帝国側の負傷者は、ドローン担架に回収され、連合側部隊にも増援が来た。
「そろそろ、煙が晴れる…………」
「敵が突撃してくるかも?」
ナタンとメルヴェ達は、白煙が消え失せつつある中、正面から目を放さない。
「よし、突撃だっ!」
ヴラウリオの声が轟くと同時、帝国軍のシュヴァルツ・リッター達が前進してきた。
連中は、PKP汎用機関銃を手に乱射しながら向かってくる。
また、左右の破壊された壁から、自動ロボット豆戦車ネレフタが走ってくる。
それを、空中に浮いた、ドローン飛行部隊も機銃を撃ちながら支援する。
「不味い、遂に来たぞっ!」
「早く、撃ち返さないとね」
ナタンとメルヴェ達は、再び開始された室内戦を行うべく、銃を撃ち始めた。
「こっちからも来たぞっ!」
「敵だっ! うがあっ!」
「私達も居るわよっ!」
「背後が、ガラ空き…………」
再開された戦闘に呼応して、チィーナ軍兵士と自衛隊員を襲う、レギナとルルワ達。
二人は、コンパウンド・ボウとF2000で、敵の虚を突いた訳だ。
「科学攻撃も、喰らいなさいっ!」
「手榴弾よっ!」
「ぐわああっ!?」
「ごぉ…………」
二人は、味方を攻撃する敵を倒したあと、直ぐに別の部屋に移動していた。
そこから、今度は周囲の敵を殲滅するべく、細菌粘液と手榴弾を投擲した。
細菌粘液の放つ、微細なウィルスにより、チィーナ軍兵士たちは命を落とす。
手榴弾が炸裂すると、自衛隊員は爆発に呑まれて吹き飛ぶ。
「後ろからも来たぞっ!」
「心配するなっ!」
「後ろは、ジュジースとヨルギオス達に任せておけばいいっ! 私達は正面の敵を狙うよっ!」
「そうだ、ナタン、俺たちは正面の敵を攻撃するんだっ!」
ナタンは、円形テーブルに身を隠しながら、後方から来た敵に慌てる。
だが、彼と違い、ワンガリは投槍エンペレの先かは火炎放射を放って、ドローンを次々と落とす。
エスメラルは、敵のシュヴァルツ・リッターを狙って、投石紐から瓦礫を投げた。
それに、ジハードも合わせて、ベクターSSー77を連射する。
「ぐっ! 前が見えない…………?」
「うわっ! ぐ、ぐお?」
シュヴァルツ・リッター達は、顔面に飛んでくる瓦礫と機銃弾に怯んでしまう。
また、彼等にはRPGー7とパンツァーファウスト3の弾頭が向けられる。
「発射だっ!」
「こっちもっ!」
「ぐわああっ!?」
「ぶわっ!!」
アラビ人兵士は、土嚢裏から立ち上がると、即座にRPGー7を放つ。
防弾板に、隠れている自衛隊員はパンツァーファウスト3を射った。
これにより、シュヴァルツ・リッター達は、直撃を受けて、派手に爆散してしまう。
「不味いな、RPGの数が半端じゃない? あん?」
「撃ち返すしかないっ!」
ヴラウリオは、敵の後方を見ながら呟き、ターリクはM16A4を撃ちまくる。
その時、連合軍部隊が展開していた天井が爆破され、瓦礫が落下してくる。
「うわあっ!?」
「天井が崩落するっ!」
「手榴弾も、来るぞっ!?」
「逃げろっ!!」
巨大な爆発音ともに、吹き飛んだ天井から、今度は手榴弾が幾つも投下される。
自衛隊員やチィーナ軍兵は、蜘蛛の子を散らすように逃げまくる。
アラビ人兵士や連合軍兵士たちも、素早く爆風から避難しようと、土嚢の外側に飛び込む。
「くそっ! こんな物っ!」
タカヤマは、自らに近づいてきた手榴弾を、バーレットM95の銃床《ストック》で叩き返した。
こうして、ゴルフのように飛ばされた事で、手榴弾は、誰も居ない空中で爆発した。
「よっと、防護壁を展開するわっ! 薄くなるけど、機銃弾を何発か防げるわっ! ラグダ、頼んだわよっわ!」
「撃ちまくるわっ!」
シモーネは、回転しながら胸の高さまである、防護氷壁を円形に作り出していく。
その中で、ラグダと言われた女性隊員は、青い制服に防弾装備で身を固めている。
黒くて、エビテールが短い、暴徒鎮圧用、フェイスバイザー付きのヘルメットを彼女は被っている。
肩から腕、胴体と股間、太股などまでを覆う防弾プロテクターを身に付けている。
これらは、シリャ警察で使用される暴徒鎮圧用の装備だ。
この事から彼女が、防弾兵であることが分かる。
「敵だっ! 反撃しろっ!」
「連中は包囲されている」
「シモーネ、援護するっ!」
