連合軍は、西側から進撃してきた帝国軍を迎え撃つべく、防衛戦を展開していた。
「こっちに来るんだっ! 中で敵の進撃を食い止めているんだっ!」
「中に、敵は侵入して来ているのか?」
AKMを抱えた、レジスタンス員に対して、ウェストは質問する。
「中は、大丈夫だっ! しかし、敵の激しい攻撃が大聖堂側から行われている」
「分かったぞ、行ってくるっ!」
「内部は、味方が占領しているようだね?」
レジスタンス員に誘導されながら、ウェストとヤブローチャクは建物内へと走っていく。
「負傷者だっ!」
「弾薬箱を持って来たぞっ!」
「急げ、急げ」
「援軍だっ! 退けっ!」
負傷者の黒人PMC要員を、背中に抱えて運ぶ、レジスタンス員が後ろから走ってくる。
前方からは、連合軍兵士とアラビ人兵士たちが、弾薬箱を両脇に抱えて走る。
左側の入口からは、民兵が何人も駆け込んでくる。
ナタンは、彼等が混乱しながら動き回る中、ひたすら自身も進んでゆく。
「見えて来た、向こ…………」
「うおっ! 流れ弾に当たったかっ!」
「みんな伏せろっ!」
「匍匐前進で行くしか無いわね」
12、7ミリ弾に当たった、レジスタンス員は後方に吹き飛んでしまった。
それを見て、ウェストは、スライディングしながら床に伏せた。
ハキムも慌てて、床に伏せた後、芋虫のように這って進む。
また、それに合わせて、メルヴェも何とか前に向かってゆく。
「ぐ、敵の攻撃が激しい…………」
機銃弾が頭上を飛び越え、ナタンの窓や壁に当たって弾ける音が響く。
「狙撃兵の排除完了っ!」
「まだ、安心できないわよっ!」
「負傷者だっ!」
「衛生兵《マミー》は、まだか」
建物の角である、円形空間から味方兵士が叫ぶ声が聞こえてくる。
ハルドルは、シュタイアーSSG69、PI狙撃銃で、遠くに位置する敵を狙い撃ちした。
ティエンは、コルトXMー177E2で、向かいの建物を銃撃している。
レジスタンス員は、撃たれた仲間を庇って、窓の下に隠す。
壁に身を潜める、アラビ人兵士は衛生兵を呼びながらM4A1だけを、窓から出して撃ちまくる。
「ハルドル、ティエン、ここに居たのかっ?」
「ウェストとハキムに…………ナタンッ! メルヴェッ!」
ウェストは、匍匐しながら進んでいくと、二人の名前を呼んだ。
ハルドルは、シュタイアーSSG69、PI狙撃銃の銃口を、素早くナタンに向けた。
「くっ! 俺は、スパイじゃないっ! レジスタンスの一員だっ!」
「撃つのは止めて…………」
「よせ、コイツらは帝国兵じゃない、もちろん、帝国警察でもないっ!」
「何故だ、二人は基地内に敵を呼んだじゃないか?」
「スパイと分かれば、後は撃つだけよっ!!」
ナタンとメルヴェ達は、ハルドルとティエン達に対して、両手を上げながら弁明する。
ウェストも、殺気だつ二人に銃を下げるように説得を試みた。
「くっ! …………」
「チッ! …………」
だが、ハルドルは銃口を向けたまま、怒鳴り散らして、敵意を剥き出しにする。
ティエンも、コルトXMー177E2を構えたまま、鋭い目付きて睨んでくる。
「ナタンとメルヴェ達は、スパイなんかじゃねーー!? 俺は、コイツらが小さいガキの頃から知ってるんだ」
「どうでも良いけど、前に集中しなさいよっ!」
「きゃっ! ハルドル、前に集中してくれないとっ!」
「くぅ? 分かった、だが信用はしないぞっ!」
ウェストは、さらに説得をしつつ、ナタンとメルヴェ達を庇おうとする。
その間、ヤブロー・チャクは、両手をグルグルと回転させて、袖から小さな羽根虫を出していく。
また、銃撃が激しくなり、ティエンは正面の建物に撃ち返す。
ハルドルも、シュタイアーSSG69、PI狙撃銃を、遠くの公園と広場に向ける。
「ガウッ! ガウッ!」
「アオーーーーンッ!」
「戦車だっ! 不味いっ! 狼も来るぞっ!」
「ヤバイわっ! RPGはどこっ?」
公園の方から軽戦車である、M10ブッカー戦闘車が走ってきた。
そして、向かい側の建物から軍用犬と狼たちが放たれてきた。
レジスタンス員は、AK47を連射しつつ、何とかしようと必死で牽制する。
それに合わせて、ティエンは火炎瓶の先から出ている、くるめた紙に着火しながらを道路に投げた。
「ギャウッ!?」
「キャウンッ!!」
ドーベルマンや狼たちは、三匹くらい、火炎に包まれて暴れまわる。
しかし、何匹からは炎を纏いながらも突っ込んできた。
「ぐわっ! このっ! 退けっ!」
「ヤバイわっ!?」
