連合側が陣取るビル内に、帝国側の部隊が、一気に強行突入してきた。
「ヤバいぞ、連中が上にまで来てしまうっ!」
「そうなったら、私達は終わりよっ!? 何とかしないとっ!!」
慌てて、後ろに振り向き、部屋内に帝国軍兵士が来るかも知れないと、ナタンはAK12を構える。
メルヴェも、イエローボーイを木箱に置くと、RDIストライカーを握り締める。
「あら? あんたら、まだ生きてたのね?」
「ベリー?」
「レパード…………」
飄々とした雰囲気で現れた、ベリー・レパードは、右肩にSVー98狙撃銃を担いでいた。
「それより、呑気な事は言ってられな…………」
「大丈夫、ここはパブロフの家よっ?」
「パブロフの家?」
慌てて、敵の侵入を伝えようとするナタンに対して、ベリー・レパードは笑顔を見せた。
そして、メルヴェは不思議そうな顔をしながら呟いたのだった。
「あ~~? スターリングラード、史上最大の戦いって、知ってるかしら?」
「あん、あっ! そう言う事かっ!」
「えっ? どう言う事なの…………」
ベリー・レパードの説明に、ナタンは納得したが、メルヴェは腑に落ちない。
「つまり、ここは罠だらけって、事だっ!」
「味方は作動しないけど、帝国兵は死ぬわ」
ナタンは、建物内に仕掛けられた数々の罠が、帝国兵を待ち構えている事を、メルヴェに教える。
ベリー・レパードも、また飄々とした何食わぬ顔で歩きだした。
「じゃあ、私はベルビュー博物館の方に行くから~~」
「向こう側も、敵が居るのか?」
「ぎゃああああっ!」
「ぐわっ!?」
そう言って、立ち去ろうとする、ベリー・レパードに、ナタンは行き先の様子を聞こうとした。
しかし、階下から急に、帝国軍兵士の悲鳴や爆風で吹き飛んでしまった音が鳴り渡る。
「彼女が仕掛けた罠ね?」
「それに、銃声もするっ!」
「お前ら、下の戦いは味方に任せておけっ!」
ナタンとメルヴェ達を、ウェンは叱りながらも、灯油缶と火炎瓶を、ビル外に投下した。
それは、フレッチャ歩兵戦闘車を炎上させて、車内から、戦車兵や歩兵たちが逃げ出してくる。
「ぐああああ~~~~?」
「ぎゃあああああっ!?」
燃え盛る火炎と発火した灯油で、戦車兵たちは車上から転がり落ちる。
「味方の対戦車兵は、まだ来ないのかっ!」
「隊長、正面からTー90、いや、アレは更に大きいっ!」
「何だか分かりませんが、大型戦車が来ますっ!」
ウェンは、階下に迫らんとする公園内の塹壕から銃撃してくる敵に、猛烈な射撃を浴びせる。
その最中、88式汎用機関銃を撃っていた、ワンは敵が機甲部隊を突撃させてくる姿を見た。
チューも、敵がTー90Mプラルィブよりも黒くて、大きい車体に注目する。
「アレは…………Tー95チョールヌイ・オリョールだっ! ゲームでしか見た事がない試作機だ」
「帝国は、正式採用したのよっ!」
ナタンは、Tー95の部隊を見て叫び、メルヴェは木箱に、RDIストライカーを置く。
三両からなる戦車部隊は、連邦政府庁舎の方から侵攻してきた。
「どっちにしろ、アレは味方が撃破してくれると良いが…………」
「ウェン隊長、我々が援軍に来ましたぞっ!」
「隊長、バロン・オルタ通りの敵は、狙撃し終えました」
95式自動歩槍の弾倉を装填しつつ、崩落した壁から離れて屈んで、敵を見据えていた。
タカヤマとアイリー達が現れて、他にも緊急展開部隊と自衛隊員らが、続々と部屋に入ってきた。
「二人とも、正面から戦車が来ているがっ!」
「うわっ! 伏せろっ!」
「砲撃だわっ!! きゃあっ!?」
ウェン隊長が、二人に警告すると同時、彼方此方《あちらこちら》の屋根や壁面が爆発する。
真正面から見ると、半月型に見える、爆発物反応装甲を装着した、Tー95が砲撃してきたのだ。
重戦車による砲弾の嵐を受けて、建物が激しく揺れ動き、タカヤマとアイリー達は、怯んでしまう。
