ヘルメット&バイザーを被せられた、フィーンはブルブルと身悶えしながら暴れる。
しかし、彼女を縛りつけている拘束具が外れる事は決してない。
「あふっ♡ はぁん♡ もう、だめ~~♡」
今、フィーンは大量の快楽情報を、直接脳内に流し困れている。
「全く…………いったい、どんな夢を見ているのやら?」
「はひっ♡」
フロストは、体を小刻みに震わせる、フィーンの頬を優しく撫でた。
「さて、僕も夢の中に行きますかっ! っと?」
フロストは、脇にあったパイプ椅子に座ると、自らも洗脳用バイザーを装着する。
こうして、彼も機械内部に構築された、ゲーム世界へと、ダイブするのであった。
「ここは? それに、私の格好は…………」
フィーンは、先程まで体中を擽《くすぐ》られるような快感に身を委ねていた。
しかし、今は眼前に、かなり広大な雪景色が広がっているのだ。
「これは、黒い軍服?」
左右の手を交互に動かしながら、白い軍手&黒い両袖などを見て驚く、フィーン。
さらには、地面を見ると、氷に映る自分が、なぜか軍人のような姿をしていた。
どう言うわけか、真っ黒な軍服コートみたいな婦人用軍服を着ている。
下には、黒いタイト・スカートを、脚には、黒いストッキングを履いている。
また、靴も青いボタン・アップブーツを履いていた。
しかも、頭は青色になっており、右斜めに傾けた黒い略帽を被っている。
「フィーン、とても似合っているよ? その姿は」
「フロストッ! 貴方って、人はっ!」
いきなり現れた、フロスト中尉に対して、フィーンは詰め寄るが、そこに敵が現れた。
「貴方は、最低なっ! うわっ! なに? なにが起きてるの?」
「フィーン、敵が攻めて来たんだよ? 僕達は警察隊員であり教師でもあるっ! だから、彼等のために戦わなくちゃ成らない」
フィーンは、左側から受けた銃撃が頬を掠めていくのに驚いてしまう。
しかし、冷静なフロスト中尉は、すぐさま地面に転がり、MABモデルD拳銃を発砲する。
「彼等って…………!?」
フィーンは、彼等が誰か訳も分からず、混乱していたが、後ろに眼を配ると即座に理解できた。
「先生、俺達を助けてくれ~~~~!!」
「このままじゃ、私達が死んじゃうわっ!」
「まずい、奴らが来ているっ!」
「いやーー! フィーン先生、助けてーー!」
背後の墓場に囲まれた、教会では、窓から生徒達が泣き叫んでいる姿が見えた。
ナタン・メルヴェ・レオ・ミア達が、自分の名を呼んでいるのだ。
「フィーン、これをっ! 子供達を守るためだっ!」
「なっ! これは…………」
フロストは、ファイブセブン拳銃を、フィーンに向かって投げ渡す。
「身を低くするんだ、じゃなきゃ撃たれてしまう」
膝立ちとなった、フロスト中尉はMABモデルDを、白い服装の敵に向かって撃ちまくる。
「いやよ、こんな物…………」
「ぐわっ! 撃たれたあーー!」
「きゃああっ!」
フィーンは、困惑しながら棒立ちになってしまったが、そこに声が聞こえてきた。
カルミーネとレギナ達に、銃弾が命中してしまい、二人が負傷したのだ。
「ああっ! 二人とも、大丈夫なのっ!」
「フィーン先生、カルミーネは肩を撃たれただけだ…………」
「レギナも、頬を弾丸が掠めただけで、体は無事よっ!」
フィーンは、子供たちを心配しながら叫ぶが、キーランとベーリット達が、それに返事をした。
「ああ、良かったわっ! わわっ! 何だってのよっ!」
「フィーン、ここは危ない、墓場まで戻ろうっ! 墓石を楯に使うんだっ!」
子供たちが生きていると分かって、フィーンは安心したが、まだ敵は執拗に銃撃してきた。
そんな中、フロスト中尉は彼女に向かって叫び、自らは立ち上がりながら拳銃を撃ちまくる。
