【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

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デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第十五部 レジスタンス&連合軍の防衛戦

第230話 真夜中の反乱者たち

公開日時: 2024年7月12日(金) 11:57
更新日時: 2024年7月14日(日) 21:48
文字数:3,485


 数時間前、BNPビルを占拠する連合側部隊。



「静かになったな…………」


 敵の攻撃が止んだことで、返って不気味な雰囲気がビル内に漂う。


 そんな中、ナタンは緑色のプラスチックケースに腰掛け呟く。



「ナタン、次の攻撃は、何時始まるか分からないから?」


「それは、そうだね…………ん?」


 メルヴェが歩いて来ると、疲れきった表情で、ナタンに声をかけた。



「敵兵っ!」


「はっ!」


 ナタンはAK12を敵に向け、メルヴェは咄嗟にRDIストライカー12散弾銃を向ける。



「クスクスッ? 撃つなら速く撃て」


 そう言って、冷笑を浮かべる女性兵士の姿は明らかに帝国軍兵士だった。


 真っ白いサラサラなロングヘア&雪のような肌、そして瞳だけが黒い。



 しかも、服装は黒いマントを羽織っている。



 背中には、サプレッサー付きのSVー98狙撃銃を背負っていた。



「何処から来たっ! 答えろっ!」


「スパイねっ! 射殺するわよっ!」


「やれやれ…………」


 ナタンとメルヴェ達が怒鳴り散らすと、女性兵士は黒マントを脱ぐ。


 バサッと広げらた、マントの下からは白いスノースーツに黒点が付いた物が見えた。



「スパイか? コードネーム、ベリー・レパート…………確かに連合軍工作部隊の所属なんだがな?」


 ベリー・レパートと名乗った女性兵士は、そう答えながら弾薬が入った厚紙の箱を取ろうとする。



「あ、えと? 味方のスナイパーか?」


「だとしたら、ごめんなさい」


「気にしないでくれ、私の方も悪かった」


 ナタンとメルヴェ達は、味方だと分かると即座に銃を下げて謝罪した。


 対するベリー・レパードも、飄々としながら、SVー98用の弾丸を探しつつ答える。



「白い服装は冬季戦用、黒いマントは耐熱遮断フィルムさっ! ここは雪だらけだし、夜間はサーマルスコープで狙われるからね」


 そう言いつつ、ベリー・レパートは腰から取り出した、OTSー38リボルバーを振るう。



 そして、輪胴弾倉内に残った残弾数を確認する。



 彼女の服装では、唯一、手袋&コンバットブーツだけが灰白色《かいはいしょく》だった。



「ああ~~! コイツの弾丸は特別仕様だから無いんだよな? まあ、いいか」


 拳銃用の弾薬不足を気にすること無く、ベリー・レパートは呟いた。



「まあ、お二人さん…………さいなら」


「あ、またな?」


「またねっ?」


 別れの挨拶だけ告げると、ベリー・レパートは去っていった。


 ナタンとメルヴェ達は、彼女の後ろ姿を見送ると、二人して木箱に腰掛ける。



「スナイパーか? なら、納得だよな…………」


「どうだか、本当に帝国のスパイかも知れないわ」


 ナタンとメルヴェ達は、ボンヤリとしながらも、会話しながら辺りを見渡す。



 そこには、自分たちと同じように、ボヤく連合軍兵士とPMC要員の姿が見える。


 忙しそうに走る民兵や、弾薬箱を幾つも抱えて歩く、レジスタンス員たちも目に移る。



「負傷者だっ! 救急隊員を連れて来てくれっ!」


「う、うぐごああっ!!」


 白人民兵が、黒人PMC要員を背負いながら駆けてくる。



「これは酷い、直ぐに手当てをしますっ! 他に、マミーが居ないから私が治療を行いますっ!」


 白人民兵の背中で、黒人PMC要員が盛大に吐血すると、何処からか衛生兵が現れた。



 どうやら、彼女は東アシュア系のように見える。



「コイツは銃で腹を撃たれたんだ、早く助けてやってくれっ!」


「分かってますよ、これは5、45ミリ弾に内臓を殺られてますね」


 白人民兵は、黒人PMC要員を床に下ろすと、緑色の衣服をめくり上げる。


 衛生兵の女性兵士は、メスと麻酔を用意して、即座に手術を始めた。



「回復魔法じゃダメだわ、これから開腹手術を行いますっ! 貴方は他のマミー達を探してきてっ!」


「分かった、向かいのビルから探してくるっ!!」


 女性衛生兵は、白人民兵に指示を出しながら、黒人PMC要員の腹部に麻酔注射を打ち込む。


 腹を撃ち抜かれているだけならば、回復魔法をかければ済む。



 しかし、彼の場合は5、45ミリ弾が体内で軌道を変えて、内臓をズタズタに傷つけている。


 これは、大手術になりそうだと、ナタンとメルヴェ達は思った。



