「駄目だ、どうしようも無いわね」
「どれ、俺に見せてみろ?」
格子状のドアに近付いた、レギナは両腕をヒラヒラと動かし、お手上げ状態だと諦める。
だが、彼女の言葉を聞いて、ドアに巻き付いたチェーンを眺める、リュファス。
彼は切り落とせば、大丈夫だろうと考えたらしく、何処にしまっていたのか。
取り出した、ペンチで銀色のチェーンを切り落とそうとする。
「待て…………帝国側が仕掛けた罠かも知れない、チェーンの中に糸が紛れ込ませてあって、その糸が爆弾に…………」
「あるいは我々がチェーンを切れば、誰かが通ったと言う事を確認して帝国側の部隊が、この付近一帯を調査しに来るかも知れ無い」
ハキムとウェスト達は、銀色のチェーンが罠かも知れないと言う事を考慮した。
そして、二人とも切らない方が良いと、ペンチを握るリュファスを制した。
「そう言う事なら止めるよ、でもドアを開かないのなら向こうに行くしか無いな?」
そう言って、ドアから顔を剃らした、リュファスの視線は、別な道を見ていた。
剥き出しになった、黄色い岩壁が続く、地下防空壕のトンネルだった。
そこを再び通る事と成った、十人は、またかと浮かない顔で、暗い道を仕方無しに歩き出す。
こうして、当所の予定ルートを、大きく変更を余儀無くされてしまった事に苛つき始めた。
「はぁ~~また歩くのね? この道を…………」
「行くしか無いか…………もう嫌に成るわね」
「まぁまぁ、兎に角進んでみましょうよっ」
メルヴェとハーミアン達は、黄色い岩壁のトンネルを愚痴りながら歩く。
サビナは、そんな二人に言葉をかけて励ます。
彼等は岩壁を通り、大分遠くまで来ると、今度は、道自体は行き止まりだが。
上の階へと続く、赤錆た黒い鉄製の梯子が、右端に存在した。
「やっと見つけたぜ…………ここまで苦労したな」
「彼処から別の道へ行けるわね、上も行き止まりです何て事は無いわよね?」
「約束時間までに目的地に到着出来ると良いがな」
「ウダウダ言って無いで、皆行くわよ」
梯子を見つけたことで、肩から力を抜いて喜ぶ、ウェスト。
上も行き止まりでは無いかと考えたり、約束時間に間に合うのかと、心配するレギナとハルドル達。
二人が彼是《あれこれ》と喋るって、いつまでも答えを出さないでいる。
すると、その後ろから、メルヴェは梯子を登り、上階に、全員さっさと上がるように声をかけた。
「メルヴェの言う通りだ、行こう…………先導する」
「貴方の後ろには私が着くわ、援護は任せて頂戴」
ナタンが梯子を登り始めると、後ろに、レギナが続いて、上の階へと登る。
そして、上階の地面に空いた、穴から彼が、ひょこっと顔を出す。
すると、背後から彼の後頭部に、とつぜん何者かが銃口を突き付けてきた。
「おい、お前は…………」
「落ち着け、味方だっ!」
背後から現れた、H&KG36Gの銃口を向ける人物だが。
それは、帝国警察特殊部隊員のトーテン・シェーデル・ゾルダートだ。
彼以外にも、周囲には、帝国警察部隊・下士官が一人、それから複数人の帝国警察隊員が存在した。
ソーサラー&オーガー達は、辺りを警戒しながら歩いている。
グール&バクテリエラー・ゾルダート達も、見張りに立っている。
こうして、ここでは、さまざまな帝国軍のアンデッド達が警備を行っていた。
そして、銃口を突き付けられた、ナタンは、梯子を登り終える。
すると、彼に落ち着けと言って、自らは平静な態度を保ち、味方だと答えた。
「こちらには異常は無かった? 下に居るのは部隊の仲間だけだ」
「そうか、お前達は何処へ行くんだ?」
喋りながら下を向いて、穴を覗きつつ、梯子を登る途中のレギナに目配せをする、ナタン。
彼に対して、警察隊員は銃口を下げながら、何処へ行くのかと問いかけてきた。
「このまま地下道内を巡回する、その後は警察署に帰還するんだ」