ナタンの真上から襲って来た狼は、馬乗りになると、喉を喰い千切らんと大顎《オオアゴ》を開く。
メルヴェは、KN12を振るい、銃床《ストック》で、ジャーマンシェパードの頭を力強く叩いた。
「この野郎、近づくんじゃねえっ!」
「退けっ! 近寄るな」
「ギャウッ!」
「ギャンッ!?」
「ぐぅっ! ぐああああっ!」
「ぎゃああーーーー!?」
ウェストは、クリスヴェクターを乱射しながら狼達を倒す。
さらに、接近してきた一匹を掴むと、即座に投げ飛ばして、壁に当たった瞬間を狙撃した。
ムーディーAKMSを単発連射しながら、ハキムは冷静に軍用犬たちを倒していく。
最後に近寄ってきた、ドーベルマンを、コンバットブーツで蹴り飛ばした。
しかし、レジスタンス員や負傷して横たわっていた、PMC要員たちは噛まれてしまった。
「ぐぅぅ? ガウ?」
「グルルルルッ!」
「はっ! ゾンビ化したぞっ!」
「ギャウッ!!」
「このっ! 死ねっ!」
レジスタンス員とPMC要員は、ゾンビ化して周囲の者に襲いかかろうとする。
クリスヴェクターを連射して、ウェストは頭部を撃ち抜いて、レジスタンス員のゾンビを倒す。
ナタンも、腰から抜いた、MASー1935で、狼の顎を撃ち抜いた。
そして、動かなくなった死体を、PMC要員のゾンビに投げつける。
「お前も、死ね…………?」
「今のは、私がやったのよ」
ナタンが、MASー1935を向けた途端、PMC要員のゾンビは両足を撃たれて転ぶ。
イエローボーイを構えた、メルヴェは不思議がる彼の前で、レバーを引いた。
「これで、終わりかしら?」
「軍用犬の第二波が来るっ!!」
「さっきより、大きいね~~」
「砲撃だっ! 伏せろっ!」
片手で、ゾンビに一撃を撃ち込んだ、メルヴェだったが、安堵している暇はなかった。
コルトXMー177E2を連射したまま、ティエンは軍用犬を二匹だけ倒す。
ヤブロー・チャクは、大きな狼に乗った中量級シュヴァルツ・リッターを見た。
彼女は、両手から羽根虫を出そうとしたが、ハルドルが叫んだので頭を下げた。
「今まで、他を狙っていたが、こっちに気が向いたのかよっ!」
建物の二階に着弾したらしく、爆発音ともに、瓦礫が黒灰とともに降り落ちてくる。
「来るよっ! 狼騎兵がっ!」
「ウルフライダーは、任せなあ~~」
狼騎兵を狙い、パトリシアはバレットM82で、狼を一撃で仕留めた。
そして、ヤブロー・チャクは灰黒い鎧に身を包んだ、シュヴァルツ・リッター達を攻撃し始めた。
彼女は、大きな赤紫のフードから羽根虫を放ち、敵を混乱させる。
「ぐわっ! なんだ、この虫はっ!」
「が、痒いっ!」
シュヴァルツ・リッター達は、狼から転げ落ち、狼自体も、羽根虫に混乱してしまう。
今の内だと言わんばかりに、ナタン達は連中を狙って、素早く銃撃を行った。
「オラ、オラ、死にやがれっ!」
「来るなら殺すよっ!」
ウェストは、クリスヴェクターを連射しながら、接近してきた、シュヴァルツ・リッターを蹴る。
そうして、できた隙をパトリシアは見逃さず、バレットM82で吹き飛ばす。
「うらああああっ!」
「うわあっ!?」
「…………」
羽根虫による妨害を、上手く潜り抜けた狼騎兵が、別な敵を狙っていた、ナタンにも迫る。
しかし、奴の握っていた湾刀サーベルが切り落とされた。
「うぐぃっ! 貴様、裏切り者かあっ!」
「違うってのっ!」
シュヴァルツ・リッターは、乗っている狼ごと腰を斬られて、死ぬ前に恨み言を吐いた。
それに、平然とした雰囲気で青い鎧のシュヴァルツ・リッターは答えた。
「ダンター、来たのかい? てか、生きてたんだね~~?」
「ああ、ゾンビを斬りながら塹壕で隠れてたからな」
ヤブロー・チャクの問いに、青血だらけになった鎧を着ている、ダンターは答えた。
「こいつらの鎧は隙間がある、恐らくは狼に騎乗するため、軽量化したんだろう?」
「それより戦車は? 見えなくなったわよ?」
「RPGに追っ払われたんだな?」
「まだ、撃っているわ、味方にも増援が来たのね?」
ダンターは、死体を蹴飛ばしながら呟くが、ヤブロー・チャクは、M10ブッカー戦闘車を探す。
ウェストは、二階から向かい側のビルや公園に向かっていく、白煙と爆発を見て呟く。
バレットM82を窓に置きながら、スコープを覗き、パトリシアは遠く離れたビルを眺める。
こうして、敵部隊を撃退した連合側だが、帝国側は次なる戦力を用意していた。
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