【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

レジスタンスは今日も戦う
デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第107話 時間は再び今に…………

公開日時: 2024年7月10日(水) 09:50
更新日時: 2024年7月13日(土) 10:34
文字数:3,049


「てな、事もあったわね…………実は、アレが後の帝国軍の決起用に、用意されていた武器だとは思わなかったわ…………」


「灯台元暗しと言うか? 本当に戦争の準備をしていたとはね…………誰も気づく訳ないよ」


 過去の回想から現実へと戻ってきた、メルヴェは静かな部屋で呟く。


 彼女は、あの時に見つけた銃が、まさか帝国による侵略時に使用されるとは、と語る。



 ナタンも、溜め息混じりで、工場での出来事を語った。



 帝国が使用した、軍事用品だが、幾つかは、この星に多数ある民間・軍事工場で製造されていた。


 補給施設に改修施設と言った、後方基地も予め、進攻に備えて用意されていたのだ。



 それに加えて、もちろん民間人を兵士として、現地調達するための洗脳改造施設も準備されていた。


 さらに、軍・警察・憲兵隊などと言った、組織への離反工作も同時に行っていた。



「はぁ~~? 明日からは、本格的な襲撃任務だわ」


「一層、戦いが激しさを増すのか…………」


 もし、誰かが忍び寄る帝国の影に気がつき、一人でも声を上げていれば、今は平和になっていた。


 また、何らかの手段を講じていれば、ナタンとメルヴェ達も戦わずに済んだはずだ。



 だが、現実には誰も帝国を止められず、難民・移民の流入により、治安が急激に悪化した。


 それに因って、引き起こされた経済力の低下により、貧困層は増大。



 北アフレア・アラビ地域での終息が、決して着かない民族間・宗派間による戦争。


 環境破壊による、発展途上国での森林火災や大洪水など、自然災害が連続発生した。


 それらにより、力なく疫病と飢餓に倒れてしまう、か弱き人々。



 帝国による侵略は、最後の一撃となったが、それ以前から、既に世界は終わりを迎えていた。



「諦めないのよ…………アフレアからの援軍は必ず来るわっ! 私達は、やるべき事をやるの…………」


「諦めないさ、僕達は空を覆う、どんよりとした暗雲と、道路に積もった雪を跳ねるんだっ!」


 メルヴェは、前を向くと、瞳に燃え盛る炎の如き、強い意思を宿す。


 ナタンも、心に熱く決して、消え去る事の無い闘志を宿す。



 例え、帝国が強大であり、どれだけ戦力を保持していようとも、彼等は敗北しない。


 それは、絶対に降伏せず、最後まで必死に抵抗するからだ。



 そして、人々は決して諦めない。



 この彼等みたいに逞しく、帝国を打ち破り、民主政治による勝利を望んでいるからだ。


 また、市民たちは、春の訪れを取り戻すべく、微かな希望にすがりながら戦い抜いている。



「明日は決戦の日…………」


「覚悟は出来てるよ」


 メルヴェとナタン達は、明日の作戦が成功するように神に祈る。


 そして、レジスタンスと連合軍が、勝利して欲しいと天に願う。



「ふぅ…………ねぇ? 明日に備えて…………しない?」


「…………ああ、そうだね…………」


 メルヴェは恥ずかしげに視線を剃らして、ナタンの手を握り、静かに呟くと、彼もそれに同意した。

 

