルヴェと懐かしい思い出から、過酷な現実に引き戻された、ナタン。



 その話を聞いた、彼は分かったと短く答えた。



 二人は、翌日には連合軍部隊と合流して、補給物資を入手しなければ成らない。


 だが、それには帝国軍・帝国警察などの巡回を掻い潜る隠密行動をする必要があった。



 ゆえに、危険な任務となるが、二人に拒否する権利はなかった。

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