それでも、果敢なチィーナ兵と自衛隊員たちは、対戦車用の武器や兵器を使用する。
「カール君だっ! 喰らっておけっ!」
「HJー8の設置完了」
「ジャベリン部隊や機甲部隊が到着するまで持ちこたえるぞっ!」
「ランチャーでも、当たりなっ!」
自衛隊員が、カールグスタフ無反動砲を肩に担いで、一発弾頭を放った。
その後ろでは、チィーナ軍兵士たちが、対戦車ミサイルであるHJー8を設置している。
171式重機関銃の二脚を、窓際に置いた、チィーナ軍機関銃手は機銃掃射しまくった。
69式火箭筒を、構えたチィーナ軍砲撃手は、下方に弾頭を放つ。
「ぐわああっ!!」
「があっ!?」
「うわ、ぎ、げっ!」
「ぐううううっ!」
カールグスタフ無反動砲から放たれた、弾頭は見事に、Tー95の砲塔正面に命中した。
しかし、爆発物反応装甲が吹き飛んだだけで、砲塔本体は、未だ無傷のままだった。
171式重機関銃は、公園内に張り巡らされた、塹壕を走る帝国軍兵士たちを蹴散らす。
また、近づき過ぎた、オーガー&シュヴァルツ・リッター達も、機銃掃射や69式の砲撃に倒れる。
いくら、装甲兵と言えども、この距離なら1、27ミリ弾に防弾装甲を貫かれてしまう。
「すごい勢いだっ! しかし、まだまだ敵は来るぞっ!!」
「下から走って来るわっ! 何とかしないとっ!」
ナタンは、塹壕内を通り抜ける帝国軍部隊を目にしながら、奴等にAK12を単発連射する。
メルヴェも、イエローボーイを公園に向かって、猛連射しまくる。
戦車砲や機関砲による、総攻撃は未だ止まず、Tー95部隊も真っ向から向かってくる。
その時、空から銀色に光る何かが飛んできた。
「敵のミサイルだっ! 総員退避っ!」
「間に合わんっ! 伏せるんだっ!」
ウェンとタカヤマ達は、叫び声を上げながら銀色に光る物体を恐れた。
だが、銀色に光る物体は、連合側を攻撃しなかった。
「うわっ?」
「うぐぅーー!!」
「が、ぐっ!」
その正体は、ロシャ製、民間プロペラ機である、Suー31だった。
急降下した機体は、左右両側に備えた、AGSー30自動擲弾銃を機銃掃射するように撃ってきた。
この爆撃により、Tー95部隊と帝国軍歩兵部隊が、空爆に曝されてしまう。
次々と、爆炎と土煙を上げる公園の中では、歩兵や装甲兵が炎に包まれた。
そして、Tー95自体に取り付けられた、爆発物反応装甲も、幾つか吹き飛んだ。
「味方機か? 郊外から低空で飛んできたんだなっ!」
「ナタン、それより、アレを見てっ!」
機体下部から緑色の毒ガスが噴出しつつ、ブリュッセル王宮に、Suー31は飛んでいく。
ナタンとメルヴェ達は、それを眺めていたが、下から来る帝国兵たちに気を向ける。
「皆さんっ! ここは、私に任せて下さいっ!!」
「はっ? 幻影を展開するんだなっ!」
「味方部隊も、押されてるっ! 頼んだわよっ!」
「俺は…………その間に」
アイリーは、191式自動歩槍を構えつつ、単発で次から次へと、敵歩兵を仕留めていく。
ナタンとメルヴェ達は、彼女が幻術を使って、偽者の兵士を作ろうとしている事に気づいた。
一方、チューはHJー8の砲身をロワ通りに展開しているBMPー3歩兵戦闘車に向けた。
「やった、撃破したぞっ!」
「だが、まだ一両だけ残っているぞ、気を抜くなっ!」
「残りも、完全破壊しろっ!」
チューの一撃を見ても、ワンは喜ばずに88式汎用機関銃を撃ちまくる。
ウェンも、95式自動歩槍を床に置いて、背後の壁際に立たせた、87式自动榴弹发射器を取る。
こうして、東側から攻めてきた、帝国軍装甲擲弾兵師団を相手に、連合軍部隊は苦戦するのだった。
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