大聖堂内を死守していた、連合軍部隊は撤退していき、ナタンだけが残された。
そして、相変わらず空を飛ぶ、Mi17からは、AGSー30自動擲弾銃から榴弾が放たれる。
「しつこい奴らだっ!」
ナタンは、レミントンM870で撃ち返すが、もちろん大型ヘリが落ちる訳がない。
そして、ファストロープで、大聖堂の屋根に帝国軍・特殊部隊が下ろされる。
彼に、その様子は見えないが、敵は窓ガラスを割って内部に侵入してきた。
「うわっ! 奇襲かっ! 弾切れっ! なら…………」
「奴は一人だっ!」
ナタンは、レミントンM870を捨てると、腰から両手で、MASー1935を取り出す。
銀色の二丁拳銃で、彼は帝国軍・特殊部隊を撃ちまくる。
「ぐわっ! ぐ、がっ!」
「残り、一人だっ!」
「奴は、死に体だ、このまま押せっ!」
特殊部隊員は、ナタンの肩や腕を撃ち抜くが、彼は素早く、右にある石柱へと逃げ込む。
防弾兵は、MP5を連射しまくり、グールはMP5SDを撃つ。
「ここからなら…………」
「うぎゃっ!」
「ぐわっ!!」
ナタンは伏せながら、特殊部隊員の脚を、どんどん射撃していく。
柱の陰から連射されて、防弾兵は床に倒れてしまう。
グールも、彼から、脚を撃たれたことで転んでしまう。
「フラグだっ!」
「まずい、なら投げ返すだけだっ! そして、撃つっ!」
手榴弾を投げてきた、帝国兵に対して、ナタンは反撃する。
投げ返すと言いながら、思いっきり蹴っ飛ばし、次いで、MASー1935を撃ちまくる。
「うわあっ! 手榴弾がっ! ぐわっ!」
「回り込んでいたのに気づいたか? 間抜け」
「気づいて無くても対処するさっ!」
手榴弾に気を取られた帝国兵を、ナタンは拳銃弾で射殺した。
だが、今度は無防備なワーウルフに背後を取られた。
「これで、終わりだっ!」
「ぐう~~? だが、お前は動けないだろう?」
ナタンの背中を深々と、サバイバルナイフが突き刺すが、彼は動じない。
「これでも、喰らえっ!」
「ごあっ!」
ワーウルフに、後頭部で頭突きを食らわせた、ナタンは体を回して、奴を盾にする。
「撃ち殺せっ!」
「射殺してやるっ!」
「ま、待てっ!」
グール&バクテリエラー・ゾルダート達は、毒ガスと細菌粘液を吐きながら攻撃してきた。
もちろん、ナタンから離れた、ワーウルフは床に伏せる。
「お返しだっ!」
「うぐ…………」
グール&バクテリエラー・ゾルダート達は、AK74とM4A1を連射してきた。
その間に、ナタンは科学攻撃と銃撃を避けるために、背中を丸めて走っていく。
また、自身から引き抜いた、サバイバルナイフを、ワーウルフに投げつけた。
こうして、奴の頭に深々と刃が突き刺さり、仕留める事に成功する。
残る敵も、奴の死体からMP7を奪い取り、乱射しまくって倒す。
「ぐわあっ!?」
「ぐええーー!」
残る二人を倒した、ナタンは一人で帝国兵を撃退する。
「ふぅ…………」
MP7を床に起きながら、ナタンは溜め息を吐きながら、再び祭壇に座る。
しかし、第二陣が迫っているらしく、天上から、ファストロープと蔦が伸びてきた。
迫る帝国軍部隊を前に、MASー1935を両手に握り、彼は立ち上がった。
「俺は、最後の人間だぞっ!」
そう叫んだ彼だったが、自身の一番近くにある、ファストロープに早歩きで向かう。
すでに、大量に出血している彼は、額から汗を垂らしながら歩く。
その途上、ワーウルフから電動ウィンチを剥ぎ取り、敵が使った、ファストロープを上がっていく。
「奴が上に行ったぞっ!」
「撃ち殺すんだっ!!」
「逃がすなーー!? 追えっ!」
「機銃を撃ちまくれっ!!」
屋根へと上がる、ナタンを狙って、MP5SDをドライアドは何発も撃ちまくる。
別なドライアドも、両手に握るMP5SDで、ナタンを狙い撃つ。
入口から侵入してきた、シュヴァルツ・リッターも、ドラムマガジン付きAK74Mを連射する。