「分かった、テロリストに気を付けろ、気を抜いたら罠に嵌まるからな…………良いか? 絶対にだぞっ!」
ナタンが、適当な行動予定を、それらしく言ってみたのだが。
それを嘘だとは全く知らない、警察隊員は、真剣な顔で答えた。
奴は、彼を心配して気を付けろと、念を押して心配したのだ。
「分かった…………敵には気を付ける」
「分かったなら良いんだ、俺よりも若い奴が先に逝っちまう何て、馬鹿げているからな?」
ナタンが素直に返事を返すと、帝国警察特殊部隊員は、感情が存在するらしく、彼の身を案じた。
「ああ、有り難う…………」
「へっ! …………礼は良いから自分の身を大事にしろよ、じゃあなっ!」
ナタンが表情を和らげ、ニッコリと笑って、彼に対する礼を述べる。
すると、警察隊員は別れを告げて、自らの部隊に所属する仲間達とともに、地下道を進んで行った。
彼みたいに、ハンザ連邦やアルメア合衆国では、自ら帝国の尖兵となった者が、多数存在した。
兵士や警察官と言った職についた者達が、かなり帝国の軍門へと下った理由だが。
それは、政治家・軍上層部の腐敗に、嫌気が指していたから帝国に所属する戦闘員になったわけだ。
帝国の軍・警察組織に志願して、忠誠を誓う代わりに、感情を抑制されていない兵士も多かった。
彼等は、感情を抑制されてはいないだけでなく、記憶や道徳観念を弄られてない。
それは洗脳せずとも、元から白人至上主義的であるからだ。
また、国家社会主義的な帝国の政治体制を、熱烈に支持しているからである。
その理由は、各々様々で有るが、彼等が帝国を支持する殆んどの理由は、主に四つに分けられる。
元から、白人至上主義的な帝国の価値観に近い思想の持ち主か。
国家社会主義的な、極右勢力を支持する政治思想の持ち主。
テロリストや難民により、爆破事件や銃撃テロで、家族を殺害された者。
自らが、強烈な暴行を受けたり、強姦された恨みを持つ者。
ーー等々と言った者が、大半を占めていた。
「ふぅ? 行ったな、皆もう出てきても大丈夫だぞ」
帝国警察部隊が居なくなると、しゃがみ込んで、足元の穴を覗く、ナタン。
彼は、階下に居る仲間達へと、声を掛ける。
「今、そっちに行くわよっ!」
「少し待っててくれ」
「ナタン、念の為警戒を怠らないで」
ナタンの声を聞いた、仲間の中から帝国警察に変装した、三人。
レギナ・ハルドル・メルヴェ達が梯子を登ってきた。
「さぁ、どちらに進むかな」
仲間が、梯子を登る間に、辺りをぐるりと見渡す、ナタン。
身体を回して、周囲を確認した、彼が見渡した空間は、薄暗く広々としていた。
「ここは…………明かりが有るわね」
「僅かだけどな」
梯子から身体を出してきた、レギナと、その後に続いて出てきた、ハルドル。
彼等は、白い光を放つ蛍光灯が、天井に複数備えられているのを見つけた。
この広々とした空間は、地下補完庫らしく、車両が十台は入れそうなほど広かった。
そして、他の場所へと続く道は三つ存在しており、何処に向かえば良いかと、ナタンは思案する。
一つ目の道は、帝国警察部隊が向かった、地上へと続く出口である。
二つ目の道は、悪臭が漂う下水道へと続く、できれば通りたくは無い道。
それから、最後の三つ目は怪物が潜んで居そうな雰囲気を醸し出している。
また、ここは不気味で静かな地下墳墓《カタコンベ》へと、続いている道だった。
「うーーむ? 通りたくは無いが下水道を通らねば、目的地まで辿り着け無く成ってしまったな…………」
「だが、隣のカタコンベからでも目的地には行けるぞ、まあ最終的にはどの道、下水道へと道は繋がっているがな」
いったい、どの道を選択しようかと、一人悩むウェストに対して、右からハキムは声をかけた。
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