「ふんっ! 効かないぞっ!」
「この程度ッ!」
強力な毒ガスと細菌粘液などが、猛烈に噴射され続ける中、ギガント達は敢えて前に出る。
片方は、89式自動小銃に、ドラムマガジンを装着した物を腰だめで撃ってきた。
もう一人は、80式班用機槍を確りと構えて、狙い撃ちしてきた。
ギガントやオーガーなどの防弾鎧は、防毒装置も付いている事から、毒や細菌は効果がない。
「助かったか? では、反撃と行こうかっ!」
「逃がさないわっ!」
ヨルギオスは逃げながらも、左手で雷撃魔法を放たんとしたが。
誰かの声に反応した彼は、そちらに強烈な稲光を放出した。
「これで…………なっ! 囮《デコイ》かっ! うっ! 奇襲かっ!」
「引っ掛かったわねっ!」
ヨルギオスは、敵を雷撃で倒したと思ったが、ミネットの案山子を、黒焦げにしただけに終わった。
当の彼女は、すぐさま分身を切り離し、土嚢から、ル・フランセ・ミリタリーを何発か撃つ。
しかし、彼女は胸を、いきなり細剣の切っ先に貫かれた。
そして、遠方からは幾つもの小火球が乱発されてきた。
「残念でしたね、私達も背後を取るのは得意なんですよ?」
「ぐあ、このっ! 離れろっ!」
背後を取っていたのは、ジュジースであり、彼女は刃を引き抜いて、青い血を振り払う。
細剣エスパダ・ロペラを抜いた、彼女は次に屠殺用短剣プニアルを音もなく振るう。
口から青血を吐血しながらも、ミネットは、ル・フランセ・ミリタリーを乱射するが間に合わない。
この短い距離では、拳銃より直ぐに動かせる白兵戦用武器に分があるからだ。
「さあ、死になさいっ!」
「ぐへぇーーーー!?」
ジュジースが振るう屠殺用短剣プニアルは、ミネットの頸動脈を切った。
「ん、っと、さっきから乱発してくる奴が居ますね? 次は奴を標的にしましょうか?」
「ジュジース、深追いは危険だぜっ? オラァッ! 大人しく死にやがれってんだよっ!」
ジュジースは、ミネットを殺すと、直ぐさま土嚢へと逃げ込んだ。
そんな彼女の側に、エスメラルが来ると投石紐をくるくる回して、瓦礫石を投射した。
「ぐあっ! 肩が? …………もう、両手では戦えないわねっ!」
「ソイツは残念ですなあ?」
土嚢裏で氷壁を作り、そこから遠くへと小火球を連発していた、シモーネの右肩に石が当たった。
こうして、両手が使えなくなった彼女の背後から何者かが声をかけた。
「誰っ! ああああっ!?」
「いいから死にな…………」
シモーネは振り返る前に、左手を切り落とされ、終いには胸を袈裟斬りにされる。
「やったな? 次だっ!」
彼女を倒したのは、65式騎兵軍刀を両手で握る灰色迷彩を着た、チィーナ兵ワータイガーである。
「うわっ! 散弾銃かっ!」
「このっ! シモーネを殺りやがったなっ!」
ワータイガーを狙って、散弾銃が放たれたが、それはミアのメルケル200Eだった。
しかし、奴は弾丸を浴びる前に、即座に土嚢へと身を隠してしまった。
「敵味方とも、入り乱れているわね?」
「火炎放射が来るぞっ!!」
ミアは、銃身を折り曲げた、メルケル200Eに散弾を二発込める。
そんな彼女の耳に、再び火炎魔法が放たれたと味方が叫ぶ声が聞こえた。
「うわああっ!? 熱い…………」
敵から放たれた、火炎放射は避けたとしても余熱で物凄い熱気を放つ。
ミアは、土嚢の下に身を隠したが、それでも熱さを感じるほどだ。
「ぐああああああっ!!」
「な、何の攻撃だっ!」
右側に、展開している味方部隊から、悲鳴が聞こえてきた。
「今度は何の攻撃よっ?」
ミアは、味方部隊の慌てぶりが気になり、そちらに目を配った。
「この野郎っ! ジューポンの自衛隊だっ! ぐへぇ…………」
「撃ち殺せっ!! 殺ったか? コイツは…………デバッグ・ソルジャーだな」
どうやら、一人の警察隊員が死んでしまい、もう片方が敵を仕留めたようだ。
