帝国軍は、もう直ぐ郵便局内から連合軍を追い出す、一歩手前にまで迫っていた。
その一角である廊下でも、双方は互いに銃口を向けあっていた。
「フラグだっ!」
「ここは通さないぞっ!」
「ぐああっ!」
「ぐわっ! が、ぐ?」
チィーナ軍兵士が、手榴弾を投下すると、帝国軍兵士は吹き飛ぶ。
自衛隊員が、89式自動小銃を連射しまくり、野戦帽を被るグールが倒す。
廊下の端である、ここにあった壁は、手榴弾を投げ合った事で、どちら側も無惨に破壊されていた。
「味方だ、撃つなっ!!」
「負傷者を運んでいるのっ!」
「動くなっ! 止まれっ!」
「帝国兵の変装だろう?」
ナタンとメルヴェ達は、味方の方へと走って行くが、信用して貰えない。
チィーナ軍兵士は、03式自動小銃を構えて、ナタンに照準を合わせる。
自衛隊員も、ミニミ分隊支援火器の二脚を、崩れた壁上に載せて、怒鳴り散らす。
「彼らは味方だ、撃たないでくれっ!」
「さっきまで、私達と一緒だったわ」
そこへ、リーシアンとユーシン達が現れて、二人が味方だと説明してくれた。
「本当にか? なら、早く来いっ!」
「後退するぞ、急げっ!」
チィーナ軍兵士や自衛隊員たちは、左側の部屋へと移動していく。
「有り難う、助かったよ」
「気にするな? それより、負傷者を運ぶぞ」
「さあ、その人をこちらに」
「分かったわ、」
ナタンとリーシアン達は、具合が悪そうな、ミゲルの肩を左右から支えて連れていく。
メルヴェとユーシン達も、真っ青な顔をした、カルロスを両側から持ち上げる。
「ウェン体長、負傷者が来ましたっ!」
「直ぐ、装甲車に載せろっ! そして、お前たちも戦闘配置に着けっ!」
チィーナ軍兵士が報告すると、ウェンはドラム弾倉を95式自動歩槍に装着しながら命令を出した。
「装甲車は、こっちだっ!」
「急げ、負傷者を搬送するっ!」
チィーナ軍兵士と自衛隊員が手を振りながら、ナタン達を誘導する。
そして、重傷者を載せた、カーキ色のパナールM3装甲車が、爆破された穴壁から出ていく。
「こっちだ、重傷者だな? 直ぐに連れていかないと」
「脚の負傷が酷いな、何発も喰らったな? こっちは腹部からの出血も多い、野戦病院へ搬送する」
連合軍兵士とマミー達が、ミゲルとカルロス達の症状を見て、後方に移送する事を決意する。
「うあ、済まない、戦線離脱する…………」
「後は頼んだぞ」
「任せておけっ!」
ミゲルとカルロス達が、ナタンに礼を言うと、後部ハッチが閉められて、パナールM3は発進する。
「ナタン、こっちもヤバいわっ!」
「敵部隊を押し留めているが、もう持たないっ!」
アイリーとチュー達が、必死で入口から侵入を試みる帝国軍兵士達を足止めする。
「私の幻影も、いつまで持つか…………」
「魔法で壁を作りますっ!」
「何か使えそうな物は? あった」
「メルヴェ、もうすぐ来るよっ!」
アイリーが呟くと、プーニーハットを被る、チィーナ軍兵士は、入口に氷壁を作り出す。
メルヴェは、山積みされた木箱の中から赤茶色に塗装された画材箱を、二個も見つける。
それを、彼女が開くと金ピカ装飾が施された、マウザーC96&ストックが入っていた。
さらに、下の箱には、予備弾薬を挟んだ、クリップが幾つか入っていた。
そして、フランシーヌが彼女を呼びながら、ストックレスAKを膝だちで構える。
「フランシーヌ、ここに居たのね?」
「ああ、負傷者の搬送を手伝っていたのさ」
メルヴェは、フランシーヌを見つけると、近付いていき、声をかけた。
確かに周りを見ると、他にも、シルビアとレジーヌ達が、この場に残っていた。
「氷壁が破壊されたぞっ! もう一回、作り出せっ!」
「何とか持ちこたえるんだっ!」
「我々が、最後の殿を勤めるんだっ!!」
「まだ、重傷者が居るわ、それまで持ちこたえて」
氷壁に、RPGー弾が当たってしまい、キラキラと白く輝いた、欠片が舞い散る。
そんな中、チィーナ軍兵士は、09式霰弾槍からタングステン散弾を放つ。
ウェンとタカヤマ達は、残り僅かな部隊員たちを鼓舞して、銃を撃ち続ける。
そこに、負傷者の腹部から、ピンセットで金属片を取り出した、サワカワが叫ぶ。