防弾兵も、MG3汎用機関銃を斜め上に向けて、凄まじく乱射しまくった。
「よし」
しかし、ナタンに攻撃が当たる事はなく、彼は天上付近の窓から外に逃げていく。
そして、屋上に出たばかりの彼は、赤い弾丸を込めた、信号拳銃を撃とうと空に銃口を向けた。
「赤は爆撃だな?」
「させないよ、ガルム?」
引き金に指を掛けた途端、いきなり、ナタンは左肩を撃たれた。
周囲は、シャスポー銃を構える、フロスト中尉が率いる第二小隊が展開している。
「ランボー、周辺を見てみろ? 二千丁を超えるAK12が君を狙っているんだぞっ!」
「黙れ、アンタは恩師じゃないし、トラウトマン大佐でもないっ!」
フロスト中尉は、サンミッシェル大聖堂を囲む地上部隊を指差す。
ナタンは肩を押さえながら、彼に憎悪の眼差しを向けつつ答える。
「上空を見ろ、ヘリスナイパーも展開しているっ! 戦闘輸送ヘリも先程から爆撃していただろう?」
NH90TTHヘリからは、宙から垂らされたベルトに、F1A2狙撃銃をミネットは載せている。
Mi17からも、SAGー30自動擲弾銃が、大聖堂の屋上に向けられている。
フロスト中尉が言う通り、空には敵航空機が大聖堂を包囲するように飛んでいる。
「それに、ホラ? 彼女も一緒だ」
「ナタン、ごめんなさい、捕まっちゃったわ」
フロスト中尉は、レオとカルミーネ達に、メルヴェを連れて来させた。
「…………ナタン、諦めろ、もう遊びは終わりだ」
「メルヴェも捕虜になった今、君に戦う理由はないはずだ」
「ナタン君、ご苦労様~~?」
「ナタン、ガキの遊びは大人になったら出来ないのよ」
レオとカルミーネ達は、ナタンを説得しようと試みた。
また、背後からは、ミアとベーリット達が近づいて来る。
「うるさいっ!」
ナタンは躊躇なく、フロストを撃とうとするが、逆に、メルヴェから右手を撃たれた。
なぜだと思う、彼を前に、彼女は静かに語りだす。
「何故って、思っているでしょう…………ナタン、私達の任務は終わったのよ」
「メルヴェの潜入工作を、サポート&護衛するのか君の任務だったのさ?」
「は? そんなの嘘だ…………」
自身をスパイだったと告げる、メルヴェとフロスト中尉たちに、ナタンは愕然とする。
「君は自分が、ただのレジスタンスだと思っていたのかい? 今まで負傷しても気にもせず、戦い続け、どんな状況下でも諦めなかった…………さらに、無謀な突撃すら望んで敢行しただろう?」
「それは…………俺は歴戦のレジスタンスだからだっ!!」
フロスト中尉は、黒渕眼鏡をずらしながら嗤いつつ語るが、ナタンは彼に怒鳴り返す。
「ナタン、安心しなさい」
落胆して、座り込む彼に、メルヴェは近づいていき、ラップトップの映像を見せる。
『やあ、ナタン? コードネーム、ガルムだ…………これを見ていると言う事は、任務完了したんだな? もう、いい充分に休憩するんだ』
「やめろ、よせっ! トータル・リコールの真似かっ!」
ナタンは耳を塞ぐが、画面内のガルムを名乗る工作員は喋ることを止めない。
メルヴェは、ボリュームを上げた上に、彼の前にラップトップを置く。
「ナタン? 言え、ガルム…………任務は無事達成したの? これからは、帝国の統治下で、ずっと一緒に暮らせるのよ」
『では、記憶を呼び起こす、コードを話そう? 007&シャルルマーニュ』
そして、メルヴェは耳元で囁きながら、ナタンを誘惑する。
ガルムは画面内から、遂に記憶を呼び起こすコードを言ってしまった。
「う…………」
その瞬間、ナタンから表情が消えてしまい、過去を全て思い出す。
帝国に捕まり、改造手術を受けた事。
射撃訓練で、フロスト中尉から、MASー1935を受け取った事を。
最終的に、彼の顔は冷淡で軽薄な笑みを浮かべるようになり、全てを思い出した。
こうして、彼は帝国警察隊員へと戻ったのだった。
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