周囲に、展開する自衛隊員は、89式小銃を撃ち、黒人PMC要員はマグプルPDRを乱射する。
だが、ラグダは冷静に、サプレッサー付きAKー9小型ライフルを、左右に振りながら撃ちまくる。
これには、倍率調整可能スコープが左側に装着されているから、通常の照準が使える。
また、銃身下部には、レーザーポインターを備えているので、近距離では相手を狙いやすい。
「うががっ!」
「うぐうっ!」
アラビ人兵士や白人PMC要員たちが、レーザーポインターを当てられながら撃たれてゆく。
「このっ! 反撃だっ!」
「ランチャーならっ!!」
「ラグダッ! 破られちゃうっ!」
「分かっているわ、シモーネ」
連合軍兵士は、M60汎用機関銃を撃ちまくり、アラビ人兵士は、AKMSを乱射する。
さらに、RPGー兵やマジシャン達が攻撃して、防弾氷壁を破壊しようとする。
それに気づいた、シモーネは、グルグルと走り回りながら氷壁を厚くしつつ叫ぶ。
ラグダは、弾切れとなった、AKー9からMPー446バイキング拳銃に持ち変える。
そうして、氷壁自体を破壊しようとする兵士を優先的に狙う。
「ぐわっ! ぐっ!」
「ぐ、ぐぅ? うわっ!」
「があっ!」
「よっと、どうなっているんだ?」
ラグダの正確な射撃により、次々と拳銃弾で敵が倒れていく。
RPGー7を撃とうとしていた、アラビ人兵士は床に倒れる。
M60を撃ちまくっていた、連合軍兵士は後ろに力なく倒れた。
アラビ風ターバンを頭に巻いた、マジシャンも眉間を撃ち抜かれてしまう。
そこに、新たな警察隊員が現れた。
「ハルーン、手伝ってっ!」
「敵に包囲されているのよ」
ラグダとシモーネ達から援護を頼まれた、アラビ人警察隊員は、素早く銃を構えた。
ダットサイト付き、9Aー91アサルトカービンを発砲しながら、銃口をアチコチに向ける。
褐色の肌と、黒髭《クロヒゲ》・黒髪・黒目な彼は、黒い制服を着ている。
また、黒いロシャ製6B45弾道防弾チョッキと、ケブラー6B7ヘルメットを装備している。
この重装備から、彼もラグダと同じく防弾兵である事が分かる。
「がっ! ぐご、ぐぅ?」
「うわああっ!?」
「後ろの連中が不味いな、これは手を打たんと」
「俺の雷撃も飛ぶぞ」
後方で、連合軍兵士やアラビ人らが殺られていく中、ワンガリとヨルギオス達が後ろに気を配る。
「火炎放射だっ! 氷が溶かされちまうぞっ!」
「雷撃だわっ! 壁が破壊されたっ!」
「もう、どうしろって言うのよっ!?」
PBベシュムヌイ消音拳銃を無音で発砲しながら、ハルーンは火炎の明るさに気づく。
ラグダも、氷壁が破壊されて氷の欠片が飛び散ると、慌てて入口ができた場所に走る。
防弾氷壁を再構築するべく、シモーネは両手を前に出す。
「RPGーで反撃するっ! んあ?」
「ここは、任せろ」
「私達が何とかするわ」
分解されたままのRPGー7Dを背中から取り出した、ハルーンは直ぐさま連結する。
しかし、そこへ、フロスト中尉とネージュ準尉たちが現れた。
「喰らえっ!」
フロスト中尉は、シャスポー銃を構えると、一発弾丸を発射した。
「ぐっ! これくらいっ!」
「させませんよっ!」
右肩に、一発喰らっても、ジュジースは構わず突っ込んでくる。
だが、彼女が振るう細剣エスパダ・ロペラは、ネージュ準尉の片手剣ワルーンソードに弾かれた。
「く、そう簡単には行かせてくれませんか…………」
「当たり前でしょうっ!」
ジュジースは、一旦バックステップで後ろに下がり、スネージュ準尉は次の攻撃を待ち構える。
こうして、戦いは帝国側による奇襲で連合側が、やや押され気味になっていった。
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(^∧^)
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フロスト中尉が使用する、シャスポー銃ですが。
これは、紙製薬莢を使うタイプでは、ありません。
後継の金属式薬莢を使用する、グラース銃に改良された、モデルです。
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