警察隊員たちは、強引に罠を解除しつつ前へと進む。
「カルミーネ? ベーリット?」
そんな中、後ろの方から、レオが声をかけてきた。
「レオ? どうしたんだい?」
「うわっ!」
「ベーリット、驚くなよ…………ここからは再び、ソムサック、シェラ達を前に出す」
「あと、オルツィには幻影で兵士の数を増やして貰うわ」
カルミーネは、ワーウルフなので背後から聞こえた足音に気づいていた。
一方、ベーリットは前方に集中していたため、かなり驚いた。
そんな彼女に、レオも逆に焦ってしまったが、気を取り直して、侵入作戦の説明を始めた。
ミアも、オルツィを前に出すことで幻影により、敵を人数が多い部隊だと騙そうと考えた。
「オルツィ、幻影を頼めるからしら?」
「任せて下さい、今作りましょう」
「ソムサック、シェラ、そんな訳で前衛を頼むっ!」
「分かってるぜ、敵が出てきたら、ぶん殴ってやるよ」
「了解です」
ミアの指示に従い、オルツィは幻影魔術により、モザイク壁を作り出した。
その中から、ゾロゾロと帝国軍兵士が現れる。
レオは、楯役《タンク》として、防弾鎧を着ている二人に最前列を任せた。
ソムサックは右腕を振り回し、シェラは細剣フルーレを鞘から抜く。
こうして、二人を前衛とした陣形で警察部隊は、奥へと進んでいった。
「静かだ…………しかし、何処かに罠が仕掛けてある可能性がある」
「敵部隊も、おそらく潜んでいるだろうし?」
ソムサックは、両腕を前に出し、トンファー型武器ダンを握りながら歩く。
オルツィも、湾刀テグハを、二刀流で持ちながら敵に警戒しつつ移動する。
もちろん、彼女は幻影により作られた、多数の帝国歩兵たちを自身より前に歩かせている。
そうして、ビルの奥へと通路を彼らは進んでいき、楕円形ビルに繋がる入口にまで来た。
「うわっ!?」
「攻撃…………」
「うぎゃっ!!」
「ぐわわっ!?」
ガツンガツンッと金属音が、ソムサックとシェラ達を襲う。
ここには、センサー式のクロスボウが、大量に仕掛けてあった。
しかし、この奇襲攻撃は、防弾鎧に身を包まれた、彼等には効かない。
しかも、二人とともに歩いていた帝国兵は、幻影なので、消えはしても死にはしない。
「今だっ! 奇襲開始っ!」
「うらっ!!」
「撃てっ! 奴らを殲滅するんだっ!」
「射撃する、援護を頼む」
クロスボウを民兵が射ってくると同時、弓から火矢が飛ばされる。
その次に、自動小銃や軽機関銃による攻撃が一気に始まる。
「やっぱり、敵が出てきたか?」
「待ち伏せ…………」
「皆さん、ここは私の幻影で対処しますっ! 今のうちに遮蔽物へっ!」
「それは、私に任せてっ!」
「火矢じゃなければ、私も蔦木楯を作るんだけどっ?」
火矢と機銃弾を真っ向から受けながらも、ソムサックは両腕から短機関銃を牽制のため乱射する。
シェラも、XM8の弾倉を片手で撃ちまくり、弾が空になると、ドラムマガジンに取り替える。
幻影兵士を作りまくり、彼方此方《あちらこちら》に銃を撃たせながら走らせる、オルツィ。
そんな彼女の前に出て、シモーネは氷壁を作って、銃撃を防御する。
その左側に隠れた、ミネットは小型拳銃ル・フランセ・ミリタリーを発砲する。
「敵は、分隊規模だっ! RPGーで吹き飛ばしてやれっ!」
「ダネルを持った奴はっ?」
「どこ行ったんだ?」
「ここだ、今撃ちまくるっ!」
褐色ラテン系PMCが、RPGー7を発射すると、黒人レジスタンス員は叫ぶ。
それを聞いて、事務机の裏からPPS短機関銃を撃ちまくる、白人民兵が呟く。
ダネルMGLを持った、連合軍兵士はグレネード弾を次々と発射してきた。
「わわわわっ! 敵は火力が高すぎんだろっ!」
「こっちは室内戦を想定してたから火力の高い武器は無いわよっ!」
「RPGと汎用機関銃が欲しいよっ!」
レオは焦りながらも、H&K、UMP短機関銃を頭上に掲げつつ撃ちまくって、左側に走ってゆく。