「大変だが、僕らにできる事は…………」


「無いわ、けど医薬品を探すくらいなら」


 ナタンとメルヴェ達は、山積みされた様々な箱やケース類から医薬品を探し始めた。


 そして、円に赤十字が描かれた小箱と輸血パックを、ようやく二人は見つけた。



「行こうっ! 彼を助けに行くんだっ!」


「そうしましょうっ!!」


 ナタンとメルヴェ達は、急いで救急箱や輸血パックを持って走っていく。


 行ったところで、実際には何の役にも立たないかも知れない。



 だが、それでも何もしないようかはマシだと、二人は思いながら真っ直ぐ向かってゆく。



「何発も、小口径弾に殺られたのね?」


 腹をメスで切って、女性衛生兵はAK74の弾丸を摘出していく。



「あのう、輸血パックとガーゼを?」


「これも、必要でしょう?」


「ありがとう、そこに置いといて…………」


 急いでやって来た、ナタンとメルヴェ達が医療品を提供すると、女性衛生兵は返事をするだけだ。


 彼女は、目の前で瀕死状態になっている重傷者を助けることに集中しているからだ。



「これ以上は、何もできなさそうだ」


「そうね、邪魔になるから下がりましょう」


 ナタンは衛生兵ではないので、専門的な外科手術となると、医療行為はできない。


 メルヴェも、同様に簡単な治療は施せても、重傷者を救う事は出来ない。



 黒髪をポニーテールに纏めた女性衛生兵は、ベージュ色の野戦服を着ている。


 脚には、ミネベア拳銃を緑色のレッグホルスターに入れていた。



「誰か、大勢でやってくるぞっ!」


「あれは…………」


「JADFと緊急展開部隊だっ!」


 チィーナ軍兵士と自衛隊員たちを見て、ナタンとメルヴェ達は凄くビックリした。


 何故なら、彼等は全身ズタボロであり、激戦から辛くも生き延びたのは間違いない。



 自衛隊員の負傷者に肩を貸しながら、チィーナ軍兵士は歩く。


 チィーナ軍の流血が酷い重傷者は、若い自衛隊員に背負われている。



「おいっ! 薫子《カオルコ》っ! 沢川《サワカワ》っ!」


 タカヤマは、大きな声で叫びながら、自らの部下達を引き連れて現れた。


 焦る彼は、若干混乱しているようで、女性衛生兵の名と姓を呼ぶ。



「分かっているわ、負傷者でしょう? そこに並べてちょうだいっ!」


 負傷者を見る暇なく、サワカワと言われた女性衛生兵は重傷者の治療を続ける。



「負傷者は、まだまだ来るっ! 機関砲や砲弾で殺られたんだっ!」


「軽傷者は後回し、今は重傷者が先決よっ!」


 タカヤマは疲れた顔をしながらも、より多くの負傷者が来ると報告する。


 サワカワは、動じることなく重傷者である黒人PMC要員の治療を続ける。



 メスで切り、ピンセットで弾丸を摘出しながら、彼女は額から汗を垂らす。


 その間にも、テミス・コンバット・UGVが続々と現れて、負傷者を運んでくる。



「おいっ! 衛生兵のマミーたちを連れてきたぞっ!」


「負傷者は何処だっ!」


「我々が治療を行う、もう安心だ」


 さっき走って行った、白人民兵が紅い眼をした、衛生兵チームを連れてきた。



 一人は、灰色のヘルメットに白丸と赤十字が描かれた物を被る。


 そして、ウッドランド迷彩服の袖にも、白い腕章と赤十字が描かれていた。



 顔や手は、緑色とベージュ色の包帯が巻かれており、目元までしか見えない。



 もう一人も、ウッドランド迷彩服の上に、従軍司祭が着ける黄緑色に染色された、ストラを垂らす。



 首から下げられた、ストラには緑色の十字架が描かれている。


 こちらも、口や手首に、緑色とベージュの包帯を巻いていた。



「他の負傷者は任せたわっ! 全弾摘出完了、後は縫合して回復魔法をかけるわ」


「ソイツは、もう大丈夫なのか?」


 サワカワは、仕事を終えて一安心したらしく、深く息を吸い込んだ後、大きな溜め息を吐いた。


 手術が終わっても、重傷者の苦し気な表情で眠っている様子が、タカヤマは気になった。



「一応、彼も改造手術を受けた、コープス・ソルジャー見たいね? だけど、二日は安静にしてなきゃダメね…………」


「他の連中も、コープス・ソルジャーとかだが、大丈夫か?」


 戦いで、重傷者が多数続出したことで、サワカワは次の重傷者へと走る。


 タカヤマは、自身の部下やチィーナ軍兵士たちを見て、死なないで欲しいと願っていた。



「さあ、私は最善を尽くすけど、どうなるかは…………」


 サワカワは、重傷者の脇腹に麻酔注射を打ちながら呟く。



「かなり、大変そうだ」


「それだけ、敵も本気を出してきたのよ」


 ナタンとメルヴェ達は、次々に運ばれてくる負傷者と衛生兵マミーらを眺めて呟く。


 だが、二人は日が昇り始めた頃、帝国軍が攻めて来る事を知らなかった。

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