 二人は、暖かい毛布にくるまりみながら、互いの体を包み、そっと静かに唇をくっ付けあった。



「今日は、いよいよ襲撃作戦当日の日だ」


 薄暗いブリーフィングルームにて、スクリーンの前に立つ、レジスタンスリーダーは演説する。



「これより市内各所の帝国警察・帝国軍、及び関連施設を全て襲撃する…………各員、健闘を祈る」


 短く話を纏めた、レジスタンス・リーダーの言葉を聞いた、レジスタンス達。


 彼等は、一斉に席を立つと、それぞれ定められた部署に走ってゆく。



「ナタン、早くウェストの所に行きましょう」


「ああ、分かってるさ、今日この日をずっと待っていたからな」


 メルヴェとナタン達も、レジスタンス達に混じり、部屋から退出していく。


 そして、廊下を素早く走りながら、班長である、ウェストの待っている場所を目指す。



 しばらく、廊下を進み。曲がり角を左側に彼等の先は行き止まりだった。



「あ、やっぱり先に来ていたか…………」


「来るのが早すぎるのよ…………」


 そこで、背中を預けて立っている、ウェストが、ナタンとメルヴェ達の目に入った。



 彼の顔は、怪我をした見たいに、所々紅い血で汚れていたが。


 二人は、それを肉体改造による強化措置だと分かっていたので、気にしなかった。



「お前ら、早くしろ、他の連中は準備が出来てるんだっ!!」


「まだ六分前だわ、遅刻じゃないわよ」


「そうだぜ…………まだ充分時間はあるはずだ」


 渇を入れる、ウェストに対して、遅刻じゃないと、メルヴェは抗議する。


 彼女の強い口調に、ナタンも自分達は遅れてないと、同意するが。



「うるせぇっ! 帝国は俺達より何時も早く行動する、じゃあ俺達は奴等より、さらに先に動くだけだっ!」


 笑顔で白い歯を見せつける、ウェストは、行き止まりの壁を回転させて、二人を手招きする。



「さあ、お前らも、グダグダ言ってねぇで、着いてこい」


「分かってるわよ…………」


「着いて行くさ、行くに決まってる」


 ウェストの後に続く、メルヴェは飽きれ気味な顔で、ナタンは俄然やる気を出してついて行く。



「おっ! 遅いぞ、ナタン、メルヴェ」


「早くしないと、私達は置いてく所だったんだから」


「まぁ良いわ、行くわよ」


 そこで待っていた、ハルドルとレギナ達も、二人を見つけると、遅いと声をかけてくる。


 また、早く行こうと、ハーミアンは言ってから勝手に歩きだす。



 そこには、この間と同じく、ウェスト班である面々と、連合軍特殊コマンドに属する四人がいた。


 とくに、四人は、もう既に潜入するため、帝国警察隊員に変装していた。



「ああ、済まない」


「ごめんなさい」


「気にするな、皆が帝国に、一矢報いたいがために早く来すぎたのさ」


 謝るナタンとメルヴェ達に気にするなと優しい言葉をかけた、リュファスは笑顔で、二人に微笑む。



 その後、彼等は下水道を通り、地下道を進む。



 何処かの地下駐車場にまで出ると、そこに駐車してある、トラックとジープらしき車両に向かう。


 それは、鼠色に塗装された、旧ソブィエト連邦製である、ZILー157トラックがあった。


 もう一台の小型車両は、黒く塗装された、GAZー67ジープだった。



「さあ、お前ら、早く乗れっ! ここからが本格的な作戦なってくるからな」


「気を引き締めるんだぞ」


 ウェストとハキム達は、ZILー157トラックに乗り込む。


 そして、彼等が率いる、レジスタンス達は幌布の張られた、荷台に乗り込んだ。



「全員、乗ったな? では、出発だ」


 ギデオンが、指揮する連合軍コマンド達も、GAZー67ジープに素早く乗った。


 すると、早速発進させて、出入り口の緩やかな坂を登って出て行った。



 雪が散らつく、ビル群の合間を、二台前後に車列を作った、軍用車両は突き進む。


 そして、道路に積もった雪に、轍《わだち》を作りながら警察署を目指す。



「行ったね? まさか、敵が乗っているとは思ってないんだろうな」


「検問所で、偽造身分証が偽物だとバレない限り、大丈夫よっ!」


 どの帝国警察・帝国軍が使う、パトカー&軍用車両の対向車も、彼等が敵対勢力だとは気づかない。


 前方や後方から来る、それらの装甲車などは、ただ通り過ぎて、行くだけだった。



 ナタンとメルヴェ達は、幌が被せられた、荷台両脇にある座席から、並んで外を見ながら話し合う。


 帝国軍・帝国警察も、検問所の設置や各施設に抜き打ち検査を行っている。


 だが、それでも敵である、レジスタンス達を発見できず、完全に駆逐できてないのだ。



 そうこうしている内に、彼等はビル群から商業施設街へと向かい、それからホテル街を抜ける。



 そして、遂に、目的の要塞みたいに聳え立つ、鼠色に塗装された、警察署が見える距離まできた。

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