見ると、重傷を追った兵士達が、担架型テミスに載せられており、搬送作業が終わってなかった。
「帝国軍を、俺が押さえるっ!」
「俺も前に出るっ! 負傷者は、任せたぞっ!」
「隊長、タカヤマさん…………」
「チュー、私達も準備するわよっ!」
ウェンは、ポリタンクを何個も入口から投げつけて、室内に突入していき、タカヤマも後を追う。
その後、チューが見ている前で、床に火炎が広がった。
また、アイリーは、C4爆弾を床に設置し始めていた。
「よし、俺も設置は終わった…………任務完了だっ!」
「きゃあっ! あぐ、ぅ」
「ぐああああっ!」
「うぎゃっ!? があっ!」
「なっ!? ワン、貴様っ!!」
いきなり、ワンが左右の壁を爆破して、80式汎用機関銃を振り回して、凄まじい機銃掃射する。
それに、アイリーは撃たれてしまい、チィーナ軍兵士や自衛隊員も射殺される。
チューは、反撃しようと03式自動歩槍を撃ちまくるが、時既に遅かった。
「やろう、殺してやるっ!!」
「逃がすかっ!」
「はっ! 死んでたまるかっ!」
シルビアは、コルトM16、9ミリSMGを乱射させ、レジーヌは、MKR、SS20を撃つ。
しかし、ワンは発煙弾を、何個も転がしながら開いた右側の壁穴へと逃げていく。
それと、同時に帝国軍兵士たちが、室内に入り込んできた。
「敵を撃ち殺せっ!!」
「ぎゃあーー!!」
「細菌を喰らえっ!」
「ぐああっ!」
左右の壁穴から、ワラワラと大量に、敵部隊が突入してきた。
幸い、ワンが落とていった発煙弾の煙は、適当に投げられていた。
だから、ナタン達の視界を奪うほど、煙を出してはいない。
それに、素早く敵側に、味方の兵士達が投げた事で、これは何とかなった。
しかし、その隙を狙って、敵部隊は攻撃してきた。
帝国軍兵士は、自衛隊員にAK74の弾丸を大量に浴びせる。
バクテリエラー・ゾルダートは、細菌粘液を口から吐いて、チィーナ軍兵士を殺す。
「不味いわっ! ナタン、敵を押さえないとっ!」
「分かっている、ん? これを使えばっ!」
「もう、ヤバいわ………」
「シルビア、先に後退しなっ!」
メルヴェは、マウザーC96カービンを単発連射しまくった。
一方、ナタンは、レミントンM870散弾銃を見つけると直ぐに発砲した。
コルトM16、9ミリSMGの弾倉を交換しながら、シルビアは冷や汗をかく。
レジーヌは、MKR、SS20狙撃銃を撃ちながら、ボルトを引く。
「負傷兵か、確保しろっ!」
「させないわっ! 負傷者に手は出させないっ!」
帝国軍兵士が走ってくると、サワカワは直ぐさま、ミネベア拳銃を手に取り、発砲しまくる。
その間、重傷者を載せた担架型テミス部隊は、外に向かって、キャタピラを回し出す。
「邪魔をするなら死ねっ!」
「あぐっ! まだ、ぎゃっ!」
サワカワは、指揮官らしき、ヴァンパイアから、ワルサーPPKで胸を撃たれる。
さらに、立ちはだかる彼女に対して、次々と拳銃弾が撃ち込まれた。
「不味い、下がるよっ! フラッシュバンでも喰らいなっ!!」
フランシーヌは、閃光手榴弾を何個も投げて、敵を足留めしようとした。
「ぐわああーーーー!? 目があ~~~~!!」
「ぎゃああああっ!」
その効果は、絶大な威力を発揮して、帝国軍部隊は目が眩んでしまう。
「みんな、今の内だよ、走りなっ!!」
「分かった、うわっ!」
フランシーヌが叫ぶと、残り僅かな連合軍部隊は、外に逃げて行こうと走り出す。
そんな中、ナタンの側に、コロコロと音を立てて、手榴弾が転がってきた。
「危ないっ!?」
「ぐぅぅっ!」
フランシーヌは、ナタンを庇って彼を蹴飛ばした。
「フランシーヌ?」
「ナタン、行くわよっ!!」
フランシーヌの背中は真っ赤になり、ナタンに覆い被さるように死んでいた。
そして、メルヴェは、グズグズしていられないと、彼の襟首を掴んで立たせた。
「ナタン、確りして、脱出する時間よっ!」
「あ、ああ…………」
メルヴェの声を聞いて、我に帰った、ナタンは素早く走り出した。
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