「貴方の命令なんか、聞かないわよっ!」
「でも、子供たちを守れるのは君だけだっ!!」
フィーンは、フロスト中尉の命令に対して、彼に従う義務はないと反抗する。
だが、彼の言う通り、白服を着ている敵部隊は、自分たちや教会に段々と近づいてくる。
「仕方ないわねっ! 子供たちを守るためだからねっ! 貴方の命令に従う気はないわよっ!」
「それでいいっ! だから、君は下がってくれっ!」
フィーンは、フロスト中尉による援護射撃の元、墓石まで走っていく。
その間も、白服を着た敵兵士によるAK47やM16から放たれる銃弾は途切れなく発射される。
「何なのよ、もうっ! バーで飲んでいたら、拘束されるしっ! いきなり、今度は戦場のど真ん中だしっ!」
教会を囲む、木製の柵を飛び越えた、フィーンは近くにあった、墓石へと身を隠す。
それから、敵を観察しようと頭だけを少しだけ出して、敵の様子を伺う。
「フィーン、銃を撃つんだっ! 敵が多すぎるっ! このままでは、子供たちが殺られてしまうっ!」
「言われなくても…………?」
フロスト中尉は、墓石に隠れながら、何発か発砲しつつ叫ぶ。
対する、フィーンも、ファイブセブンを両手で握り、安全装置を切り替える。
また、チェッカリングをして、弾丸が薬室に入っているか確かめる。
しかし、彼女は本物の銃を撃ったことがない自分が、なぜ拳銃を操作できるか分からなかった。
もちろん、これは洗脳マシンが彼女に使用方法を直接脳内に送り込んでいるから理解できたのだ。
「包囲しろっ! 白人だっ!」
「差別主義者めっ!」
白服の敵兵たちは、どうやら黒人や黄色人らしく、徐々に迫ってきている。
しかも、彼等は自分たちに、敵意と憎悪を抱いているらしく、とても危険な集団だと判断できる。
「死ねっ! ぐわっ!」
「このやろうっ! がぁ?」
フィーンが撃った弾丸は、連中の頭や胸を貫いていき、簡単に殺傷してしまう。
『…………本当は銃なんて、握るのすら嫌だわ? だけど、今戦えるのは、私とフロストだけ…………』
そう思う、フィーンは弾丸を空にすると、マガジンを素早く抜き取り、ポケットに容れる。
「ぐあっ!!」
「ぎゃあっ!」
「来ないでっ! 来るなら撃つわよっ!」
「フィーン、横からも来ているっ!」
替えのマガジンを容れて、次々と敵を撃ち殺していく、フィーン。
しかし、フロスト中尉は教会に対して、右側から回り込んできた敵部隊を発見する。
「爆破するっ!」
「よし、突入しろっ!」
「大変だわっ!」
教会の壁を爆破して、入り込んでいく、敵部隊を見た、フィーンは即座に動く。
彼女は、正門にまで走っていった後、即座に両ドアを蹴破る。
「いやああっ! 殺さないでっ!」
「うるさいっ! くたばれーー!」
逃げ遅れてしまったのか、ミアが両手を上げながら泣き叫んでいる。
だが、それを見ても、アラビ系の男は情け容赦なく、彼女にAKMを向ける。
「させるかあっ!? このやろーーーー!! 私の大事な生徒たちに、手を出すなーーーー!?」
「う、うわあっ! 何だあ~~!?」
人狼に変化した、フィーンは凄まじい速度で走っていき、アラビ人の男に襲いかかった。
「喰らえっ! このっ! 貴様あ~~!!」
「ぐあっ! ぐぼぉ? ぐえっ!」
フィーンの放った斬撃に、アラビ人は腕を斬り飛ばされてしまう。
次いで、腹を抉《えぐ》られ、最後に頸を跳ねられてしまった。
「ヤバいぞっ! に、逃げろっ!」
「コイツは化け物だっ!」
教会内に突入せず、壁に隠れていた、黒人兵と黄色人兵たちは、慌てて逃げ出す。
しかし、フィーンは連中を逃がすはずもなく、すぐさま、後を追いかけていく。