「デバッグ・ソルジャー? 敵のバクテリエラー・ゾルダートね…………細菌を振り撒きながら走って居たんだわ」
ミアは、敵兵士が密かに細菌を振り撒きながら走る姿を想像する。
ベーリット&レギナ達が、科学攻撃を行うように、敵軍もまた同じ手段を使ったのだ。
「ぐわっ! まだまだ、やれる」
「は?」
グレネードランチャーを頭に喰らいながらも、グリーン・シュヴァリエは立っている。
奴は、ミアを見つけると、彼女を目標に捉えたのか真っ直ぐ目指して走ってくる。
しかし、頭部を覆っていた、防弾兜が割れたことで、中に入っているアシュア系兵士の顔が見えた。
ここが弱点であると思った、彼女は右側の兜が壊れた頭部を狙う。
「ちょっ! こっちに来ないでよっ!」
ミアはメルケル200Eを撃って、散弾を放ったが、もちろん敵は止まらない。
次いで、MPiーAKー74Nを単発連射で露出部分を狙うが、奴は右手で顔を隠しながら迫る。
しかも、勢いは止まらず、ミニミ分隊支援火器を左手に握りつつ、滅茶苦茶に乱射してくる。
このままでは、彼女は、奴に体当たりされるか、銃弾で撃たれて絶体絶命である。
「伏せていろっ! 私が仕留めるっ!」
「ぐ? 何者だっ!」
「え? 誰、いや、私もっ!」
機銃弾を連射しながら特効してくる、グリーン・シュヴァリエだったが。
急遽、左側から現れた女性下士官が、FN、SCAR《スカー》ーHを何発か撃つ。
思わぬ方向から、7、62ミリ弾を受けた、グリーン・シュヴァリエは立ち止まった。
そして、大きな隙ができた奴を、ミアはメルケル200Eに弾を込めると直ぐ射撃を放った。
「ぐぅ~~? …………」
バタンッと音を立てて、グリーン・シュヴァリエは真後ろに倒れた。
どうやら、右手で隠していた顔に、散弾の丸い弾が幾つか当たったようだ。
「そこの警察隊員、あーー? 名前は?」
「ミアですっ!」
女性下士官は、今度はFN、F2000Sを連射しながら、ミアに声をかけた。
「私は、ウルシカ・トルステニャク中尉だっ! おっと、次はそっちから来たかっ!」
「うらあっ!」
弾切れとなった、ブルパップライフルから、ウルシカ中尉は、即座に拳銃に切り替えた。
ピストルレックス・ゼロー1、S、FDEで、ドラム缶に隠れていた、自衛隊員を撃ち殺す。
「他の隊員は? 状況はどうなっている?」
「状況は不明です、敵味方が入り乱れているので…………」
ウルシカ中尉から話しかけられた、ミアは戦況に関して、自分たち帝国側が不利だと答えた。
彼女は、金ピカ衣装を実に纏う美人、いや少女に見える。
根元を黒くさせた金髪を、真ん中から分けて、おでこを見せつつ、細かくカールさせている。
茶色い太眉と、少しタレ目がちで、大きな深海色の瞳は、儚げな印象を強く与える。
唇は大きく、ふっくらとした薄ベージュ色の頬が微かにピンクがかっていた。
しかし、体付きはグラマーだが、背が低く小柄なため、十代の少女を思わせる。
標準的な帝国警察の黒い制服を着ているが、通常型よりも非常に目立つ。
制帽も、通常型が青く染められている部分が、金色になっている。
また、唾は左右に、竜の鋭い眼を思わせる金線が描かれている。
装備も、金色モッブを左肩から左胸ポケットへと掛けている。
左肩から下げる右腰に下げる、ショルダーベルトと腰ベルトも金色だ。
黒いズボンも、乗馬型ではなく、普通の物だが、横に金線が入っている。
黒い弾帯は、ベルトの正面に六個、後ろに大きめなタイプが六個ほど装着されていた。
また、ベルト左側には黒いホルスターを下げている。
そして、右側には金色に装飾された、ポンペイ・グラディウスの鞘が帯刀されていた。
「むぅ…………? 何とかせねば…………」
そう言って、ウルシカ中尉は敵を睨むのだった。
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