こうして、事務机や隔て板の裏側を移動する。
その動きは、情けないように見えるが、味方に注意が向かないようにしているワケだ。
ミアは、近くにあった事務机に身を隠しつつ、MPiーAKー74Nの照準を覗きながら敵を撃つ。
カルミーネは、隔て板の下で伏せながら、芋虫みたいに床を這う。
「ヴラウリオ、イェスパー、ベーリット、右から行くわよっ!」
「分かったわ、でも今は援護するからっ!」
「俺たちは先に進むぞっ!」
「回り込んで、攻撃だ」
レギナは、左側の黒マントを翻しながら素早く走っていく。
それを援護するべく、ベーリットはAGー3を単発射撃で敵を撃ってゆく。
ヴラウリオは、身を屈めながら慎重に遮蔽物の裏を進んでいく。
イェスパーも、一気に疾走しながら事務机から隔て板の間を走り抜けていく。
「敵を発見した、攻撃集中だっ!」
「援軍だっ! 敵はどこに居る?」
「火力で押しきれっ!!」
「ワータイガーの登場だっ!!」
ZBー26軽機関銃を、白人民兵は連射させてきた。
さらに、増援として現れた、グリーン・シュヴァリエは、ミニミ分隊支援火器を乱射し始めた。
顔を緑色のバラクラバで隠した、民兵はRPGー7を発射する。
それは、イェスパーやヴラウリオ達が隠れていた事務机を吹き飛ばす。
戦場に現れた、ワータイガーは、ブローニングオート5を乱射して散弾を放ちまくる。
「ぐうぅぅ!? 破片が刺さった? こんな物っ!!」
「今、回復魔法を掛けてやる、待ってろ」
RPGー7から放たれた弾頭は、事務机を粉々に破壊したが、イェスパーの左肩に破片が刺さった。
彼は、それを自分の右手で引き抜くと、ヴラウリオから回復魔法を掛けられた。
それにより、傷口は塞がった事で、また戦線復帰できるようになった。
「氷を分厚くしてるけど、限界だわっ!」
「私の幻影も、何とか注意を惹き付けてますが、RPGー弾は流石に氷壁を…………」
「分かったわ、私も移動する」
シモーネは、銃撃を受ける度に氷壁を分厚くし続けていたが、限界も近い。
今受けている弾丸の中には、強力な物も混じり、しかもRPGー弾やグレネード弾が付近に当たる。
その爆風を受ける度に、氷壁全体に亀裂ができてゆく。
オルツィも、彼女の真後ろで幻影兵士を量産していたが、冷静に防護氷壁は限界が近いと悟る。
そんな中、ミネットは即座に転がりながら左側のコピー機に隠れた。
「今よ、二人ともっ! 私の囮《デコイ》が機能している間にっ!」
「あそこだっ!」
「RPGーを撃ちまくれっ!」
「ダネルもだっ!!」
ドライアドである、ミネットは事務机や隔て板の上から蔦で分身を作りまくる。
それに気を取られた、民兵や連合軍兵士たちは、RPGー7やダネルMGLを派手に撃ちまくった。
ドンドンと遮蔽物が破壊されていくが、それらから頭を出しているのは、蔦でできた囮《デコイ》だ。
「今よって、待ってて、今すぐ行くから…………」
「私は、モザイクをっ!」
氷壁が破られる前に、シモーネは火炎魔法を右から左へと放射して、炎のカーテンを作った。
それと合わせて、オルツィも隔て板に隠れたあと、すぐ敵の眼前にモザイクを出現させた。
「うわっ! 何だ、炎で敵が見えないっ!」
「モザイクも邪魔だっ!」
黒人PMC要員は、敵側付近に現れた炎の壁に、M4A1を乱射しながら驚きつつ叫ぶ。
グリーン・シュヴァリエも、目の前に現れた虹色モザイクを邪魔がる。
「シモーネ、こっち、こっち…………今、敵は慌ててるでしょ? だから私と貴女で合わせ技を放つわ」
「は? いったい、どんな?」
ベーリットは、シモーネを手招きすると、互いの連携により、合わせ技を放つと言いだした。
「まあ、それはね…………」
ベーリットは、遮蔽物の裏から敵を観察しながら呟く。
こうして、彼女は思い付いた策謀を放つ準備を行うのであった。
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