「ぐえっ!」
「ぎゃあっ!」
逃げていった連中だが、両方とも左側から撃ち殺されてしまった。
「フィーン、大丈夫かい?」
それから、すぐに壁穴からは、フロスト中尉が入ってきた。
「私は無事よ、でも、子供たちは?」
「先生、格好よかったよっ!」
「先生、ワーウルフだったんだっ! かっけーー!」
「すごい、先生はヒーロー? いや、リアル・ヒロインだっ!」
フィーンは、自分の体に傷がない事を確認すると、次に生徒たちへと気を配る。
そうして、ミアの方を見ると、彼女は凄い笑顔を向けながら微笑む。
また、教会の奥に隠れていたらしい、ナタンとレオ達も、出てくるなり急に褒め称えてきた。
「へ? ワーウルフ」
「フィーン、自分の姿を見な?」
困惑するフィーンに、フロスト中尉は手鏡を渡して、姿を確認させる。
「わっ! わわわわ、私、狼男ならぬ、狼女になっているーーーー!」
いきなり、鏡に写った彼女は、余りの変貌した姿を見て、ショックを受ける。
「大丈夫、変身は自由にできる? それに、君は子供たちを守りきった、立派なスーパー・ヒロインだっ!」
「スーパー・ヒロイン?」
フロスト中尉からも褒められた、フィーンは人間の姿に戻り、恥ずかしさで顔を紅く染める。
「しかし、これで分かっただろう? 僕達は連中と戦わねば成らない? それは彼等を守り、立派な戦士に育て上げるためだ…………そして、帝国のためにもだ」
「立派な兵士に? 帝国の? ため?」
フロスト中尉は、フィーンに戦う理由を教えて、帝国のために働くように説く。
「立派な兵士に? 帝国の? …………ため?」
現実世界で、ヘルメットを被されている、フィーンの眼に光はなく、うわ言を繰り返す。
「子供たちを兵士に? 全ては帝国のため?」
「ふぅ? 後は自力で学習するから、洗脳作業がスムーズに移行するだろう」
ブツブツと呟き続ける、フィーンの姿を見ながら嗤《わら》う、フロスト中尉。
彼は、再び洗脳用バイザーを彼女の両目に取り付けると、部屋から出ていった。
数時間後。
部屋の自動ドアが開かれると、フロスト中尉が姿を現した。
「すぅ~~? すぅ~~?」
「良く眠っているようだな? 名前は確か、帝国風のネージュにしていたな?」
眠り続ける、フィーンの拘束具を外していく、フロスト中尉。
「しかし、普段はフィーンを名乗らせなければな」
洗脳用のヘルメット&バイザーを、フロスト中尉は、フィーンから静かに外す。
すると、眠り姫みたいに眼を瞑《つむ》っていた、彼女が目覚めた。
「ここは…………はっ? お早うございますっ! フロスト中尉っ!」
「やあ、お早う…………ネージュ、いや? 今は、フィーンと呼ぼうか?」
目を開けたばかりのフィーンは、ボンヤリとしていたが、フロストを見つけると直ぐに起き上がる。
そして、上半身だけを起こして、ローマ式敬礼を取った。
「そう、緊張しなくていいよ? 君は僕の恋人で副官なんだから」
「はいっ! 了解しましたっ!」
フロスト中尉のかけた優しい言葉に、礼儀正しく返答する、フィーン。
「それから、まだ学校への出勤時間になってない…………それまでは、二人で楽しもうじゃないか?」
「フロスト様♡」
学校が始まるまで、あと二時間は余裕があったので、フロストは軍服を脱ぎ始める。
フィーンも、彼に対して、恋する乙女の眼差しを向けながら、上着を脱いだ。
「様づけは、しなくていいよ? フィーン」
「フロスト…………」
こうして、フロストとフィーン達は、唇を重ね合わせて、出勤時間まで暇を潰すのだった。
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